ウチの子供は米国の公立小学校に通っている。統一試験をベースにした学校評価で毎年「9」(最高10)を獲得している学校だけど、運営資金や環境に恵まれているわけではない。限られた予算に苦労し、父兄がボランティアで協力しないと成り立たない普通の小学校だ。むしろシリコンバレーの異常に高い生活コストのせいで先生集めに苦労する分、他の地域の公立学校より不利と言える。それでも「9」なのだから大したものである。それを実現できている理由は「教育に熱心」、それに尽きる。

Appleが教育をテーマにしたスペシャルイベントを開催し、Apple Pencilをサポートする329ドルの「iPad」(教育向けには299ドルで販売)を発表して、学校で採用するデジタルデバイスに注目が話題になっている。2010年に初代iPadが登場してから米国の教育市場にiPadが急速に浸透したが、低価格を武器に近年Chromebookがシェアを伸ばし、今では60%に迫るシェアを獲得している。さらにWindows PCも教育向けの低価格デバイスで採用を増やし始め、iPadが苦戦しているのが現状である。

ウチの子供の学校はiPadとChromebookを採用している。理由はどちらも必要だからだ。K-12と呼ばれる米国で無料で教育を受けられる教育期間は、幼稚園(1年間)から小学校、中学校、高校の13年間である。幼稚園や小学校の低学年だとキーボードは使えない。だから、そうした年齢層で授業にデジタルデバイスを用いるならタブレットになる。

中学年・高学年のクラスでもiPadは活躍している。ノートPCはモバイルデバイスに含まれるとはいえ、使用場所が机に限られる。iPadなら校外授業にも持ち歩いて、プロジェクトに関するインタビューを録音または撮影したり、撮った写真をその場でレポートに組み込んだりなど本当にモバイルな学びが可能になる。

しかし、教育の観点からPCは無視できる存在ではない。モバイルデバイスの活用が広がっているとはいえ、将来の社会人や研究者を育てる上でPCは使いこなせるようにしておくべきスキルの1つだ。キーボード入力を身に付けるだけでも将来の役に立つ。また、今日の先生の多くはPC世代であり、タブレットとアプリの活用は先生にとって暗中模索、PCを使ったカリキュラムの方が作り慣れていて安心できる。だから、現状、幼稚園・小学校でタブレットかノートPCのどちらか1つにするのは難しく、ウチの子供の学校ではどちらも導入し、1人1台は無理だけど、先生が作ったカリキュラムでクラスの全員がデバイスを手にできる環境を整えている。

中学校や高校になると、高度なプログラミングや動画コンテンツの作成などで高性能なPCを必要とする生徒もいる。やりたいこと、進みたい道によって必要なデバイスも異なる。それは要PCというわけではなく、タブレットが好きで、タブレットでスマートにノートをとる生徒もいる。1人1台の先にある柔軟性がポイントになる。ティーンエイジャーになると自分のデバイスを持っている子供が多く、カリキュラムの条件を満たすなら生徒が自分のデバイスを使える「BYOD」 (Bring Your Own Device) を導入する学校も増えている。

ウチの子供の場合、学校のiPadを使ったプログラムが英語の習得に効果があった。だからといって、教育にiPadが必要だとも思わない。子供にiPadを渡してただラーニング・アプリを使わせても、子供はすぐに飽きてしまう。それが家に帰ってきてからも熱心にやるのは、学校で先生が授業の中でうまく子供の興味を高めてくれているからだ。先生のカリキュラムがあってこそだし、iPadにも感謝だけど、それ以上にiPadを役立つツールにしてくれる先生のクラスになって幸運だったと思っている。

教育にデジタルデバイスを活用するのは、私の経験からだととても効果的である。ただ、デジタルデバイスで学びの本質が変わるわけではない。デジタルデバイスによって、より効率的に学ばせることはできるが、それもうまく使いこなせてこそだ。私は学校にもっとタブレットを活用して欲しい派だが、先生がノートPC一辺倒でも全くかまわない。ウチの子供の学校は1人1台ではないし、予算の問題から1人1台は難しい。それでも満足できる結果に結びついているのは、先生が生徒のために作ったカリキュラムがあり、それが機能しているからだ。より安いデバイスが教育市場を制すという人が少ないが、子供の学校がChromebookを採用しているのは「Google for Education」の生産性とコラボレーション、端末管理がカリキュラムに有効だからだ。教育に熱心な学校と先生は、予算よりも、教育のニーズを満たせるかどうかをシビアに見て判断している。
(Yoichi Yamashita)

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