“オエド”を舞台に繰り広げる、見せ場たっぷりのチャンバラ活劇

愛知県長久手市の市民劇団として「長久手市文化の家」を拠点に活動を続ける座☆NAGAKUTE。劇作家・演出家の佃典彦(劇団B級遊撃隊主宰)が17年に渡って講師を務め、年々めざましい成長を遂げている彼らの公演『無頼漢~BURAIKAN~』が今年も、3月17日(土)・18日(日)に同劇場「風のホール」にて上演される。

長久手市劇団 座☆NAGAKUTE『無頼漢〜BURAIKAN〜』チラシ表

長久手市劇団 座☆NAGAKUTE『無頼漢〜BURAIKAN〜』チラシ表

公募により集まった10代~60代の幅広い年代が揃う座員は現在20名で、ここ数年は毎年春先に年1回の公演を行っている。作品は毎回、彼ら自身が既存の戯曲の中から上演したいものを選ぶスタイルをとっているが、今回は第30回という節目にあたるため、講師である佃典彦の作品を上演することに。そこで佃が提示したのは、歌舞伎の演目を題材にした2本の作品だという。

いずれもかつて流山児★事務所のために書き下ろした作品で、1本は鶴屋南北作「桜姫東文章」をベースにした『桜姫表裏大奇譚』(2005年上演)、そしてもう1本が、河竹黙阿弥作「天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)」をベースにした『無頼漢~BURAIKAN~』(2006年上演)である。

稽古風景より

稽古風景より

座員たちが選んだ今作『無頼漢~BURAIKAN~』は、寺山修司が「天衣紛上野初花」を原作としてシナリオを書き、篠田正浩が監督した1970年公開の映画『無頼漢』をもとに、佃が舞台を架空都市“オエド”に置き換えて現代風に翻案したもの。物語はこうだ。

老中水野忠邦は、オエドの民衆から楽しみを奪う改革を推し進めていた。その名も「全国一斉二宮金次郎化政策」。それに反発した民衆は、「お祭り一揆」を起こすが鎮圧されてしまう。一揆を率いていた河内山宗俊も、水野の鉄砲隊により命を落としてしまった。イメージアップのため美しく整形した水野は、さらに民衆を苦しめる政策を進めていく。暗闇の丑松は再び一揆を計画するが…人々は花の「オエド」を取り戻すことができるのか?

稽古風景より

稽古風景より

前述の『桜姫表裏大奇譚』に続き、現代不条理劇を得意とする佃と歌舞伎、という一見意外な組み合わせを結びつけた流山児祥は当時、「天衣…」の歌舞伎台本と映画のシナリオ&DVDを佃のもとに送り、台本を依頼したのだとか。さらに、「ちょうどその頃、「御園座」で「天衣…」を上演していたからそれも観て。片岡仁左衛門が河内山宗俊を演じていたんだけど、河内山は前にもテレビか何かで観た覚えがあって、やっぱりすごくカッコ良かった。だからこの台本もすごく楽しんで書いた覚えがある」と、佃。

流山児★事務所公演では流山児祥が演出したため、佃は今回初めてこの自作を演出することになるが、それについては、「国家権力に対して民衆が怒りをもって立ち向かう、という話なんだけど、今の共謀罪じゃないけど国家の締め付けによって今オエドがこんな世界になってしまっている、というところが、読み返してみるとセリフではそんなようなことを言ってるんだけど、台本上であまり描かれていなくて。その辺は意識して現場で直したり、新たにシーンを付け加えたりしました」と。

国家VS民衆の対立構造を、共謀罪しかり、執筆から12年経った2018年現在の世情も踏まえた上で見つめ直し、より浮き彫りにさせたというから、その辺りにも注目して観たい。

稽古風景より

稽古風景より

また、座☆NAGAKUTEでは3作目の時代劇となる今回の演出ポイントを尋ねると、「今までは時代劇といっても、妖怪がいっぱいウジャウジャ出るみたいなことだったけど、今回はチャンバラシーンが多いから、アクションクラブの杉本明朗さん(殺陣指導と出演もする)におんぶにだっこな感じで。本格的な殺陣はみんなも初めてだし、女の人も多いのでアクションクラブみたいなチャンバラにはならないんだけれども、なんとか形にできれば。でも当初に比べたら、随分上手くなったと思う。演出でも、こういう時どうしよう? とか、所作や刀の扱いとか置き場所とか、僕も勉強になりました」と。

ビジュアル面や音楽についても、「松江出雲守の上屋敷とか、三尺高くらいの奥に高台があって、階段がずーっとある上下二段舞台になっています。その周りに襖の大きいのがあって、影絵を使おうかと。これだけ出演者が出ていても、民衆がワーッと暴動だー! ってなったりするところなんかは人数が少ないから影絵を使いたいなと。音楽は、和風のギターが入っているような曲を流したり、途中で歌謡曲を歌ったりもします。松田聖子の歌とか、「かもめが飛んだ」とか「メモリー」とか。皆さんおなじみの曲が三味線とか尺八とか和太鼓を使った楽曲で出てくる。全部違うシーンなんだけど、締め付けによって地下に潜ったアングラのオカマバーみたいなシーンがあって、そこで『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』のヘドウィグみたいな人が歌ったりね(笑)」と、大掛かりな仕掛けや派手な演出も多く、とにかく見どころが多そうな本作。

稽古風景より

稽古風景より

「ちょっと大変だけど、見どころ満載なんです。中でもこの芝居の一番の見せ場は、老中の水野様が顔面改革で整形をしてイイ男になり、最後はまた元の醜い姿に戻るんだけど、その辺は面白いところですよ。物語の中でそれが大きなウエイトを占めてる。初演の時は流山児祥が演じてて、整形後は伊藤弘子になる(笑)。当時はそれが評判になったね、かなり(笑)」

今回も絶妙の配役で、稽古中も笑いながら演出をつけていた佃。このシーンの仕上がりはもちろん、同じホンでも流山児版とは全く趣の異なる、どこかほのぼのとして賑やかな座☆NAGAKUTEらしい『無頼漢~BURAIKAN~』をご堪能あれ!

取材・文=望月勝美

前列左から・山田めぐみ、あぼともこ、吉本陽子、佃典彦、村口雪乃、下島ユリ、増田ゆか