最強の暗殺者ジェイソン・ボーン役をはじめ、近年、宇宙飛行士として火星に一人置き去りにされたり(『オデッセイ』)、万里の長城でモンスターと戦ったり(『グレートウォール』)、最新作『ダウンサイズ』では人生を謳歌するために約13センチに縮小したりと、とにかくパンチのある役に挑んできたマット・デイモン47歳。年を重ねたことでの演技の変化や、俳優として成功するための秘訣を語った。

 『サイドウェイ』『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』などのアレクサンダー・ペイン監督が手掛けた『ダウンサイズ』は、地球の人口過多問題の解決策として人間をわずか13センチほどに縮小する技術が発見された近未来で、より豊かな人生を送るべく、妻とこの画期的手術を受けることにする男の姿を描く。ペイン監督には「彼の世代では、彼がこの主人公の唯一のチョイスだった。彼はあらゆる男を演じてきたし、ジャック・レモンやジェームズ・スチュワート、ダスティン・ホフマンのようなんだ。どこか隣人のようで、でもどういうわけかジェイソン・ボーンのような役もできる。素晴らしい俳優だ」とまで言わしめたマット。

 当の本人であるマットは「ベン(・アフレック)と僕は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』で成功するなんて思ってもいなかったから、本当に夢物語だよ」とキャリアを振り返り、俳優として成功するための秘訣を問われると、「忍耐強さ」とまずは一言。『グレートウォール』で共演した遅咲きの俳優ペドロ・パスカルを例にそれを説明していく。「彼は僕の年下だけど、俳優業がうまくいかずにニューヨーク大学の芸術学部で演技を学び、オフブロードウェイやドラマ『LAW & ORDER:犯罪心理捜査班』に出演したりするくらいで、20年くらいかなり苦労したんだ。彼が『ゲーム・オブ・スローンズ』に出演したときには40歳近くだった。それからというもの、今では誰もが彼のことを知っている。過去20年間つらい時期があっても、彼はあきらめなかった。ニューヨークにいる誰もが彼を知っていて、彼は勝ち組になったと。彼の場合は、40歳近くになるまでそれが起こらなかっただけなんだ。人々がモーガン・フリーマンのことを知ったのも、彼が40代のときだったと思う」。

 「もしいい役者ならば、自分自身でもわかるはずなんだ。オーディションをして、役を得られなくても、呼び戻されたりすることがある。僕自身、20代前半のオーディションの時には、ベンやマシュー・マコノヒー、エドワード・ノートンたちによく出くわした。僕たちはオーディションによく呼び戻されていたんだ。それによって、役を射止めることができなくても、プロの俳優として認められてはいるんだというサインをこの業界から受け取ることができた気がする。だから粘り強く、一生懸命取り組み続ければ、何かを得ることができると思う」。

 また、マットが幅広い役柄をこなせるのには、撮影現場での心持ちが大きく影響していそうだ。「どんなストーリーなのかわかったら、撮影現場でじっと座ってなんかいられなくて、僕はただじっとしてるだけの行為を“お金を火で燃やしている”と呼んでいるんだけど。なぜなら製作期間にお金がかかっているわけだから。大作では一日でかなりの金額になったりするわけだから、最高の日にしていかなくてはいけない。その日のうちに撮らなくてはいけないシーンを理解し、自分には何が必要なのかを理解することはすごく大事だね」。

 さらには「年を重ねるにつれて演じることが楽になってきた」とも話すマット。「なぜならいろんなことを深く経験してきたからだ。おかげで、それを演技に活かすことができて、ずっと楽に自分の人生と結びつけることもできるようになった。若かったときは、役を得るのに自分自身に無理強いをさせて、最終的にはそれが行き過ぎてしまっていたというか、でも年を取ってからは、完全にリラックスして、何でもできるというか、より効率的なプロセスになったと思う」と演技の変化を語っていた。突拍子もない役にもリアリティーを与えてくれるマット。今度はどんな役に挑戦してくれるのかと、期待せずにはいられない俳優の一人だ。(編集部・石神恵美子)

映画『ダウンサイズ』は公開中

とってもいい人として知られるマット・デイモン - (C) 2017 Paramount Pictures. All rights reserved.