ロックバンド『オワリカラ』のタカハシヒョウリによる連載企画『オワリカラ・タカハシヒョウリのサブカル風来坊!!』。毎回タカハシ氏が風来坊のごとく、サブカルにまつわる様々な場所へ行き、人に会っていきます。久々更新の第18回となる今回は、昨年の7月に続いての第2弾。『創刊50周年記念 週刊少年ジャンプ展VOL.2 -1990年代、発行部数653万部の衝撃-』をレポートします。


俺とジャンプ ~653万分の1のジャンプ黄金期~

いとも簡単に、感極まってしまうわけだ。

クリリンのことかー、で。

湘北VS山王で。

ポップの成長で。

幻海の死で。

なんだか単純すぎるように感じるかもしれない。

でも仕方ないのだ。

僕たちが最初に触れた他人の人生が、悟空であり、桜木であり、ダイや幽助たちだったから。

その存在は、ずいぶん深いところに住み着いている。

さて、ジャンプ展のVOL.2が絶賛開催中である。

副題「発行部数653万部の衝撃」にもあるように、『週刊少年ジャンプ』最大の発行部数を誇った「黄金期」90年代が今回のテーマだ。

当時の子供の人口が2000万人。

3人に1人がジャンプを読んでいたとも言われる時代だ。

僕自身も、その653万人の1人だった。

今回はジャンプ展の内容についてはレポート映像でお送りするので、ここでは、僕自身のあの頃のジャンプとの思い出でも書いていこうと思う。

1/6530000の、ジャンプ黄金期を。

あの頃、「ジャンプを買うぞ!」と思うまでもなく少年たちはジャンプを買っていた時代だった。

いうなれば空気。

酸素、二酸化炭素、ジャンプ。

それくらいの当然さで多くの少年たちがジャンプを摂取していた。

その求心力になっていたのは、やはり『DRAGON BALL』の大ブームだろう 。

鳥山明先生は”革命"を起こして、マンガの表現を一変させてしまった。

シンプルで、子供たちがすぐに真似したくなるほど身近にありながら、圧倒的な迫力と面白さにあふれていた。

ジャンプを買えば、まず『DRAGON BALL』を読むところから始まる。

そのあとでジャンプ内の漫画を余すところなく読み進めていくわけだが、その道筋でその人の趣味がわかったりする。

スポーツマンは、やはり『SLAM DUNK』を読むし、『幽☆遊☆白書』は女子人気が高かった。

「巻末にギャグマンガを掲載する」という伝統の先駆けになった、なにわ小吉先生の『王様はロバ〜はったり帝国の逆襲〜』(通称・王ロバ)は、初めてのシュールの世界に触れさせてくれた。

『アウターゾーン』や『地獄先生ぬ~べ~』のホラー(ちょいエロもあるよ)枠も欠かせない。

 

僕の記憶に深いのは、『ジョジョの奇妙な冒険』だ。

僕がジャンプを読み始めたころのジョジョは第4部で、忘れもしない第4部最大の敵である吉良吉影と広瀬康一の戦いだった。

靴屋を舞台に、吉良の送り込む自動追尾型スタンド“シアーハートアタック”と戦う康一くん。

“シアーハートアタック”は、温度を感知して攻撃してくるガラガラヘビのような性質を持っている敵で、温度の高いものを囮にしないといけない。

第4部でも屈指の名バトルだが、初めて読んだ僕の感想は、

「なんだこの変な漫画はぁぁぁーーーーーーーー!!!!!!!」

絵も変わっているが、何より中身がおかしい。

他の漫画がシンプルな殴る蹴るのバトルに汗を流している時に、ジョジョはポットの中身が空なことに絶望し、コンロのスイッチを入れて戦っていた

もしかして超変化球の料理漫画なのか!?と本気で勘違いしたのだ。

特に戦いの最中になかなか加熱しなかった電気コンロに康一くんが叫ぶ「こんなんでオイシイ料理できるのか!?」というセリフは、めちゃくちゃ印象に残っている。

「すげぇマンガを読んじゃったよ…」という衝撃、「僕にはまだ早い…」という拒否反応。

そういうわけでジョジョの第一印象は著しく悪かったのだが、これがなぜか無性に気になってくる。

これを「インフルエンザ理論」と呼び、本当に重く発症する趣味はすぐにはハマらず、一定の潜伏期間があるものなのだ。

気づけば真っ先に読むのはジョジョ、という立派なジョジョ好きになっていた。

もう一つ、絶対に忘れられない思い出の漫画が桂正和先生の『SHADOW LADY』である。

桂正和先生といえば、可愛い女の子を描く才能があまりにもあったばかりに、そんなに描きたくなかった美少女マンガのジャンプにおける第一人者になってしまった方だ。

『I’’s』や『電影少女』の方が有名だが、なぜ『SHADOW LADY』かというと、ある夏休み、帰省した父親の実家で買ってもらったジャンプに載っていたこのマンガで、僕は初めて「大人のドキドキ」を感じたのだ。

今まで感じたことのないその感情の衝撃で、その話、そのコマまではっきり記憶している。

今回のジャンプ展にあわせて歴代のジャンプが読める「ジャンプ図書館」が期間限定開催されていたので、問題の『SHADOW LADY』が掲載されている号を捜索してみた。
(※「ジャンプ図書館」は3月26日で終了しました)

そしたら、見つかりました。

1995年8月14日特大号。

そういうわけで、ジャンプを追いかけると自分の性の目覚めの詳細な日にちまでわかってしまうのだ。

うーむ、ジャンプとは人生である。

ジャンプ黄金期の編集長を務めた堀江信彦さんは、ジャンプの読者である少年たちについて、こう話している。

「少年たちとずっといっしょに仕事をしてきてつくづく思うのは、本質は変わらないということ。子供はいつだって”生き方の情報”を欲しがっている。そして、面白いことがいつだって大好き。」

この言葉に、ジャンプの魅力のすべてが詰まっているんじゃないだろうか。

子供たちにとって、ジャンプは情報誌なんだ

少年にとっては絵空事じゃない、リアルな生き方と、とっておきの面白さのカタログ。

なんで自分が、あんなにジャンプを夢中で読んで、次の週が来るのを楽しみにしてたかって、現実に悟空たちと一緒に生きていたからだろう。

そして今も。彼らは年を取らないが、傍にいる。

だから、彼らの物語に触れた時、古い友人の人生を垣間見たようで、感極まってしまうのだ。