船舶用機器・システムを手掛けるJRCS株式会社は、マイクロソフトのMRデバイス「HoloLens」によるMR(複合現実)とAIを活用したプロジェクト「JRCS Digital Innovation LAB」を開始したことを発表しました。本プロジェクトは日本マイクロソフト株式会社と連携しての取り組みとなります。


(左から日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏、JRCS代表取締役社長の近藤髙一郎氏)

「HoloLensによる革新が起きていることに驚いた」

4月6日に行われた両社共同の記者発表会では、日本マイクロソフト代表取締役社長の平野拓也氏とJRCS代表取締役社長の近藤髙一郎氏が登壇。船上でHoloLensを持ってのフォトセッションも行われました。

JRCSの近藤氏はHoloLensに興味を持ったきっかけとして、JAL(日本航空)などの取り組みを挙げました。このニュースを知ってすぐに日本マイクロソフトに問い合わせを行い、さらに米国シアトルにあるマイクロソフトにも行き、マイクロソフト本社の技術者からもレクチャーを受けたとのこと。HoloLensについて「良い意味でショックだった。革新が起きていることを感じた」と驚きを受けたことを話ました。

日本マイクロソフトの平野氏は、これまでにJALと三菱ふそうトラック・バス、そして今回のJRCSとの取り組みによって「日本で初めての海洋上でのHoloLensの活用になり、陸・海・空で(HoloLensが)使われている」と話しました。

今回のプロジェクトでは、日本マイクロソフトはデジタルアドバイザーという立ち位置で、JRCSが会社組織としてデジタルトランスメーションを推進することをサポートするとのこと。さらに日本マイクロソフトだけでなく、米国のマイクロソフト本社も本プロジェクトに協力すると明かしました。

JRCS Digital Innovation LAB室長の空氏に米国本社との関係について質問したところ、「米国マイクロソフト本社からは現地のエンジニアによる技術サポートや記者会見で流した(コンセプト)ムービーの制作などをして頂いている」とのこと。
(JRCS Digital Innovation LAB室長の空氏)

https://www.youtube.com/watch?v=9wr-KVyqEHs

また、マイクロソフトは今回の取り組みを「一種の働き方改革」(平野氏)とも捉えているようです。JRCSの近藤氏によれば、海運業界は日本人の人手不足という問題もあるとのことで、「業界の中から改革を行い、(海運業界の)かつての輝きを取り戻したい」と、近藤氏も今回のプロジェクトの目的の1つに働き方改革が含まれていることを話しました。

JRCSは、MRによる取り組みのロードマップとして、3つの段階をステップに最終的には陸上から船舶をコントロールする自動運行を目指すとしています。

第1段階(2019年頃を目処):MRを活用した船員のリモートトレーニング
第2段階(2020年頃を目処):MRとAIを活用した船舶のリモートメンテナンス
第3段階(2030年頃を目処):船舶の自動運行

空氏は、船舶の自動運転が実現した際には、これまでの船長の役割は変化し、「デジタル・キャプテン(船長)」といった陸上からテクノロジーを駆使する業務になる可能性も示しました。

陸上から遠隔地にいる船員とも共同で海洋上の船舶にコマンドをする未来が実現することを想定しているとのこと

筆者が空氏にARヘッドセット「Magic Leap」や「Meta2」などについて質問をしたところ、「HoloLensに限らず良いデバイスは採用していく」と話しました。同氏は今回HoloLensを採用した理由として、すでに産業分野活用での実績があること、AIやクラウドをパッケージとしてマイクロソフトは提供できること、製品として優れていることなどを挙げています。

(建築、不動産、製造業、医療、教育・文化鑑賞などの様々な分野でHoloLensが活用されている)

また、完全自動運転までの今後の課題として大きいのは、通信の安定性やレイテンシー(遅延)であるとのこと。5Gの普及とその後の通信の進化によって、今回の海運業界のMRの活用のように、MRの普及が進むことも期待したいところです。