「レクサス」「インフィニティ」「アキュラ」といえば、日本を代表する自動車メーカーの高級車ブランドです。このうちトヨタのレクサスだけが、日本上陸(2005年)をはたし、セダンやSUVの高級車ラインナップを展開しています。日産のインフィニティやホンダのアキュラが、日本での展開を行っていないのはなぜでしょうか?文・吉川賢一

日本のメーカーに高級車ブランドが必要な理由

世界中の自動車メーカーが各市場で競合するなか、自社の車をユーザーに選んでもらうためには製品の完成度もさることながら「イメージ」が大切になってきます。

たとえば”高級車といえばベンツ”というイメージを持つ人は多いので、クルマに詳しい人もそうでない人でも、「高級車が欲しい」と思ったら、メルセデス ベンツが候補に上がる確率は高まります。当初から高級なイメージ戦略を取ってきた、メルセデスを始めとしたいくつかのメーカーは、わざわざ別にブランドを作る必要はありませんでした。しかし日本メーカーは、高級車ブランドを作る必要がありました。
 
日本メーカーが高級車ブランドを立ち上げたのは、非常に大きな市場である北米での販売をターゲットにしていたことに起因しています。

レクサス、インフィニティ、アキュラが誕生したのは1980年代。この時代はバブル景気などを後押しに、日本の自動車メーカーが世界的な市場を視野に入れて拡大していたころでした。当時米国では、高級車といえばアメリカ製で、日本車は”安くて丈夫”というのが一般的な認識でした。

そこで日本メーカーは、収益率が高い高級車販売を北米で行っていくため、自社の名前ではなく高級車専用のブランドチャンネルを作り、展開を目指しました。いわゆるブランディングです。

「レクサス」導入は成功したのか
レクサス NX300 2018

1989年にトヨタが米国で立ち上げた「レクサス」では、品質や顧客満足度において徹底的にこだわる戦略を取り、結果的に1999年から2010年まで、高級車ブランド別販売で11年連続トップになるなどいちおうの成功を収めました。

しかし、ここ日本においては2005年の導入から10年以上経過した現在も、ドイツ系高級車ブランドに販売台数で一度も勝てていません。2017年の年間国内販売台数は、45,605台(自販連調べ)で、前年比約87%。決して好調とは言えない数字なのです。

インフィニティ、アキュラはやはり導入しないのか
インフィニティ Q50

一方トヨタと同じく1989年に日産が米国で設立した高級車ブランドが「インフィニティ」です。インフィニティは、日産栃木工場においてインフィニティ車の生産に関する特別な訓練を受けた熟練職人「匠」を選出し、集中トレーニングを施すことでインフィニティのコンセプトを高いレベルで昇華させたブランドです。

2014年には中国に工場を設け、日本、アメリカに続くグローバル拠点をつくり、2017年には、独ダイムラーとの共同出資によるメキシコの新工場にて、インフィニティ車の生産を開始しています。

高い品質を持つ日本のきめ細かなものづくりによって生み出される高級車、それに日本人の心配りや粋、おもてなしの心をクルマ作りに反映させるという緻密なブランド戦略で成功し、いまや世界40カ国で展開するようになりました。

またホンダは、北米市場においていち早く高級車ブランド「アキュラ」を1986年に立ち上げ、開業初年に早くも自動車ブランド別で顧客満足度1位を獲得し、高評価が定着しました。1991年に香港、2004年にメキシコ、2006年に中国、2014年にはロシア市場へも進出し、世界展開が進んでいます。

名前を変えて販売しているインフィニティ、アキュラ
アキュラ RDX

しかし、ご存知のようにインフィニティもアキュラも、日本市場には導入されていません。ただし、それぞれから販売されている車種がまったく導入されてないわけではなく、たとえばアキュラ RLXは「ホンダ レジェンド」として、またインフィニティ Q50が「日産 スカイライン」として販売されています。とはいえ、あくまでもホンダ、日産のいち車種としての販売で、ブランドが導入されているわけではないのです。

これは前述のレクサスが、日本で完全な成功を収めているとは言い切れない状況が大きく影響していると思われます。

日本人にとっての「高級車=輸入車」という感覚的な概念は、簡単に払拭できるものではありませんし、ほとんどの日本人が国産メーカーの車を選ぶなかで、”日本メーカーの高級車ブランド”をあえて導入して、プレミアム感をどれほど抱かせられるかも、いまだ疑問符の付く状態なのです。

そういった意味では、日産もホンダも、高級車ブランドの『日本人への適性』を図っている段階だと言うこともできるのです。


日本を代表する高級車ブランド御三家は、それぞれ性格の違ったものになっています。インフィニティのこだわり抜いたクルマ作りは日本人の気質にしっくり馴染むものでしょうし、アキュラが北米で培ったクルマ作りのノウハウは日本人にとって新鮮な印象を与えるものとなるでしょう。

インフィニティ、アキュラとも、日本導入されることになったら、とても魅力的なモデルラインナップを見ることができるに違いありません。

インフィニティ、アキュラが日本に導入できない理由