2015年冬、56歳で直腸がんが見つかった内田春菊さん。そこから翌年の春に人工肛門(ストーマ)を造設するまでをユーモラスに描いたのが『がんまんが』だ。京都の大学に通う息子が帰省、すっかりスリムになっているのに驚き、彼が成功した「糖質制限ダイエット」に内田さんも挑戦するところから話は始まる。みるみる痩せていくが、同時に便秘がひどくなる。お尻の肉が薄くなったせいか、硬い椅子に座るのも苦しくなり受診したら、肛門から2センチ程のところにがん。ダイエット前から密かに進行していたのだ。

「診察結果を聞きに行く前、俳優やってる娘から“かあちゃん、がんと言われたら、ひと間おいて『ガーン!』だよ”と演技指導が入りました(笑)。病気は漫画家として大ネタですが、描く気になるまでに手術から1年かかりましたね」

 結婚は3度、離婚も3度、子供は4人、うち第2子から第4子までと暮らしている。がん判明の直前に年下の恋人と別れたばかりだった。冒頭に「今回ほんっとに(男が)いなくてよかったと思ってます」とある。16歳で家を出てから働き続ける内田さんは、男性を食べさせても食べさせてもらったことはない。車の運転だけは男任せだったが、恋人との別れを機に、当時18歳になったばかりの娘と自動車学校に通い始め、抗がん剤投与中も諦めず手術直前に仮免許を取得、その後見事に本免許も取った。

「この間、美大生の娘がプロジェクションマッピングの賞いただいたんで、東京ビッグサイトまで車で往復しました。彼女も勿論運転できるんだけど、祝賀会でお酒飲むから。帰りにうっかり高速に乗っちゃって、死ぬかと思いました(笑)」

 この紅多(ベエタ)さんが、ストーマ造設手術のための入院直後、ナーバスになっている内田さんの前で「かあちゃんが変わるわけじゃないから」と言ってくれた。

「驚くほど、この言葉が精神的な支えになりました」

 病気になる前は、ストーマはお尻にぶらさげるもの、 くらいに思っていた。実際は腹部に穴を開け腸からの排泄物が入る袋を装着する。

「中学生の息子はネットで『ストーマ』と検索し“梅干しみたい!”と叫んでた(笑)。私はその時は怖くて、画像見られませんでした」

 担当医が、お気に入りのへそピアスの邪魔にならない位置に施術してくれた。へそ出しの衣裳で歌手活動も続けられそうだ。ストーマのある日常は次作「すとまんが」で明らかになる。

『がんまんが 私たちは大病している』
便秘に始まる不調で診察を受け、以後、抗がん剤投与、内視鏡検査、患部切除と肛門閉鎖、ストーマ造設に至る数カ月を描く。通院、入院、家事育児、運転免許取得の間隙をぬって机に向かう漫画家の姿は広く女性の共感を得るのでは。自分で抗がん剤を抜くシーンなど、全篇にわたる医療描写は医師の監修済みである。

(「週刊文春」編集部)

『がんまんが 私たちは大病している』(内田春菊 著)