はじめに

 原油価格が上昇している。ドバイ原油は昨年11月から1バレル=60ドル台で推移しており、経済活動に及ぼす影が懸念される(資料1)。原油価格が上昇すれば企業の投入コストが上昇し、その一部が産出価格に転されるため、変動費の増分が売上高の増分に対して大きいほど利益に対する悪影が大きくなる。また、価格上昇が最終製品やサービスまで転されれば、計にとっても消費者物価の上昇を通じて実質購買の低下をもたらす。そうすると、企業収益の売り上げ面へも悪影が及び、個人消費や設備投資を通じて経済成長率にも悪影を及ぼす可性がある。

計の負担増は+1,453円/

 ドル建ての原油先物価格をみると、均のドバイ原油は昨年7月から上昇に転じ、今年1月までに+42.8上昇している。一方、円も対ドルで昨年7月から今年1月までに0.7減価(円安)しており、交差項の影も含めれば、円建てドバイ原油価格はこの半年強で+43.8程度上昇したことになる(資料2)。

 そこで、計への影を見ると、タイムラグを伴って消費者物価へ押し上げ圧が強まるようだ。事実2006 年1月以降の原油価格と消費者物価の相関関係を調べると、円建てドバイ原油価格の+1上昇は6カ後の消費者物価を約0.012%押し上げる関係があることがわかる(資料3)。

 従って、円建てドバイ原油価格+43.8上昇の影としては、消費者物価を6カ後に43.8×0.012%≒0.52程度押し上げる圧となり、計に負担が及ぶことになる。

 具体的な計への負担額として、2016年度における二人以上世帯の均支出額約28.1万円(総務省計調」)を基にすれば、0.52の消費者物価の上昇は6カ後の計負担を28.1万円×0.52≒1,461 円/程度、年額に換算すると1.7万円以上増加させる計算になる。

経済成長率を押し下げる原油高

 より現実的な経済全体への影について、内閣府経済社会総合研究所「短期日本経済マクロ計量モデル2015 年版)の構造と乗数分析」の乗数を用いて試算すれば、今後の原油先物価格が60ドル/バレル程度で推移した場合には、今後3年間の経済成長率をそれぞれ0.080.050.03程度の押し下げにとどまる。しかし、今後の原油先物価格が70ドル/バレルもしくは80ドル/バレル程度で推移したとすれば、今後3年間の経済成長率をそれぞれ0.190.110.080.300.180.13ポイント程度も押し下げることになる。このように、原油価格の上昇はマクロ経済的に見ても、甚大な悪影を及ぼす可性がある(資料4)。

 また、原油価格との交易利得(損失)には強い相関がある(資料5)。交易利得(損失)とは、一の財貨と他の財貨との数量的交換率である交易条件が変化することによって生じる貿易の利得もしくは損失のことであり、輸出入価格の変化によって生じる内と海外における所得の流出入の損失を示す。

 そしてこの関係に基づけば、原油先物価格が10ドル/バレル上がると年換算で1.6兆円の所得の外流出が生じることになる。一方、2017年10-12月期の原油先物価格は2017年7-9月期の均より約8.8ドル/バレル上昇しているため、2017年10-12月期の交易損失は年換算で1.4兆円程度悪化する可性がある。これは、原油先物価格の上昇により、2017年10-12月期の3カ間で約4784億円の所得が海外流出したことを意味する。
 
 また、この関係から、今後の原油先物価格が60ドル/バレル程度で推移すると仮定すれば、今年の所得の海外流出は1.1兆円程度にとどまる。しかし、今後の原油価格が70もしくは80ドル程度で推移すると、今年はそれぞれ2.8兆円、4.4兆円も所得の海外流出が生じることになる(資料6)。

 近年は経済グローバル化市場の寡占化が進展しており、物価がこれまでと較して世界の需給条件を反映した準で決まりやすくなっている。特に新経済成長率を高めた2003年頃から、経済グローバル化が実体・融両面を通じて商品況の大きな変動要因として作用している。このため、今後も世界経済の高成長が持続すれば、世界の商品況は下がりにくい環境が続くことになろう。特に今後は、米国の減税効果が顕在化することが予想され、世界の原油需要はさらに拡大する可性もある。従って、今後もしばらくは原油先物価格が高準で推移し、中長期的に見ても原油価格が高止まる可性が高い。

 これは、日本のように原油をはじめとした資の多くを海外依存する々とって所得が資へ流出しやすい環境にあることを意味する。特に人口減少等により市場の拡大が望みにくいでは、内需導の気回復は困難であり、所得の大幅な拡大も困難な状況が続く可性が高い。従って、世界中で商品況のマネーゲームが繰り広げられる限り、資海外依存度が高い日本経済が資価格上昇の悪影を相対的に受けやすく、日本経済は構造的に苦に立たされやすい環境にあるといえよう。
(文=永/第一生命経済研究所経済調部首席エコノミスト

「Thinkstock」より