有効求人倍率が44年ぶりの高水準と話題だ。こんな景気のいいニュースを聞いて「今が転職のチャンスかも!」と思った人は少なくないだろう。しかし、厚労省の統計によると転職者の約3分の1は年収が下がっている。つまり、決して手放しで喜べる状況ではないのだ。では、希望に溢れた転職者を“転職貧乏”に追い込む要因は一体何なのか。あるケースを紹介しよう。

◆年収もやりがいもバラ色に見えたがいざ転職したら……
…森野 浩さん(仮名・43歳・既婚)年収750万円→年収700万円

<森野さんの経歴>
18歳 普通科高校卒業
    地元の総合病院に就職
30歳 製薬会社へ転職
38歳 現職の小規模病院に転職

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 前職を通じて、小規模病院の理事長と懇意になり、「ぜひ来てほしい」と引き抜かれた森野さん。勧誘時こそ条件はよかったが、その約束は次々に破られていったという。

「最初に提示された条件は年収約100万円アップ。先進的な医療に関わる病院なのも魅力的でした。職場の雰囲気もやる気に溢れていて、夢のような話でしたね」

 唯一のネックは単身赴任になることだったが、これも了承。東北地方から関東地方へやってきた。

 ところが、前職を辞して内定を受け取ってから話は急転する。

「年収を提示したのは人事部長ですが、私を誘った経営陣に『そんなに出せん!』と覆されたんです」

 この裏切りには森野さんも激怒。経営陣に強く迫ったが、「3年待ってくれたら必ず報いるから」と言われ、ぐっとこらえたとか。しかし、5年目を迎えた今も給料は据え置き。それどころか、別の約束まで反故にされたとか……。

「1年前、退職者の仕事を私が一時的に肩代わりすることになりまして、そのときも人事部長から『給料に少しは色をつけるから』と約束されたんです。でも、1年たつのに給料は上がらないどころか後任が来る気配もありません」

 さすがに不信感はMAX。転職を考え始め、地元の大型病院からオファーもある状態だという。

「年収は100万円下がるものの、単身赴任の経費を考えれば、さしたるダウンではありません。何より家族と暮らせます。ただ、今の職場の人間関係は良好だし、やりがいもある。転職は仲間を裏切るようで後ろめたいですね……」

<転職のプロが斬る敗因>
●条件は必ず書面で確認すべし!

「求人企業が誠実とは限りません。解釈の違いや言った言わないの水掛け論はよく聞く話。口約束で即決せず、年収などの条件が記載された内定通知書は必ずもらうべき」(人材コンサルタントの小林毅氏)

「地元の病院への転職を見据えて、内定通知書をもらいましょう。その段階で、そのようなオファーが来ていることを今の病院に話し、改めて条件交渉するのも手です」(キャリアコンサルタントの高野秀敏氏)

撮影/尾藤能暢 モデル/小作圭輔(古賀プロダクション)
― [転職貧乏]にハマる人の共通点 ―