米カリフォルニア州のベンチャー企業「Nectome」が、人間の脳の記憶をクラウドにアップロードするサービスを発表した。サイエンスの進化は大抵歓迎されるものだが、同社が「ただし、一つだけ条件がありまして……」と付け加えたその後の言葉に、誰もが凍りついた。「アップロードする場合、安楽死してもらうことが条件なのです」。

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■脳情報をアップロードできるが安楽死が前提

 Nectomeによると、同社のアイデアは最近話題の「記憶を視覚化する」という類いではなく、脳をそのままデジタル化してアップロードするというものらしい。

 その方法はこうだ。まず、新鮮な脳に保存液を流し込む。当然、使うのは新鮮な脳なのだから、まだ生存していることが条件になる。脳の隅々まで液で浸せたら、今度はそれを冷凍保存する。「その結果、当然その人は生物学的に死にます」。……これ、自らやりたがる人なんていないのでは?

 ところが、すでに25人も予約が入っているらしい。「自分が病に倒れ、末期に至ると、残された選択肢は一つだけ。死しかない。ならば、死の直前に脳だけでも永久に生かしてもらい、自分の記憶を後世に存在させておくことで永遠に生き続けたい」。

 彼らはむしろ長生きしたいから安楽死を選び、脳を提供するというスタンスなのだ。脳をいったんこの液に浸してアップロードすれば、その脳は半永久的にデジタルの中で存在できる。現在では豚を使った実験が行われており、経過観察をしたところでは脳の保存状態も良く、脳神経回路において「学習の場」とされるシナプスも完璧に確認できているという。これを人間に当てはめようという考えだ。

 Nectomeは脳アップロードプロジェクト(安楽死付)のために、100万ドルもの連邦補助金を獲得し、シリコンバレーの大富豪サム・アルトマン氏からも潤沢な資金を得ることに成功した。つまり、この突飛なプランに金を払ってでも賛同する人が、それなりに存在するということになる。アメリカには、医療的な自殺ほう助が認められている州が5州あり、こうしたエリアでは法の問題は比較的起きにくいだろう。


■ミチオ・カク博士も脳再生サービスを肯定

 現在まだこのNectomeのサービスは提供されておらず、実験においても人間の脳を使用していないため、豚のように脳の記憶がしっかりと残されるという保証もない。

 それでも、人間は「永遠に自分が存在できるんだ!」と夢を見る。方法に関する議論はさておき、日系人科学者、ミチオ・カク博士も、死にゆく者の気持ちを理解できる脳再生サービスそのものを肯定している。「だって、愛する人が死んだ後も、あなたはその人と交流ができるのですよ?」。

 資金を提供し、自らもこのプランを予約したアルトマン氏は、現在32歳。平均寿命を全うすると仮定すれば、あと約50年ほど生きるだろう。「僕の脳が遠い将来、この技術によりデジタル化されるのさ」と、むしろワクワクした様子で、脳アップロードの未来を見据えている。結果が判明するのは、長くともあと約50年以上先の未来。さて、どうなることか。
(文=鮎沢明)


※イメージ画像:「Thinkstock」より

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