文・取材:サテライト池澤

 2018年4月7日と4月8日に千葉県の舞浜アンフィシアターで行われた『ゼノギアス』初のオフィシャルコンサート“Xenogears 20th Anniversary Concert -The Beginning and the End-”。本記事では同コンサートの千秋楽となる、8日夜公演の模様をお届けする。

開演前から会場がファンのわくわく感に包まれる

 20年前に生まれた名作RPG『ゼノギアス』に心を鷲掴みにされた人々が、2018年4月8日、舞浜アンフィシアターに集合。物販はもちろん、入場後の展示列も大盛況で、ソラリスシートに当選したソラリス人、一般席に当選したラムズ(地上人)の『ゼノギアス』ファンが会場中にひしめくことに。ゲームと異なるのは、ソラリス人もラムズも等しく『ゼノギアス』を心から愛しているということ。四方八方から『ゼノギアス』の話題が聞こえてくるうえ、皆楽しそうに展示物やポスター裏の落書きを撮ったり、パンフレットに目を通したりしていた。


【画像26点】「行きましょう! 光田さんの………光田さんの……曲が、待ってる!! 『ゼノギアス』コンサート千秋楽をリポート」をファミ通.comで読む(※画像などが全てある完全版です)

 そういったわけで、同じ作品を愛し、今日という日を目いっぱい楽しもうとしている同志の集結に、わくわくせずにはいられない!


 この記事は筆者の主観が多分に含まれるため、記述や演出の表現に首をかしげる人もいるかもしれない。が、そこは聖母ソフィアのような慈愛の心で読んでいただけると幸いだ。

聞けばすぐにシーンが浮かぶ『ゼノギアス』数々の名曲

 個人的に思う“ゲームの名曲”は、イントロを聞くだけでプレイ当時の思い出やゲーム中のワンシーン、キャラクターのセリフなどが鮮明に浮かんでくるもの。その点で言えば光田康典氏の曲は、自分にとってすべてが最高のゲーム音楽だ。たとえば筆者はグラーフのテーマを聞くと「我の拳は神の息吹!」という口上や、グラーフに力を注がれて「ぎにゅうぁぁぁあ……」と謎のセリフを発するシャーカーンがいまでも脳裏に浮かぶ。(グラーフ関連のイベントはセリフのインパクトとシチュエーションが印象的すぎる(笑)。)そして『飛翔』を聞けば、マリアがゼプツェンと出撃する、大好きな名シーンが即座に頭に出てくる。こちらは公演でもまさにマリア出撃の映像が使われていて思わずガッツポーズ。

 今回の公演は各プレイヤーごとに思い入れがあるであろうこうした名曲が、ゲームの映像や照明の演出だったり、公演用にアレンジされた生コーラスだったりと、あらゆる手法で表現されていった。前置きが長くなってしまって申し訳ないが、ここから本公演の模様をセットリストとともに振り返っていく。

【第1部(前半)セットリスト】
01.冥き黎明
02.海と炎の絆
03.おらが村は世界一
04.風のうまれる谷~遠い約束(Piano)
05.鋼の巨人
06.夢の卵の孵るところ
07.グラーフ 闇の覇者~導火線
08.つわものどもが夢のあと~死の舞踏
09.SMALL TWO OF PIECES PianoVersion
10.盗めない宝石
11.傷もてるわれら 光のなかを進まん
12.やさしい風がうたう
13.lost...きしんだかけら

 ファンならピンと来るかもしれないが、本公演はほぼゲームのストーリーの流れに沿ったセットリストとなっている。そのため、曲を聞き進める=これまでの各プレイヤーの冒険を追体験するかのような感覚を楽しめるようになっていた。そこからさらに、コンサートならではの演出が加わるのだからたまらない。

 最初の『冥き黎明』では、いきなりANÚNA(アヌーナ)が登場。スモークによる演出も入り、オープニングのアニメーションで船が自爆するところでスモークの色も映像に合ったものになるなど、凝った演出が続々登場。『遠い約束(Piano)』では、ゲーム中でオルゴールが流れ始めたときに舞う花の演出をミラーボールの光で再現するなど、ファンの記憶をこれでもかと揺さぶっていく。


 『盗めない宝石』はANÚNAによるボーカル曲へと新生。フェイとエリィを表現した男女のソリストに会場中が釘付けに。そしてそのままつぎの曲『傷もてるわれら 光のなかを進まん』へ進むと、会場がニサン大聖堂と化した。ステンドグラス風の光の演出に加え、円陣を組んだANÚNAの中心には、ニサンの十字架をした照明が当てられていた。曲に歌詞もつき、神々しい賛美歌と粋な演出に会場中がうっとり。



【第2部(後半)セットリスト】
14.悔恨と安らき゛の檻にて
15.紅蓮の騎士
16.神無月の人魚
17.風がよぶ、蒼穹のシェバト
18.飛翔~翼
19.予感
20.覚醒~神に牙むくもの
21.最先と最後
22.SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~


 第2部ではANÚNAがまたも大活躍の『悔恨と安らぎの檻にて』からスタート。ANÚNAの一部メンバーが小さな灯りを手に通路を歩くさまは、教会のミサの様相。『紅蓮の騎士』では、ギターなどのバンドアレンジも加わり、よりボス戦らしい曲へと昇華。続く『神無月の人魚』では美しいハープの音色に青とエメラルドグリーンの照明が合わさり、海の底やエメラダを思わせる演出が印象的だった。そして『風が呼ぶ、蒼穹のシェバト』は眩いばかりの光の演出が目を惹いた。とくに曲の終わりの際には、ステージの頭上にあるサークル状の器具がライトアップ&全ライトが一気に上を向き、まるでシェバトそのものになったかのような演出が素晴らしい。その分、ちょっとライトが眩しかったのだが(笑)。


 第2部の中盤では、おそらく本公演で1、2を争うほどファンが心を震わせた『飛翔』と『翼』のメドレーが展開。『飛翔』でマリア対ニコラの一連のイベントシーンの映像を見せたうえで、大空のスクリーンを背景にした『翼』へと繋げる演出。ギターとベースの演者が超ノリノリで跳ねたり拳を突き上げながら演奏していたのが印象的だった。曲のよさとも相まって涙腺が緩んだ、この曲のコンボはズルい(笑)!


 盛大な拍手が送られた『飛翔』~『翼』のメドレーが終わったところで、光田康典氏のMCに。「これからデウス戦となりますが覚悟はいいですか!?」といった檄を飛ばし、いよいよ公演も大詰めに。ここからは怒涛の最終局面で流れる曲のラッシュ。そして満を持してJoanne Hogg(ジョアンヌ・ホッグ)の登場へ! 20年前と変わらぬ美声で、エンディングテーマの『SMALL TWO OF PIECES ~軋んだ破片~』を歌い上げ、割れんばかりの拍手が会場中に響き渡った。



【アンコール】
23.STARS OF TEARS
24.BALTO & LAHAN(CREID Special Version)
25.遠い約束

 アンコールでは再び光田康典氏がステージに戻ってジョアンヌを呼び、ゲーム未使用の『STARS OF TEARS』を披露。『BALTO & LAHAN』のメドレーでは、曲に合わせて観客が手拍子をしながら、光田康典氏による演奏者紹介が行われた。そして曲も終わったところで、観客がスタンディングオベーション。津波のような拍手の中、光田康典氏のMCとともに、出演者が勢揃いの記念写真撮影が行われた。


 そしてそれも終わると、最後にステージに残った光田康典氏がおもむろにテーブルにひとつの箱を置き、ネジを巻いた。そこから流れ出したのは、『遠い約束』のオルゴール。照明でオルゴールだけが照らされる中、観客は総立ちのまま、オルゴールが奏でる音色を噛みしめるように聞き入っていた。オルゴールが1巡すると、今度こそ公演のプログラムはすべて終了したのだった。


やっぱり『ゼノギアス』は最高!

 『ゼノギアス』発売から20年が経過し、当時少年少女だった人はみな、大人になった。しかしこの日だけは、光田康典氏が公演のテーマとして挙げていた“皆さんの記憶を呼び覚ましたい”という想い通り、20年前の記憶が鮮やかに蘇り、少年少女のころの自分に戻っていたのではと思う。同時に、またひとつ『ゼノギアス』に関する新しい記憶が心に深く刻み込まれ、公演前よりも本作が好きになったのではないだろうか。少なくとも筆者はそうだ。正直に言うと、この先25周年、30周年と、節目の年でまた単独コンサートを開いてほしい気持ちがある。ファンの、そしてきっと光田康典氏の『ゼノギアス』への情熱は、まだまだ最後(いやはて)には至らないのだから。


 最後に、公演を終えた光田康典氏、ANÚNAのリーダーであるマイケル・マクグリン氏、そしてジョアンヌ・ホッグ女史にインタビューを行ったので、その様子をお届けする。


――まずは、4公演を終えての感想をお願いします。

マイケル 日本で公演するときは特別な雰囲気の場所でやることが多く、この前は“能”とのコラボレーションでした。今回もすばらしいミュージシャンたちと共演できてよかったです。

ジョアンヌ とてもすばらしい経験でした。ふだんはバンドとやることが多いのですが、今回はオーケストラといっしょに共演できて楽しかったですね。何十年ぶりに光田さんと再会できたこともよかったです。

光田 本当に夢のような4公演でした。構想は2年ほど前から考えてはいましたが、頭に描いていたコンサートを実現するにはかなりたいへんな準備と、多くの方の協力がなければ実現できないことはわかっていました。それをこうして具現化できたのは、今回関わっていただいたスタッフの皆さんのおかげだと思っています。初めて会うミュージシャンも多かったのですが、回を重ねるごとによって、お互いのフィーリング、魂がひとつに集約していくような体験もできました。

――今回のコンサートを行うにあたり、光田さん自身が参加することは、頭の中にあったうえでの企画だったのでしょうか?

光田 僕は演奏家ではなく、いちコンポーザーなので、正直人前で演奏することがいいのかどうか? という想いは、(光田氏自身の)20周年のコンサートを行ったときもずっと感じていたんです。ですが、今回は僕自身が出ることによって、ファンの皆さんといっしょの空間にいたかったんですよ。演奏のうまさとかではなく、単にファンの熱量を感じたいという考えから、ステージに立つことにしたんです。いつも山の中に籠って作曲しているせいか、どうしても生の感情を見たくなって(笑)。

――実際、公演でそうした生の感情に触れてみて、どうでしたか?

光田 もう、皆さんの熱意がひしひしと伝わりました。4000もの目が、こう集中して……(笑)。本当にいい経験をさせていただきました。

――コンサートのメンバーは光田さんが選ばれたのでしょうか?

光田 そうです。今回はとにかく、ジョアンヌが来れないようならこのコンサートはやらないと決めていました。この4月の日程も、たぶん無理やり合わせてくれたんだと思いますが「来れる」と言っていただけたので、「これならいける!」と。コーラスに関しても、(原曲では)教会音楽のようなものと、ブルガリアンボイスのものがあって、2種類のコーラスを呼んで演奏するというのもおもしろいんですけど、制約も多いんですよ。いろいろと考えたうえで、ANÚNAと共演してみたいという想いが以前からずっとあったこと、僕がマイケルの大ファンなこともあり、彼らに来てもらうことになりました。いっしょにステージに立てて幸せでしたね、こうして願いが叶ったのは奇跡ですよ、奇跡!

――その奇跡の公演を通して、光田さんが改めて感じた『ゼノギアス』の魅力はどういったところでしょうか?

光田 やっぱり物語が非常に深いゲームですので、音楽だけの力ではないと思っています。田中久仁彦さんの絵やシナリオの深さであったり、そういった総合的なものがひとつのゲームとして確立できたことが魅力です。すばらしい作品に仕上がったことが、このコンサートにつながったと感じているので、本当に、このゲームに参加できてよかったなと思いますね。

マイケル 海外から日本のこういったゲーム文化を見て思うことは、すばらしいアーティストたちの作品だなということです。ゲームとして、あるいは20年前のノスタルジーといったものだけでなく、ひとつのアートとして人の心に響いています。こうした芸術作品を作ると、ちゃんと人の心に響くんだなということを改めて感じました。

――ジョアンヌさんは20年前に突然日本からオファーが来て、こうして20年経って再びオファーが来た、数奇な運命をどう思いますか? 

ジョアンヌ 20年前にオファーをいただいたときは、まったくといっていいほどゲームのイメージがなかったんです。けれどいまはゲームが好きなふたりの10代の息子たちが、ゲームにハマっています。こういったすばらしいゲームが若者たちに与える影響については、非常にありがたく思っていますし、20年前にゲームを遊んでいた方が、こうしてコンサートに来たときの反応を見て、やはりそれぞれ強い想いが物語や音楽にあるということを体感できました。今回のオファーが特別なプロジェクトだということを改めて感じましたね。ご招待いただいたこと自体が光栄で、子どもたちに誇れるような話を提供していただいてありがたいです。

――光田さんにうかがいます。舞浜アンフィシアターを会場に選んだ理由をお聞かせください。

光田 『ゼノギアス』は最初に宇宙船“エルドリッジ”から物語がスタートしますよね。舞浜アンフィシアターをこの船に見立てて考えていたので、ここ一択で決めて、ほかの場所は考えていませんでした。1曲目の『冥き黎明』を演奏したときから、皆さんが世界に没頭できるだろうということで、ここの会場を選びました。

――演出もこの会場に合わせたものに?

光田 もちろんです。ステージに穴が開いて煙が出てくるのも、惑星に船が落ちるシーンに合わせたもので、最後にジョアンヌがそこから上がってくるのも、ストーリーを意識した演出です。『悔恨と安らぎの檻にて』でANÚNAが歌っているときの演出も、ビリーが心の檻から抜け出せないでいる苦しみを表したりしています。まあ、もう見られないんですけどね……こんなことを言うと、絶対Blu-ray化してくださいって言われますけど(笑)。ただ僕は、ライブは生ものだと思っているんです。ですので、じつはニコニコ生放送も拒否していたのですが、地方の方などで「どうしても見たい」という方もたくさんいらっしゃったので、その想いを叶えられたらいいなということで、実現した経緯があります。


マイケル 演出に関しては、このコンサートはただゲーム音楽を再現するだけのものではなく、コンサートの中にもストーリーがあり、我々もその中の登場人物としてキャラクターが設定されていました。ただのコンサートならオファーを引き受けていなかったと思います。

光田 ええっ、怖っ(笑)。

一同 (笑)。

マイケル ただ歌うだけでなく、自分たちもコンサートの一部になって貢献したいという考えがありましたから。自分たちがいることによって、このコンサートにほかのコンサートとの違いを生み出せることを意識していました。

――ジョアンヌさんは、最後にステージ中央の穴から出てきたときは、どんな感想を抱かれましたか?

ジョアンヌ すごく怖かったです。初めて上ったときは緊張して気絶するかと思いましたし、お願いだから歌詞を忘れないようにって祈ったり(笑)。ただ、上がってからは恐怖を忘れるくらい楽しかったです。ステージの上でお客さんと一体になった瞬間、自然と歌えることができました。

光田 ジョアンヌといえば今回、彼女は飛行機トラブルで遅れたんですよ。本当はリハーサル1日目に来るはずだったんですが、本番前夜の通しリハで到着したんです。だから僕はリハの最後で、穴の下から上がってくるジョアンヌを見て「うわぁ、ジョアンヌが下から!」ってなったんです。20年ぶりの再会がこの形はないだろうって(笑)。

――(笑)。最後に、コンサートのタイトルに込められた想いをお聞かせください。

光田 難しいですね。物事が動き出し、終わってしまうというのは、何においてもそのくり返しだと思うんです。このコンサートもひとつの人生として捉えると、スタートがあって、最後にこうやってみんなと終わりを迎える。ファンの方々もこういう生きかたをしてきたんじゃないかと思います。このコンサートは奇跡が重なってできたもので、もう2度とないかもしれないという想いを込めて、このタイトルにさせていただきました。……でももう1回コンサートをやりたいです、同じメンバーでまた!

マイケル 彼は奇跡と言いましたが、むしろ不可能なことをやり遂げたのだと思います。いろいろな人が集い、飛行機の遅れや機材トラブルなども乗り越えてコンサートを可能にしました。つまりこのコンサートは必然的に起きたことです。

光田 いいこと言いますね、マイケル。じゃあ、これは必然ということで(笑)!


 こうして、和気あいあいとした空気のまま、コンサートを大成功に導いた演者たちは部屋を後にした。光田さんの「もう1度やりたい」という発言が、必然に変わるその日を、ファンは楽しみに待とう!


写真:中村ユタカ

・“Xenogears 20th Anniversary Concert -The Beginning and the End-”公式サイト
http://www.square-enix.co.jp/music/sem/page/xenogears/20thconcert/
・Xenogears 20th Anniversary Concert 千秋楽配信ページ
http://live.nicovideo.jp/watch/lv311856881