「ここ(留置所)に入れられたら着替えがすぐ必要なの、お前よく知ってるだろ!」(佐田)

3月4日放送の『99.9-刑事専門弁護士-SEASONII』(TBS系)第7話では、佐田篤弘(香川照之)が逮捕されて裁判にかけられてしまった。

思い出すのは、深山大翔(松本潤)が殺人容疑で逮捕された SEASONIの第8話。あの時は深山が留置所内から佐田や立花彩乃(榮倉奈々)に指示を出し、真相究明へと導いた。
今回の佐田は、深山ほどの活躍を見せてない。“被告人・佐田篤弘”は、あまりにも強大な敵に狙われていた。

香川照之からの挑発に激昂する現役裁判官たち
テレビ番組に出演した佐田は、「歪んだ裁判の実態」と称して持論を展開した。
国家賠償請求が行われた場合、国からの指定代理人は法務省・訟務局の人間が担当する。この訟務局には裁判官が出向している。公平な立場にあるべき裁判官が訟務検事になることがあるのだ。法務省に出向した時に同僚だった仲間が、同じ法廷で検察官と裁判官になるケースも出てくる。

不公平を訴える佐田の姿を、裁判官の川上憲一郎(笑福亭鶴瓶)、遠藤啓介(甲本雅裕)、小島広吉(小松利昌)が観ている。
遠藤 何言ってんだ、こいつは。そんなことで判決が左右されるわけないだろ。素人みたいなこと言いやがって……。
小島 全く同感です! 何もわかってませんよ、この人は。

激昂する2人の姿には、己の仕事にプライドを持つ裁判官の本音が表れている。

はしゃぐ香川照之を的にかける東京地方裁判所
ハッキリ言って、佐田ははしゃぎ過ぎた。目を付けられてしまったのだ。

事の始まりは、佐田が顧問弁護を務めるオガタテクノロジーの社長・緒方(ヒャダイン)の失踪。検察庁に呼び出された佐田は検事から、緒方が1週間前に会社の資金3000万を引き出した後、姿をくらまして業務上横領の罪がかけられてることを聞かされる。さらに、失踪当日に佐田の個人口座へ300万円の振り込みがあったこともわかり、佐田は業務上横領幇助の容疑で逮捕された。

警察に通報したオガタテクノロジーの専務・大河原孝正(佐戸井けん太)は、検察で佐田のことばかり聞かれたと明かしている。「検察が弁護士を逮捕するにしては軽微過ぎる罪な気がする」とつぶやく尾崎舞子(木村文乃)。斑目春彦(岸部一徳)の言葉が、佐田を取り巻く状況を表している。
「このままでは当然、佐田先生は弁護士資格を失うだろう。国家権力を盾にしたこういうやり方は受け入れられないな」

鶴瓶の「ええ判決せえよ」に込められたプレッシャー
起訴状に目を通していた小島が表情を一変させた。そこに「勾留中 佐田篤弘」の文字があったのだ。テレビで裁判官を攻撃していた佐田の裁判を自分が担当するのか……。
「ええやないか! 腕の見せどころやないか。ええ判決せえよ(微笑)」(川上)

直後、小島は事務総長の岡田孝範(榎木孝明)に呼び出される。
「小島君。この書類、持っていきなさい。今後、何かの参考になればいいと思ってね。……期待してるよ」(岡田)
その書類には、「顧問弁護士が業務上横領幇助をした事件」で被告人の有罪を述べる裁判の参考事例が書かれていた。佐田を想定した事例であることは明らかだ。

斑目法律事務所も、現在の状況は察していた。
「実は今回の件は、どうも判決が固まっているという噂なんだ」(斑目)

調査の過程で緒方の死亡を確信した舞子は、小島に面会して裁判の中断を求めた。しかし、小島は受け付けない。
舞子 中断できないのは、すでに判決が固まってるからですか?
小島 何言ってんだー! 

2人のやり取りを部屋の外で聞いていた川上は、舞子を咎めた。
「なんぼ何でもお前、裁判が結審される前に判決が固まってるなんて、そんなことありえへんやないか。我々は上がってきた証拠をもとに公平に裁いてる。ただ、それだけや」
川上の言葉を前に、小島の目が泳ぐ。彼は岡田から手渡された参考書類を川上に見せた。良心の呵責にさいなまれているのか、挙動に落ち着きがない。遠藤も憤りを隠さなかった。
「参考書類となっていますが、そこに書かれてる顧問弁護士は明らかに佐田のことです。こんなものを担当裁判官に渡すなど、裁判官の職権行使の独立が守られていません!」

思わず、川上は「事務総長もやり過ぎやな」とポツリ。部下の立場を慮る川上は、小島に確認した。
川上 これ見て、法廷で判断変えてへんやろな?
小島 はい、変えていません!
川上 ……ホンマやろな(微笑)。わかった。忘れろ。俺もこのことは全部飲み込んどいたる。ええ判決せえよ。

上司と後輩のやり取りを聞く遠藤の表情が、明らかに曇っている。「ええ判決せえよ」の一言にプレッシャーが込められていることは明白だ。

全開となる鶴瓶の“黒さ”を見て部下の感情が揺れる
深山らの調査によって、緒方を殺害した犯人は大河原と中村麻美(田中美奈子)だと判明。検察は佐田への控訴を取り下げた。

最終話が近付くにつれ、川上の黒さに拍車がかかる。岡田が小島に手渡した参考書類を作成したのは、この男である。パソコンから自作の参考事例ファイルを削除した川上。「削除」をクリックする指先に、渾身の力が込もっている。

岡田 しかし、小島君に渡した判決文はよくできていたんだけどなあ。
川上 いくらええもんでも、結果が伴わなへんかったらただの紙切れですわ。

意味深な表情で2人の後ろ姿を見つめているのは遠藤。揺れる感情が隠せない。彼を見ていると、検事・丸川貴久(青木崇高)を思い出してしまう。上司・大友修一(奥田瑛二)からの圧に忠実だったが、いつしか正義に目覚め、遂には深山に協力するにまで至った(SEASONII第2話)

「我々の闘う相手というのは、本当に厄介な組織だよ」(斑目)
このドラマは、検察と裁判官を悪く描き過ぎるきらいがある。しかし、物事はそう単純ではないはず。厄介で強大な組織にも正義と公平性は残されていると信じたい。そして、それを証明するのは遠藤という存在ではないだろうか。最終話間近、現役裁判官の立場にある彼の感情には要注目だ。
(寺西ジャジューカ)

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イラスト/まつもとりえこ