[Jステーション-広島ホームテレビ]2018年3月6日放送の広島HOMEテレビ「Jステーション」で、広島発の新技術が紹介されました。

スマートウォッチなど、身につけるコンピューター「ウエアラブル端末」が今、人気です。そんな中、実は広島で「耳」を使った新しい技術が研究されています。


日本、アメリカ、中国で特許を取得

広島市立大学で医療ロボットを研究している講師の谷口和弘さん。「上あごに舌を押し当てると、ページが切り替わる」と言って見せてくれたのは、パソコンにふれることなくページを変えられるという技術。

実はイヤホンに秘密がありました。耳の中の動きを検知するための光を使ったセンサーがついています。この技術は、「earable(イアラブル)」と名付けられています。

谷口さんは、独創的な技術課題に取り組む人材を支援する、国の異能(inno)vationプログラムの初年度に、710件の応募の中から10人採用されたうちの1人です。

谷口さんは1日のほとんどの時間を研究室で過ごすため、自宅にはほとんど物を置いていません。家電は炊飯器と電子レンジと洗濯機、ヒーターだけ。テレビは好きすぎてずっと見てしまうので、仕事にならないということで置いていないとのことです。

朝、1秒も悩むことがないように、服は同じメーカーでそろえ、曜日ごとに着る服が決まっているといいます。

徹底的に研究時間を生み出そうとする谷口さんが開発したイアラブルの仕組みは、目をつぶったときや、奥歯をかみしめたとき、筋肉や骨格にひっぱられて耳の中の形が変わるわずかな差を読みとり、信号を送ることで明かりをつけたり消したりといった、スイッチにふれることなく制御ができるというものです。

この技術は、日本、アメリカ、中国で特許を取得。世界的に有名な大手メーカーもたびたび相談に訪れるということです。きっかけは大学院時代のある偶然の出来事でした。

同時通訳の機能も研究中

「ガムを食べて休憩していたんですよ。耳がかゆくなって、耳の穴に指を突っ込んでみたら、ガムをかむと耳の穴の動きが指先に伝わってきた」と谷口さん。ありあわせの部品を使ってセンサーを作り調べたところ、顔の動きによって、耳の穴の動きが違うことがわかりました。

以来10年間、ずっと耳の穴の動きを利用した、機器の研究をおこなってきました。医療用としてかむ回数を記録する装置も開発しています。

かむ回数を計測する装置による効果について、専門家にたずねました。

佐賀県医療センター好生館消化器外科の田中聡也部長は、「胃の手術をすることで、胃をとってしまうと、胃の働きがなくなります。食べ物がきちんと消化される準備ができない状態で腸に流れてしまう。ゆっくりよくかんで食べるのが非常に大事になってきます」といわれていました。こちらの病院では、イアラブルを使い、患者のかむ回数の意識づけを研究しています。

「目標設定をするだけでも少し良くなるし、機器でフィードバックをかけるとさらに良くなるというのはデータとしてとれている。患者の意識づけとしては非常に有用だと思う」と田中部長はいわれていました。

イアラブルは、音声認識技術と組み合わせて、同時通訳の機能も研究中です。首の動きを検知することによって、話をしている相手の言葉を選んで翻訳することができるようになるといいます。

谷口さんは、体の不自由な方向けというのではなく、すべての人が共感できるような使い方を考えたいといいます。「イアラブルを世界の人が当たり前のように使い、幸福を味わえるような、そんな社会が訪れることが夢」と谷口さん。イヤホンタイプのほか、アクセサリーのように耳につける端末も試作しています。

私たちが当たり前のようにイアラブルを使う世界も、そう遠くないのかもしれません。この新しい技術、これからも目が離せませんね。(ライター・石田こよみ)

「earable(イアラブル)」のホームページより