3月2日付朝日新聞1面トップで報じられた、財務省と森友学園の契約に関する決裁文書をめぐる書き換え疑惑。この決裁文書は、貸付契約と売買契約に当たって、それぞれ作成されたもの。問題化され昨年2月以降に国会議員へ配布されていた文書は、書き換えられた偽造文書であり、もともとの文書(以下、決裁原本)には国にとって都合の悪い内容が盛り込まれていたため、それを削除していたという疑惑である。10日には、ついに財務省が書き換えを認める方針であると報じられた。

 契約に至る経緯や価格決定の理由などを示した官公庁の決裁文書書き換えは、刑法上の公文書偽造等罪(公文書変造:同法155条の2項、虚偽公文書作成:同法156条)に問われる重大犯罪である。国会では野党が連携し、この真相解明に取り組んでいる。

 問題になっている貸付契約書は、「国有財産有償貸付合意書」(2015年5月29日)といい、安倍晋三首相夫人の昭恵氏が森友学園が設立予定だった小学校の名誉校長に就任した15年に、財務省と森友学園の間で締結されている。国有財産は一括払下げが原則であるのに、森友学園とは特例的にこの貸付契約を結んでいる。

 契約は10年間の契約とし、延長がないことが記載されていた。また森友学園が望めばいつでもその土地を買い上げることができる内容となっていた。小学校の運営はもちろん10年で終わるわけではないため、これは売却を前提としていた。

 一方、もう一つの売買契約書は翌年16年6月20日、「国有財産売買契約書」という名称で締結されている。当初、鑑定価格約9億5000万円の資金がないため貸付契約を結んでいた森友学園が、なぜ売買契約によって払い下げを受けることができたのか。

 誰が考えてもできないことが、森友学園元理事長の籠池泰典氏が証人喚問で語ったように「神風が吹いたように」できてしまったのである。当然、決裁原本にはその痕跡が残っているはずである。

 今回の朝日報道によれば、学園との取引について「特例的な内容となる」「本件の特殊性」という文言が削られ、「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」という文言もなくなっていたという。昭恵氏の関与を消し去り、財務省の国会答弁との矛盾を隠す行為であることが容易に想像がつく。決裁文書には各部署の担当責任者(10名)が押印し、承認している。承認を取るためには“特別扱い”が必要であったことがうかがえる。ちなみに書類の作成日は以下のとおり。

・15年5月29日:貸付契約書「国有財産有償貸付合意書」
(同年9月5日:昭恵氏、森友学園運営の小学校名誉校長に就任)
・16年6月20日:「国有財産売買契約書」
(17年2月17日:安倍首相「私や妻が関与していれば議員を辞める」と発言)

写真2:売買契約書。国会議員に開示された決裁文書の表紙と調書(1部)

●回答を避ける財務省

 3月2日の国会で、この問題で野党の追及が続いた。特徴的だったのは、財務省は国会議員へ開示したものと異なる文書の存在を否定せず、検察の捜査への妨げになると答弁を避けたり、先伸ばしている点である。結局この日は翌週6日までに調査して返答すると太田 充理財局長が答弁したが、その6日になっても存在すら明らかにせず、麻生大臣は「膨大な資料のなかから見つけるのは困難」という答弁を行っている。一方、7日には与党幹事長がそろって財務省に提出を求めたが、いよいよ決裁原本が提出されるとされた8日に提出されたのは、これまで国会議員に提示されていた文書のコピーであり、「ゼロ回答」であった。

 そして9日、森友学園への国有地売却交渉を担当した部署に所属していた近畿財務局の職員が7日に自宅で首をつり、搬送先の病院で死亡していたことが判明。さらに、理財局長時代に国有地売却に関連する文書を「廃棄した」と国会答弁していた佐川宣寿国税庁長官が辞任を表明した。

 財務省が事実をすぐ公表していれば、その担当者の「死」は避けることができたのではないか。この文書取扱責任者は明らかであり、その責任者が書き換えたのか、書き換えていないのかという実に単純な問題である。決裁原本から削除された部分をはっきりさせ、どのように書き換えられていたのか、その事実をまず明らかにすることが必要である佐川長官が辞任したとしても、国会での証人喚問に召致し、書き換え疑惑に対して真正面から答えさせるべきだ。謝罪と今後の対処方針を明らかにする必要がある。

●森友問題の核心

 朝日のスクープによって、財務省と森友学園の貸付契約と売買契約が改めて国会審議の俎上に上り、国がいかに森友学園を特別扱いし、実際に特例的に処理されてきたかが明らかになった。背景をなぞりながら、国が隠そうとしている実態に光を当てたい。

 国有財産の払い下げは、当然一般競争入札による処分が原則である。ただし学校法人や福祉法人などに入手希望があると、優先的に随意契約することができる。もちろん、その場合も鑑定価格を上回る入札が契約成立の条件とされる。今回の払い下げ用地はまず12年に隣接する大阪音楽大学が手を挙げ約7億円で入札したが、鑑定価格の約9億円に満たず払い下げは行われなかった。

 その後、13年に手を挙げたのは森友学園であるが、この時点では森友学園は私立の学校法人格も持たず、学園用地も持っていなかった。学校法人でなければ国有地の払い下げを優先的に受ける権限はなく、学園用地を持たなければ大阪府が持つ学校法人としての認可を受けることも不可能だった。いわば、為す術がない状況に追い込まれていたのだ。

 ところが国交省大阪航空局は14年10月、森友学園に校舎建設のためのボーリング調査を許可し、森友学園はその調査結果を「仮称M学園小学校新築工事調査報告書(14年12月)」にまとめる。国による払い下げや大阪府の認可の出ていない14年の段階で、森友学園が同用地に学校を建設することが決定事項であるかのようにボーリング調査を行ったのである(※1)。

 この動きは大阪府の私学審議会や財務省の国有財産審議会に影響を与え、15年1月27日には大阪府の私学審議会で法人としての「認可適当」を得て、同年2月10日には財務省の近畿地方審議会で学園用地の売却を前提とした賃借権を入手するのである。小学校開校に向けて森友学園にとって大きな課題であった学校法人格の取得については、「認可適当」のお墨付きをもらい(※2)、学園用地の取得が資金難のなかでも実現するのである。その手品のような解決策が、今回の「売り払いを前提とする賃貸借契約」である。

 売買による一括払い下げが基本であった国の財産処分を、まず特例的に貸付契約し、その間に土壌改良工事(同年7月から11月)を進め、16年には校舎建設に入ったのである。一方、学園用地を賃借から売却で手に入れるという点も資金難の森友学園にとっては高いハードルであったが、これをクリアしたのが、埋設ごみを理由とした鑑定価格より9割引きするという奇手であった(※3)。

 この値引きによって、9億5600万円の土地を1億3400万円で売却することにし、さらに10年の延払い、つまり分割支払いを認め売買契約を結んだのである。しかし鑑定価格の9割引きで払い下げをするというのは、国有財産を違法に払い下げるということであり、この時点で森友問題は財政法違反の法令の枠を大きく踏み外すことになったといえる。庶民の目からして「ありえない」と注目を帯びるきっかけとなった。

 以上の経過より、森友学園が国から特例的な扱いを受け、国有地の格安払い下げを受け、学校建設まで終え、昨年4月に開校の一歩手前にまで漕ぎ着けていた。

 朝日新聞によれば、今回の契約書の決裁原本では「本件の特殊性」に基づく「特例処理」だと書かれていたとされる。担当の官僚からすれば資金も資格もない森友学園に小学校開設の道筋をつけるのは並大抵ではなく、これまでの処理事例のないやり方での決裁を得やすいように「特例処理」との記載を行ったのであろう。もちろん昭恵氏が名誉校長であり、その背後に安倍首相がいることを意識し便宜供与された事例だったことがわかる。

●書き換えを迫られた状況変化

 ところが、17年2月になって森友学園への格安払い下げの事実が、豊中市の木村市議や朝日新聞による情報公開請求の結果わかった。当初非開示とされたものを異議申し立てによって開示させるという経過があり、国会審議で本格的に問題になり始め、安倍首相の「私や妻が関与していれば議員を辞職する」発言に続く。

【経緯】
・17年2月8日:豊中市の木村真市議が、売買契約書への情報公開の結果、1億3000万円で払い下げられたという事実をつかむ
・同2月9日:朝日新聞が同様の内容を報道
・同2月17日:国会で安倍首相が「私や妻が関与していれば議員を辞職する」と発言
    
 その後、佐川理財局長(当時)が国会で「交渉記録をすべて廃棄した」「森友学園と価格の交渉はしていない」と答弁した。朝日の今回のスクープによって図らずも焦点化したのは、決裁文書を書き換えたという公文書偽造等罪の疑いだけでなく、そもそも国有財産を首相の縁故者に不当に払い下げ、国家財政に損害を与えたという森友問題の核心点である。

 すでに会計検査院の検査では、格安払い下げが「根拠不十分」であり「適切ではなかった」と判断されるに至った。国はこれまで隠してきた情報を小出しにし始め、森友学園に損害賠償で訴えられる恐れがあるため格安で払い下げたと説明している。しかし、格安払い下げは官僚が組織的に権限を行使して実施したものであり、責任は免れない。

 この特例処理を実施するための財務省内の法令的な検討経過について、同省は当初廃棄したとして情報開示しなかったが、上脇博之神戸学院大教授らの情報公開請求で最初に出した5件を含め、25件の情報の総量は400ページにもなっている。違法な取扱いをしていなければ必要のない、この作成に掛かった官僚の労力は、国家の損失といえる。そして、財務省による国有財産の不当な払い下げという背任行為を「適正だ」と言ってきた安倍首相、麻生太郎財務相、石井啓一国交相の辞職も免れるものではない。

●財務省の「損害賠償請求を避けるための格安払い下げ」という嘘

 財務省は会計検査院の検査結果が発表されて以降、格安払い下げについては「籠池氏に脅され、損害賠償請求を避けるために格安で払い下げざるを得なかった」という話を再び強調し始めた。検察による籠池夫婦の逮捕・勾留を後押しする狙いもあると考える。

 しかし、今回の朝日のスクープを見ても、籠池氏一人のせいにして森友学園への便宜供与を説明できる問題ではないことははっきりしている。「売却条件付貸し付け契約」とは、実務に通じた官僚だからこそ考えた方法である。貸付契約によって土壌改良工事を進め、開校に間に合うように校舎建設が進められるようにしたのは、官僚たちである。しかも国有財産の払い下げに当たって、このように賃付契約をした事例は、川内博史衆議院議員の質疑でわかったが、過去1000件ある中で1件、つまりほかにはないのである。

 実際、新たな埋設ごみの総量が2万トンとして、その撤去に8億2000万円もの費用が掛かると算定計算したのは国交省大阪航空局である。通常ならば不動産鑑定士に依頼し作成する。しかし各種調査報告書からいって、深部にごみがないことを国交省は把握していた。その用地の地下に2万トンのごみがあるなどと虚偽の鑑定をできる不動産鑑定士はいないため、国交省の官僚が計算した。森ゆう子参議院議員が入手した同土地の鑑定評価書は、すでに存在しており、過去に大阪航空局自身が調査していた。

 さらに、財務省が本当に籠池氏からの損害賠償請求を恐れていたとも考えにくい。賃付契約書である「国有財産有償貸付合意書」には、その第5条(土壌汚染及び地下埋設物)では、払い下げた国の土地に関して、それまで国が調査してきた4つの報告書(※4)を示しつつ、「本報告書等に記載のある汚染物質や地下埋設物の存在を理由として(略)損害賠償請求を行わないこと」が定められている。つまり、報告書に記載があるごみを理由とする損害賠償請求は、行われるはずがないのだ。森友学園が損害賠償請求を行うためには、その新たな埋設ごみが報告書には記載されていないごみであることを自ら証明する必要があったということになる。その上、上記報告書でも明らかなように、3メートル以深の深部にはごみはなく、証明することはできないとわかっていた(※5)。

 森友学園問題は、安倍首相の縁故者である籠池氏が理事長を務める森友学園に、国有財産を不当に格安で払い下げるという便宜供与事件である。その際、安倍首相側が具体的に財務省の高官に働きかけたのかどうかは、検察の捜査を待つほかはないが、官僚が本来の職責を忘れ便宜を図ってきたという背任行為の証拠が積み上がっている。今回の朝日スクープは、これらの実態をより明らかにしてくれたことになる。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

※1:加計学園問題では、今治市は国家戦略特区での特区認定があった17年1月20日の前年に、当時今治市の市有地だった加計学園獣医学部建設予定地における架電施設建設の許可を出している。一方、加計学園は文科省の認定が下りる8カ月前の17年4月には、校舎建設工事に入っている。

※2:大阪府の認可は、実際の校舎を見て認可が下りるということであった。

※3:購買予定の土地の有害物による汚染や埋設ごみ等の「瑕疵」を理由とした土地鑑定価格の値引きは、官僚がよく使う「奇手」である。東京都の豊洲市場でその値引きの額の妥当性が論議されている。

※4:「大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)土地履歴等調査報告書(H21<2009年>8月)」、「平成21年度大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)地下構造物状況調査報告書(OA301)」、「大阪国際空港豊中市場外用地(野田地区)土壌汚染概況調査業務報告書 平成23年11月」、「平成23年度大阪国際空港豊中市場外用地(OA301)土壌汚染深度方向調査業務報告書 平成24年2月」

※5:3メートルより浅い部分にしか埋設ごみはなく、そのごみは15年の土壌改良工事で撤去し、その分の支払いも「有益費」として受け取っていた。

写真:日刊現代/アフロ