ある意味で“とても親切”な店舗といえるのかもしれない――。

 東京都内のあるラブホテル街の入口で営業する大手コンビニエンスストア、セブンイレブンの店舗(以下、A店)は、入口から入ってほぼ真正面の棚にコンドームがいくつも陳列されており、嫌でも目に入ってくるのだ。

「ラブホテルに向かう客が立ち寄ることも多いと想定されるので、客層のニーズを的確にとらえた棚づくりだとは思うのですが、周囲はオフィス街なのでお客には一般の会社員が多く、さらには小さな子供の客を見ることもあるので、『ちょっと配慮に欠けるよね』と同僚と話していますよ」(A店近くの会社に勤務する男性)

 いくらコンドームの需要が高いエリアの店舗とはいえ、それを入口すぐ近くの目立つ棚に陳列するというのは、コンビニ業界ではよくあることなのだろうか。流通ジャーナリストの渡辺広明氏は語る。

「コンビニでコンドームがもっとも売れるのは、東京ディズニーリゾートの近くと、大阪のユニバーサルスタジオジャパンの近くの店舗です。カップルがデートをして近くのホテルにお泊まりするからです。その次に売れるのが風俗街。A店さんは、ラブホテル街にあるからではないでしょうか。コンビニの陳列は基本的に各チェーンごとに決まっていて、標準棚割とか標準レイアウトがあって、それに基づいて品揃えします。しかしながら、最終的にはどこに置くかは基本的にオーナーさんの自由ですが、ニーズのあるもの、要はいちばん売り上げの立つものを買いやすいところに置きます。

 以前、私がコンビニ店長だった1990年代は、コンドームはカウンターの後ろに置いてありましたね。売り場に置く場合も、紙に包んでわからないようにしていました。コンドームは当時はまだイメージが悪かったからです。しかし、90年代の後半ぐらいからイメージが良くなった。エイズ予防や、意図しない妊娠や中絶を避けたり、性感染症を防いだりと、非常に前向きな商材に変わってきました。ちなみにチャネル(販路)シェアはドラッグストアが53%、コンビニが24%となっています。

 コンドームというのは、基本的にはどこに置いても売れます。そういう商品が店舗を入ってすぐの棚に置いてあるということは、コンドームのニーズがあるからでしょうが、A店さんのように、これだけ目立つ場所に陳列するというケースは極めて稀です。全国的にも珍しいと思います。なぜなら、客は探してでも買う商材なので、目立つ場所に置く必要がないからです。しかし、コンドームは急に必要になることも多い商品。その緊急事態に対応するのが、24時間年中無休のコンビニの使命です」

●意外な理由?

 では、A店は稀なケースなのだろうか。セブンイレブン広報本部に話を聞いた。

「似たような店舗があるかどうか即答はできかねます。どういう理由かは店舗に聞かないとわかりません。立地やお客様のニーズもあると思いますからね。たとえば、海浜地区の店舗などであれば、目に付く場所に浮き輪を置いておくのは普通です。店舗を利用されるお客様の利用特性に応じて変わっていくものだと思っています。コンドームもなければお困りになるお客様がいらっしゃいますからね」

 そもそも、コンビニでコンドームは売れているのか。国内シェアトップのオカモトに聞いてみた。

「ドラッグストアですと一度に24個入りなどを購入されるのが主流ですが、コンビニなどですと、お手軽に6個入りなどが売られていて、売り上げも15~20年前から伸びてきています。コンビニの店舗数が飛躍的に伸びてきた影響も大きいと思います」

 そこで、A店のオーナーさんにも聞いてみた。

「コンドームは、たまたまです。店がすごく狭いので、アイテムが全部入りません。それで、たまたまその時の売り場の構成で、あそこに置いただけです。特にコンドームをいちばん推したくて置いているわけではありません。今度はホワイトデーのお菓子がメインになるので、また置き場所が変わります。この前は上がお菓子などで、下が中途半端だったので、たまたまそうなりました。ラブホテルが近いからという思惑もまったくありません。よそ様でどれくらい売れているのかは知りませんが、うちでもそんなに売れているわけではありません。どうしても売り場の面積の関係上、やむを得ずというのが正解だと思います」 

 そこでホワイトデーが近くなった3月某日、念のためA店をのぞいてみた。すると、入口入ってすぐ正面の棚上段には、確かにホワイトデー向けのお菓子類が陳列してあった。そして、その下段の棚を見ると、そこには以前と同様にコンドームが置かれていた。ある意味、“コンビニの鑑”といえる店舗かもしれない。
(文=兜森衛)

都内のセブンイレブン・A店の入口付近(店外より撮影)