スクウェア・エニックスは,2018年2月に20周年を迎えた「ゼノギアス」のコンサート「Xenogias 20th Anniversary Concert -The Beginning and End-」を,舞浜アンフィシアターにて開催した。同作の楽曲を手掛けたコンポーザー光田康典氏によるプロデュースで,2018年4月7〜8日に昼と夜の計4回の公演が行われた。本稿ではその最終公演となった4月8日夜の部の模様をレポートする。


 会場となったアンフィシアターには公演開始前から多くのファンが駆けつけ,物販や展示コーナーに行列を作っていた。とくに展示コーナーは,貴重な開発資料や発売前のフィギュアのサンプルなどが展示され,すべて撮影が可能だったため,公演直前まで賑わいを見せていた。


「Xenogias 20th Anniversary Concert -The Beginning and End-」

日時:4月7日(土)【昼公演】13:00開場/14:00開演【夜公演】17:30開場/18:30開演
   4月8日(日)【昼公演】11:30開場/12:30開演【夜公演】16:00開場/17:00開演
場所:舞浜アンフィシアター
作曲:光田康典
演奏:アーネンエルベ・オーケストラ −ゼノギアスコンサートスペシャルバンド&オーケストラ−
スペシャルゲスト:Joanne Hogg / ANUNA
主催:スクウェア・エニックス/プロマックス/フロンティアワークス
協力:プロキオン・スタジオ
(敬称略)

<セットリスト>

<第一部>
01. 冥き黎明
02. 海と炎の絆
03. おらが村は世界一
04. 風のうまれる谷〜遠い約束(Piano)
05. 鋼の巨人
06. 夢の卵の孵るところ
07. グラーフ 闇の覇者〜導火線
08. つわものどもが夢のあと〜死の舞踏
09. SMALL TWO OF PIECES PianoVersion
10. 盗めない宝石
11. 傷もてるわれら 光のなかを進まん
12. やさしい風がうたう
13. lost...きしんだかけら

<第二部>
14. 悔恨と安らぎの檻にて
15. 紅蓮の騎士
16. 神無月の人魚
17. 風がよぶ,蒼穹のシェバト
18. 飛翔〜翼
19. 予感
20. 覚醒〜神に牙むくもの
21. 最先と最後
22. SMALL TWO OF PIECES 〜軋んだ破片〜

<アンコール>
23. STARS OF TEARS
24. BALTO & LAHAN (CREID Special Version)
25. 遠い約束
 今回の公演では,光田氏が選出したアーティストによる「アーネンエルベ・オーケストラ −ゼノギアスコンサートスペシャルバンド&オーケストラ−」が編成された。また,本作のサウンドトラックにも参加しているアイルランドの合唱団ANUNA(アヌーナ)がコーラスとパフォーマンスを行い,公演後半では本作のエンディングテーマを歌ったJoanne Hogg(ジョアンヌ・ホッグ)さんもボーカルとして参加。光田氏自身もシンセサイザー,パーカッション,ブズーキなどで演奏に加わっていた。


 演奏はゲームの展開とほぼ同じ構成で進行。「我はアルパなり,オメガなり……」の英文メッセージがスクリーンに映し出されると,1曲目「冥き黎明」の演奏がスタートした。荘厳な楽曲とともに,ANUNAの皆さんが会場のオープンステージに集まり,中央のせりからスモークが上がるという,ゲームのオープニングをイメージした演出がほどこされた。


 壮大なオープニングから一転,「海と炎の絆」「おらが村は世界一」と,心が安らぐ楽曲が続いていく。この演奏後光田氏は檀上でマイクを取り,「今日は皆さんを20年前にタイムトリップさせます。感情のまま楽しんでください」と挨拶した。

 4曲目「風のうまれる谷〜遠い約束」のメドレー後半では,かのオルゴールの名曲をピアノソロにて演奏。スクリーンにはシタンがフェイにオルゴールを聴かせるシーンが映し出された。
 5曲目「鋼の巨人」では,戦闘曲らしいロックテイストの演奏が繰り広げられる。ステージ上は赤い照明に切り替わり,ライトによって戦闘の緊張感を演出している。


 「夢の卵の孵るところ」を挟み,「グラーフ 闇の覇者〜導火線」では,赤い月をバックに表れたORヴェルトールのカットがスクリーンに映し出され,会場が再び戦闘シーンへと突入していく。来場者の興奮を煽るようなドラムとティンパニによる打楽器の力強い演出を組み込んだ楽曲は,演奏終了後に大きな拍手を呼んだ。


 10曲目には再びANUNAがステージに登場し,「盗めない宝石」のボーカルアレンジを披露。次の「やさしい風がうたう」とともに,美しい合唱で来場者を魅了する。そして「やさしい風がうたう」と「lost...きしんだかけら」では,主旋律をアコーディオンが奏で,客席を癒すようにコンサート第一部を締めくくった。


 15分の休憩を挟んだ第二部は,鐘の音から続く「悔恨と安らぎの檻にて」で始まった。ANUNAによるアカペラの歌が会場を包み込み,来場者をホッとさせたかと思いきや,「紅蓮の騎士」で再び緊張感を募らせ,「神無月の人魚」では光田氏のブズーキを主旋律とする演奏が展開されるなど,緩急の激しい構成が続いていく。

 そして18曲目「飛翔〜翼」は,ゼノギアスファンの誰もが興奮する名曲のメドレーで,ギターによるロックアレンジも入り,来場者からは大きな拍手と歓声が贈られた。


 ここで再び光田氏がマイクを取り,今回のセットリストについて解説した。「セットリストと演出を考えるのは1か月以上,悩みに悩んだ」とのことだが,そのコンセプトは「皆さんのゲームプレイ時の思い出を蘇らせる」ということにあり,ほぼゲームプレイで聴くのと同じ順番で構成したそうだ。ラストに向け,「皆さん,デウスと戦う気力はありますか?」と訪ねると,来場者は大きな拍手で返答した。

 「予感」から「覚醒〜神に牙むくもの」までの“神展開”にふさわしい演出で,スクリーンにはデウス戦やウロボロス戦(の背景に浮かび上がる顔)が映し出され,演奏はいよいよクライマックスだ。ANUNAによる「最先(いやさき)と最後(いやはて)」の合唱,そして光田氏が「このコンサートに絶対に必要な人物」として,はるばるアイルランドから招へいしたJoanne Hoggさんによる「SMALL TWO OF PIECES 〜軋んだ破片〜」の20年を経ても劣ることのない美しい歌声に,ハンカチで目をぬぐう来場者の姿も見られた。


 ここからはアンコールへと突入。ステージには再びJoanne Hoggさんが登場し,客席の拍手に「アリガトウ」と応え,「憧憬」のボーカルアレンジ曲でサントラにのみ収録された「STARS OF TEARS」を披露した。


 そして「BALTO & LAHAN」へと続く展開ではANUNAのメンバーもステージに登場。来場者も全員が立ち上がり,手拍子で応えた。光田氏は演奏中にメンバーを1人ずつ紹介するなど,オーケストラのコンサートとは一味違った明るいエンディングとなった。


 鳴り止まないスタンディングオベーションの中,ステージに1人残った光田氏は手元にある箱をステージ中央のテーブルに置き,その蓋を開けると,本当のラスト曲「遠い約束」が流れ出し,約2時間30分に及ぶすべての演目が終了となった。

 公演終了後,光田氏とJoanne Hoggさん,そしてANUNAのMichael McGlynnさんへの合同インタビューが行われたので,そちらもお届けしよう。


――本日の最終公演を終えての感想をお願いします。

Michael McGlynnさん:
 我々の日本での公演は特別な舞台が多くて,昨年は能と一緒にやらせていただきましたが,この公演でも素晴らしいミュージシャン達と競演できて,非常に良かったと思っています。

Joanne Hoggさん:
 とても素晴らしい経験でした。普段あまりご一緒する機会のないオーケストラの演奏で歌えたことは本当に良かったです。それと十数年ぶりに光田さんと再会できたのも嬉しかったです。

光田康典氏(以下,光田氏):
 僕にとって,この4公演は本当に夢のようでした。コンサートの構想は数年前からあったのですが,それを実現するにはかなり大変な準備が必要だということは当初から分かっていて,それをこうして具現化できたのは,協力いただいた皆さんのおかげだと思っています。
 出演するミュージシャンも初めて顔を合わせる方々がいたのですが,演奏の回を重ねるごとにお互いのフィーリングや魂が一つに集約していくような体験ができて,本当に素晴らしい4公演でした。

――今回のコンサートに光田さんご自身が参加されるという構想は最初からあったのでしょうか。

光田氏:
 僕自身は演奏家ではなくコンポーザーなので,果たしてコンサートで僕が演奏してもいいのだろうかという思いがずっと心の中にあったんです。本来ならば出なくてもいいんですが,いつの間にかコンサートという場所でファンの皆さんと一緒の空間にいたい,その熱量を生で感じたいという思いが強くなって,自ら「やります」ということになりました(笑)。

――その熱量は実際に感じられましたか。

光田氏:
 はい。公演ごとに2000人の熱い視線がこちらに向いていましたから(笑)。なかなかない経験でした。

――今回の出演者の編成はかなり独特でしたが,メンバーは光田さんが選ばれたのですか。

光田氏:
 はい,メンバーは僕が選びました。何よりこのコンサートをやるにあたり,Joanneがいないと話にならないと考えていて,彼女が来られなければ,コンサートはやらないぐらいの思いがありました。ずっと前から交渉をしていて,この4月の日程にスケジュールを合わせてもらって,ついに実現したというわけです。
 コーラスについては2パターンを考えていて,教会音楽っぽい綺麗なクワイヤと,オリジナルのブルガリアンボイスを再現するという案で,いろいろ考えたうえでANUNAにお願いをしたんです。僕自身がMichaelの大ファンで,一緒にステージに立てたのは本当に幸せでした。

――この公演を終えて,光田さんが改めて感じたゼノギアスの魅力はどこでしょうか?

光田氏:
 物語の深さはすごく感じました。画やシナリオ,音楽などによる総合的なものが揃って一つのゲームとして確立できた素晴らしい作品だということが,このコンサートに繋がったと思っています。

Michael McGlynnさん:
 20年前の作品ながら,日本のゲーム文化は,たくさんの素晴らしいアーティスト達が作りあげた芸術であり,それが人の心に響いているということを,こういう機会に強く感じますね。

――Joanneさんにうかがいます。20年前のゲームの主題歌を歌ってほしいというオファーと,今回のコンサートのオファーについては,それぞれどういう感想をお持ちでしたか?

Joanne Hoggさん:
 20年前は,ゲームの主題歌を歌うというオファーを受けてのイメージはあまり湧きませんでした。それが今は息子が2人産まれたことなどもあって,印象は全く変わったんです。こうした素晴らしいゲームが若者達に与える影響に対して,本当にありがたいという気持ちが強くなりました。
 今回のオファーについては,「これ本当!?」という信じられない思いのほうが強かったですね。でもステージに立ってみると,客席の方々が20年前にゲームから感じ取った強い思いを体感することができて,本当に嬉しかったです。これで息子達にも誇れます(笑)。

――この舞浜アンフィシアターという会場を選んだ理由はあるんでしょうか?

光田氏:
 ゲームをやられた方はお分かりかと思いますが,ゼノギアスというゲームは,エルドリッジという宇宙船のシーンから物語が始まりますので,その宇宙船に似ていたということが,このアンフィシアターを選んだ理由です。ほかの会場のことは考えずここ一択でしたね。
 あのステージで1曲目の「冥き黎明」を演奏すれば,皆さんがゼノギアスの世界に没頭できるだろうということで,ここを選びました。

――さまざまな演出もこの会場に合わせたものなのでしょうか?

光田氏:
 もちろんです。演奏に合わせてステージのせりが開いて煙が上がったり,最後にJoanneがあそこから上がってきたりするところは,全てゲームのストーリーに合わせた演出です。ANUNAが「悔恨と安らぎの檻にて」を歌ったときも,あの曲の主役でもあるビリーの心にある檻を彼らが円形に並ぶことで表現しているとか,ゲームとリンクした演出はかなり入れ込んだつもりです。


Michael McGlynnさん:
 単純にゲームの音楽を演奏するコンサートではなく,その中にストーリーがあって,我々もあの中で出演者として演じていたので,オファーを引き受けたんです。ただ歌うだけのコンサートだったら,もしかすると引き受けなかったかもしれません。

光田氏:
 それは怖いなあ(笑)。

――Michaelさんから光田さんに対して,演出の提案などはありましたか。

Michael McGlynnさん:
 直接提案したわけではありませんが,自分達がいることによってコンサートに違いを生み出すことを強く意識して演じました。

――Joanneさんは,ステージの真ん中から上がるとき,どんな気持ちでしたか。

Joanne Hoggさん:
 凄く怖かった! 始めてのときは,気絶するぐらい怖かったんです。緊張して血圧が上がるような感覚があって,とにかく歌詞を忘れないように祈っていました(笑)。

――でも公演ではその緊張を感じることなく歌ってらっしゃいましたよね。

Joanne Hoggさん:
 はい,実際に皆さんの前に立ってみると,会場が一体化したような気持ちになって,緊張を忘れて歌うことができました。

光田氏:
 Joanneは今回飛行機のトラブルで,1日遅れて日本に到着したんです。それによって事前のリハーサルに参加できなくて,前日の通しリハで穴の下から上がってくる彼女を見て「あっ,Joanneだ!」と叫んだのが,実は20年ぶりの再会だったんですよね。

――当日はニコニコ生放送で有料中継されていましたが,例えばあの放送が映像化されるような可能性はありますか。

光田氏:
 僕自身ライブは「生もの」だと思っているので,あまり映像化することは好きではないんです。実はニコニコ生放送もあまり乗り気ではなかったんですが,どうしても見たいという方が全国にたくさんいらっしゃったので,その思いを実現するために中継していただきました。

――コンサートのタイトル「-The Beginning and End-」に込めた思いがあれば教えてください。

光田氏:
 うーん,難しいですね。曲のタイトルでもある「最先と最後」という意味ですが,物事が動き出すには必ずきっかけがあって,時がくれば終わってしまうということが,日々日常で繰り返されていますよね。
 このコンサートも同じで,最初のスタートからこうして終焉を迎えたわけですが,とにかくさまざまな奇跡が重なって成功できたもので,きっと二度とはないという意味も込めたタイトルなんです。でも,いつかまた同じメンバーでやりたいです!

Michael McGlynnさん:
 彼は奇跡と言いますが,不可能なことを実現したということは必然でもあるので,また必ずできると思います。

光田氏:
 いいこと言うね! 本当に,いつかまたやれるといいですね。

――ありがとうございました。



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「ゼノギアス」20周年記念コンサートをレポート。ゲームのストーリーに沿った選曲と演出で,会場は感動の嵐