名古屋大学(名大)は、同大らの研究チームが、植物の気孔開口を抑制する新規の化合物を発見したことを発表した。

この成果は、名大トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)の木下俊則教授、佐藤綾人特任准教授、大学院理学研究科の藤茂雄 研究員(現・明治大学農学部特任助教)、井上心平氏、東北大学工学研究科の魚住信之教授らによるもので、日本植物生理学会の国際誌「Plant & Cell Physiology」に掲載された。

気孔は、植物の表皮にある孔で、太陽光に応答して開き、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みや、水と酸素の放出など、植物体の通気口として働いている。気孔が開くためには、気孔のエンジンとして働く細胞膜プロトンポンプ(タンパク質)が光によって駆動される必要がある。しかし、青色光がどのようにプロトンポンプを活性化するのか、シグナル伝達の詳細は明らかになっていない。

研究チームは、化合物ライブラリーを用いて、気孔開度に影響を与える化合物の網羅的な検索を行った。まず、植物(マルバツユクサ)の気孔開度を簡便に、かつ効率よく計測する実験系を確立した。次に、この方法により、約2万化合物の中から、光による気孔開口を抑制する化合物9個と、暗所下で気孔開口を促進する化合物2個を選抜した。

光による気孔開口を抑制する2化合物(SCL1、SCL2)について詳細な解析を行ったところ、これらの化合物は気孔閉鎖を誘導する植物ホルモン・アブシジン酸とは異なる様式で気孔閉鎖を引き起こしていること、気孔開口のエンジンとして働く細胞膜プロトンポンプの活性化を阻害することで気孔開口を抑制することが明らかとなった。

さらに、SCL1をバラやエンバクの葉に散布し、葉を切り取って観察したところ、乾燥による葉のしおれが顕著に抑制されることが明らかとなった。このことから、同研究では、気孔開度に影響を与える新規化合物の選抜を起点とし、気孔開口の重要因子細胞膜プロトンポンプを阻害することで、切り花や生け花の鮮度保持や、農作物の乾燥耐性付与剤としての利用が期待される化合物の同定に成功した。

今回、研究チームが発見した気孔開口を抑制する2化合物(SCL1、SCL2)は、アブシジン酸のような多面的な作用を持たず、気孔のみに作用して植物に乾燥耐性を与えることから、副作用のない理想的な乾燥耐性剤の開発に繋がることが期待される。想定される利用方法としては、切り花や生け花の鮮度保持や、それらの大幅な輸送コストの削減、乾燥地における農作物の乾燥ストレスの軽減などが考えられる。
(早川厚志)

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