ahead archivesより提供されたものです。

フランスにはスポーツカー・メーカーが現存していない。ブガッティはフランスに根のあるブランドだけど、思想も技術も今やドイツ国籍というのが相応しいし、復活なったアルピーヌは純粋なフレンチ・ブランドではあるけれど、今はまだ新しいモデルの誕生を僕達ファンが首を長くして待ってる段階。3年ほど前にジェンティ・オートモービルという新興メーカーがスーパーカーの計画を発表したが、まだポリゴン製の車体がモニターの中を走ってる段階だ。text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.144 2014年11月号]

vol.28 隠れスポーティなフルサイズサルーン プジョー 605
アヘッド プジョー 605

といって、フランスにスポーツできる楽しいクルマがないわけでもない。市販のラインアップをベースにしてホットなモデルを作り上げるという点でフランスの右に出る国もそうはないし、スポーツを謳ったりしないフツーの乗用車が走らせてみたら意外や驚くぐらいスポーティ、なんてことも往々にしてあるのだ。

プジョーもその典型である。歴史を遡れば1910年代に今のF1の先祖のようなグランプリやインディ500マイルといったレースに出場していたほどだし、'80年代半ばの世界選手権で猛威を奮って以降のラリーでの活躍には目覚ましいものがある。'90年代前半にはル・マン24時間レースでも2連覇している。

とりわけその'80年代半ば辺りから'90年代頭にデビューした市販車は全体的にグッとスポーティさを増した時期で、かなり気を惹かれたものだ。小柄で俊足な205GTiやキレイ系セダンにDOHCをブチ込んだ405Mi16といった明確なスポーツモデルはもちろんのこと、それ以外のモデル達もただの伝統の〝猫足〟なだけのクルマではなかった。

中でも最も興味深かったのは、フラッグシップとして1989年にデビューした605だった。

シトロエンXMと共用するシャシーにピニンファリーナによるクリーンでエレガントなスタイリングを持つ605は、フラッグシップらしい豪華なインテリアやロングホイールベースによる広々とした室内、夢のように座り心地のいいシートなどを持つ超快適な当時のフルサイズのサルーンでありながら、かなり反応のいいスポーティなハンドリングを持っていたのだ。

エンジンのパンチこそなかったが、ヒタヒタ心地いいのにコーナリングスピードは驚くほど速かった。ドライブするのがとても楽しかった。

プジョーは今も、スポーツ系じゃなくたって〝隠れ〟スポーティ。さらに今年から、ルノーでアルピーヌ・プロジェクトを牽引してきた大のクルマ好きにしてモータースポーツ好き、カルロス・タバレスがCEOに就任している。

今では数字の頭に〝6〟のつくフラッグシップは存在しないが、タバレスCEOの元、今後のプジョーがさらにスポーツ色の強いブランドになっていくんじゃないか?と秘かに期待してるのだ。

アヘッド プジョー 605

プジョー605は、1985年以来途絶えていた“600”番台のフラッグシップサルーンとして1989年にデビューした。4,723㎜の全長と1,799㎜の全幅に対して2,800㎜という長いホイールベースを持ったFWDモデルで、豪華で快適なサルーンとして評価は高かった。

パワーユニットはシリーズを通じて最もパワフルなものですら200psの3リッターV6だったが、巡航スピードは高く、快適なだけじゃなくハンドリングも絶妙に素晴らしかった。ただし販売は芳しかったとは言えないことから現存数も少なく、今では世界的に絶滅危惧車となっている。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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埋もれちゃいけない名車たち vol.28 隠れスポーティなフルサイズサルーン プジョー 605