1978年、結婚して南アフリカに渡ったある英国人女性が、突然行方不明になる出来事があった。本国にいる実家の家族は、連絡が取れなくなったことを不安に思い、赤十字社などを通じて消息を確かめようとしたものの、全く手掛かりは得られず。結局、「彼女は死んだ」と諦めざるを得なかったという。ところが先日、音信不通だった女性からFacebookを通じてメッセージが届き、家族は34年ぶりに生存を確認。長く死んだものと思っていた家族は、驚きながらも大喜びしているそうだ。

英紙デイリー・ミラーやデイリー・メールによると、この女性は現在南アフリカのヨハネスブルグで暮らしているスーザン・アードロンさん(61歳)。彼女は1975年に結婚した夫と4人の子どもを連れ、南アへ移住して生活を始めた。

ところが1978年末頃、突然彼女が消息不明に。不安に思った英国の家族は、赤十字社などを通じて安否確認を働きかけたが、その行方は一向に掴めず、妻を失った夫も子どもたちを連れて1980年代はじめに帰国。こうして謎の失踪を遂げたスーザンさんを、妹や弟たちは「死んだ」と思い込み、気持ちに区切りを付けるしかなかったようだ。

それにしてもなぜ、彼女は夫や子どもを置いて失踪したのだろうか。後に判明したところによると、実は彼女、意図的に姿を消したのではなかった。ある日、交通事故に遭い、自分の身元が全く分からなくなるほどの記憶喪失状態に。しかも、そのときたまたま家族と繋がる手掛かりも所持していなかったため、回復後に“ケイティ”という名前の人生が始まり、家政婦として南アの家を転々とする生活を送るようになった。一時は乳がんと闘いながら、“ケイティ”としての人生を30年以上にわたって送っていたそうだ。

そんな彼女に転機が訪れたのは、昨年12月から働き始めた家に住む家族の協力。定住する家を持たず、家政婦としての仕事を探すスーザンさんの身の上を知ると、記憶を取り戻せるようさまざまな力になってくれたという。おかげで、もとの名前や過去の経歴などを少しずつ思い出し始め、やがて実家の記憶も蘇り、Facebookをたどって英中部の街ロザーハムで暮らす妹や弟のページを発見。そして先日、“スーザン・アードロン”として、34年ぶりに家族のもとへメッセージを送るという奇跡へと繋がった。

当初はとてもスーザンさんからのメッセージとは信じられず、「ネット詐欺に遭ったのかと思った」と話すのは58歳の妹ドーンさん。しかし一緒に送られてきた写真を見て、すぐに姉からと分かったドーンさんら家族は、34年ぶりに生存が確認できて喜んだという。今回スーザンさんが実家を探しあてられたのは、最後まで生存を信じて2009年に他界した両親のおかげ。「生きているかもしれない」と諦めなかった両親は、スーザンさんがいつでも戻って来られるようにと、決して引っ越しをせず、ロザーハムの家で頑なに娘の帰りを待っていたそうで、結果的に両親の執念が実った格好だ。

残念ながら夫は今年はじめに他界し、生存の一報は届かなかったものの、英国で暮らす4人の子どもたちには情報が届けられた。現状を伝える写真のやり取りもするなど、子どもたちとも繋がったスーザンさんは、空白の34年間を経て、再びもとの人生の道を歩き出している。

「両親が生きている間に分かっていたら」とこぼす妹ドーンさんだが、現在、英内務省に姉のパスポートを発行してもらえないかと働きかけを行っており、取得でき次第、彼女を英国に呼び戻して一緒に暮らす予定だという。