『未来世紀ブラジル』『12モンキーズ』などの鬼才テリー・ギリアム監督が、長年実現を夢見てきた映画『ザ・マン・フー・キルド・ドン・キホーテ(原題) / The Man Who Killed Don Quixote』(ドン・キホーテを殺した男)の海外版予告編がYouTubeでついに公開された。この企画は、18年ほど前に一度お蔵入りしており、ファンにとって待望の知らせとなったが、一方で予定通りの5月に劇場公開できるのか懸念事項も報じられている。

 ギリアム監督が傑作小説「ドン・キホーテ」に独自のアレンジを加え、映画化を試みてきた本企画。そのストーリーは広告会社の幹部であるトビーが、21世紀のロンドンから17世紀のラ・マンチャへとたどりつき、そこでドン・キホーテに彼の従者であるサンチョ・パンサと人違いされてしまうというもの。そんな本作は、さかのぼること2000年、『髪結いの亭主』の故ジャン・ロシュフォールさんがドン・キホーテ役、ジョニー・デップがトビー役、ヴァネッサ・パラディがトビーに思いを寄せられる女性役で撮影が開始されたものの、屋外ロケで大雨にみまわれ機材が押し流されたり、ジャンが腰を痛めて降板せざるを得なくなるなど予期せぬ事態が続き、製作中止に。その様子を収めたドキュメンタリー映画『ロスト・イン・ラマンチャ』(2002)も公開され、その後も幾度となくギリアム監督は製作を試みるも上手くいかず、映画ファンの間では“呪われた”企画ともされていた。

 そしてついに今回公開された海外版予告編では、『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』のジョナサン・プライスふんするドン・キホーテが、目の前に現れたスーツ姿のトビー(アダム・ドライヴァー)を目にして、「サンチョ?」と人間違いするシーンもはっきり確認できる。時代のずれが生むキホーテとトビーのコミカルなやりとりに、トビーが徐々に17世紀に馴染んでいくのも興味深い。「総製作25年。テリー・ギリアムのクレイジーな夢がついに実現」という文も映し出され、ファンには感慨深い予告編となっている。

 一方で、またしても暗雲が立ち込めていた……。フランスメディアの France Inter は、2016年ころプロデューサーとして携わっていたパウロ・ブランコ(『コズモポリス』)が裁判を起こしたと伝えた。パウロは、この企画に必要な資金調達を行う代わりに、映画の権利は自分が所有するという契約を結んでいたという。しかし、パウロは資金調達に失敗し、新たなプロデューサーなどと手を組むことで、製作にこぎつけていた。それでもパウロは依然として自らに映画の権利があり、自分が認めない限りは劇場公開できないものと主張。5月8日からフランスで行われるカンヌ国際映画祭で本作が初上映されるのではないかともされていたが、その裁判の判決が6月15日に言い渡されるため、カンヌでの上映はもちろん、当初の5月劇場公開も実現されない可能性が出てきたと報じられていたのだった。

 それに対し、製作陣はFacebookでコメントを発表。「パウロ・ブランコ氏の申し立てに反して、この映画『ドン・キホーテを殺した男』の公開が阻止されることはありません」とつづられ、そこには映画公開を中止させようとしたブランコによる訴訟はすでに却下されており、6月15日の裁判はブランコとギリアムの2者間で行われるもので、映画には影響がないと説明。「この映画の製作陣と配給陣は、威嚇に脅かされることなく、25年にもわたったテリー・ギリアムのこの作品を力強く守っていくつもりです」と宣言した。製作が終わってから一筋縄ではいかないところも、いわくつきの本作らしいと言えば、本作らしいのかもしれないが、今は製作陣の力強いコメントを信じて待ちたい。(編集部・石神恵美子)

テリー・ギリアム監督 - Venturelli / GC Images / Getty Images