公開中の映画『坂道のアポロン』で、キャストの知念侑李や中川大志が本格的な楽器演奏に挑戦している。劇中では知念がピアノ、中川がドラムの演奏を披露しているが、吹き替えナシで挑んだ演奏シーンの裏には、相当な努力があった。

 同作は、小玉ユキのコミックを原作にした青春ストーリー。都会から長崎県・佐世保へ転校してきた高校生の薫(知念)が、クラスメイトの千太郎(中川)、律子(小松菜奈)と出会い、一生ものの友情や恋愛、そしてジャズの魅力に目覚めていく姿を描く。劇中では薫と千太郎によるピアノとドラムのセッションが象徴的に描かれる。

文化祭シーンの千太郎 - (C) 2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C) 2008 小玉ユキ/小学館

 演奏シーンの撮影のため、知念、中川ともに約10か月に及ぶ猛特訓を重ねた。知念にとってピアノは初挑戦であり、楽譜が読めないかわりに耳でメロディーを、目で演奏指導の先生の指の動きをコピーし、反復練習することで習得したという。実際の撮影について知念は「千太郎のドラムに乗せられて、いつのまにか手以外のところも動いていて。最初のセッションは結構序盤での撮影でしたけど、演じていて泣きそうになるくらい、気持ちが乗りましたね。最後の方は2人とも撮影シーンにも慣れて、初めより技術も上がったと思うので、余裕を持って楽しめたように思います」と振り返る。

 中川は、ドラムの経験はあったもののジャズドラムは初めてだったといい、観客に楽しんでもらうためには、まず自分たちが楽しむことが大切だったと語る。「今回どのシーンも楽しかったんですけど、地下室のセッションシーンはもう本当に楽しくて。勉(中村梅雀)さんのベースと淳兄(ディーン・フジオカ)のトランペットが入って、初めて(知念を含めて)4人リハーサルでそろい、そこで初めてそれぞれの練習の成果を見せ合う時とか、すごく刺激的で面白かったです。本当に音楽の楽しさというものを強く感じましたし、薫のピアノと千太郎のドラムだけじゃない、4人だからこそ生まれる楽しさというか。ディーンさんもおっしゃってましたけど、もうちょっとあの4人で演奏したかったなっていう、それくらい楽しかったですね」と撮影を超えたセッションの楽しさを感じていたようだ。

地下室でのセッションシーン - (C) 2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C) 2008 小玉ユキ/小学館

 メガホンを取った三木孝浩監督は、「あんなに難しい演奏を、手元も含めて一切吹き替えナシで演奏シーンを撮っているんです。そんな映画今まで観たことないっていうくらい、難しいことにチャレンジしているんですけど、それをふたりが本当に軽々とこなしている」と絶賛。「どこから撮ってもめちゃくちゃカッコいいので、色んな角度で撮りたくなって。それを何回も繰り返して撮れるというのは、作り手からしたら本当に贅沢でした。この撮影がずっと続けばいいのにと思うぐらい! まあ、2人は何十回もピアノを弾いたりドラムを叩いたり、大変だったと思うんですけど(笑)。本当に2人が良い表情をしているんですよね」と彼らに魅了されながらの撮影だったそう。

 そして、最大の見せ場である文化祭のセッションシーン。薫と千太郎がジャズで想いをぶつけ合い、息の合ったセッションを見せる場面では、およそ5分間に渡り白熱の演奏を繰り広げる。約400人のエキストラに囲まれる中で行われた撮影は相当なプレッシャーがあったようで、知念は「弾いているところを至近距離でたくさんの人が見ているという……普通にライブでやるよりも緊張するというか、演奏シーンにはそろそろ慣れてきた頃だったんですけど、また違う緊張があって、人前で弾くってそういうことだなって思いました」とコメント。中川も「やる曲の難易度も高いし長いし、予想通り本当に死闘でしたし、しびれましたね」とハードな撮影について明かした。

 しかしながら演奏中の2人は、三木監督いわく「めちゃくちゃ楽しそうだった」のだとか。もともとレコード会社で映像制作に携わりライブでカメラを回すことも多かったという三木監督は、「その時の楽しさがよみがえってきて、文化祭のシーンでは最初からうずうずしていたんです(笑)。だから、当初は自分でもカメラを回す予定なんてなかったのに、あと1、2テイクで終わりという時に『自分も回させて!』とカメラマンに頼み込んで。カメラマンも楽しそうだからうらやましくなっちゃって」となんと自らカメラも担当していたことを告白。実際に本編でも、一部三木監督が撮影したカットが使われているという。「(文化祭のシーンでは)僕が撮影した箇所も映画で使われていますよ。知念君を右側からタイトめに、手元とかも映しているカットなんですけど」とのことだ。(編集部・小山美咲)

文化祭シーンメイキング写真 - (C) 2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C) 2008 小玉ユキ/小学館