仙頭正教です。アジア一の繁華街、新宿歌舞伎町のガイド人をやっています。

 ガイドと言っても、私の場合、立ちんぼスポットからボッタクリ客引き、心霊ビルまで、町の“怪しい”スポットを紹介するのがメインです。

 そんな私には、公衆電話を使っている人間を見かけるとつい勘ぐってしまう癖があります。

 ケータイを持っているのが当たり前のこのご時世に、どうして公衆電話を? ケータイの電池切れ? 未払いで止まってる? ……いや、もしかしたら身元がバレたくないんでケータイを使わないんじゃないだろうか? それこそ電話の相手は“売人”で、これから覚醒剤を買おうとしてたりして?

 そんな想像をしてしまうんです。

 考えすぎだと思われるかもしれません。けれど、クスリ事情に明るい歌舞伎町住人によると、“客”が公衆電話から“売人”に連絡することは多いそうなんです。

 両者から聞いた話を紹介しましょう。

◆公衆電話利用客M氏の言い分

「実際、私は大久保(新宿区)で公衆電話を使っていますよ。自分のケータイを使うのはやっぱり気が引けるんで。電話をかける相手は、ネット掲示板の販売業者です。『裏2ちゃんねる』というサイトを見たことありませんか? 隠語の書き込みがずらっと並んでるんですよ」

 M氏によると、下記のような書き込みがあるといいます。

<アイス・野菜・自転車★手押し/都内デリバリーします! 070××××××××>

『アイス』は覚醒剤、『野菜』は大麻、『自転車』はコカイン、『手押し』は手渡し配達、の意味。連絡先は、ケータイ番号だけってのが多いですが、中には『非通知、公衆電話からの対応も可能』と書いていてる業者もあります。私はそういうところを選ぶんです」

 M氏曰く、「買い方自体は簡単」とのこと。電話をすると、「はい、アイス(覚醒剤)を1gね。1時間後に新宿で渡すカタチでどう? 着いたら電話して」という感じですぐに話がつくのだとか。

「で、付近に到着したときに、こちらの服装を伝え、指定された場所、例えば駅前なりパチンコ屋なり路上なりで待つ。すると、配達の人間・通称『プッシャー』が声をかけてくるというのが一般的な流れですね。プッシャーは、電話でしゃべった相手と違う人間ってこともよくあります。私は7、8人のプッシャーに会いましたが、だいたい全員、見た目はフツーの人。一度だけ、やけに目が充血した若い女のコがやってきたときがありましたけど、あのコはキマってたんでしょうね」

◆“売人”O氏の言い分

 さらに、M氏の紹介で自称・売人のO氏にも話を聞くことができました。

「オレがやってるってわけじゃなく、一般的な話ならしてもいいけど……」と前置きしながら口を開いてくれました。

「プッシャーは、客のところへ次から次へと回らなくりゃいけないんで、移動は車、バイクが多いよね。持ち運びは、男はパンツの中に入れてガムテープ、女はブラの中、これが基本。こうしておくと万が一、警察に身体検査されてもまずバレないから。で、客と会う前に、パチンコ屋のトイレなんかで必要な分量を取り出し、茶封筒なんかに入れるわけだけど、入れ物としては、お菓子の箱もよく使われるね。箱の底の糊止めをきれいに剥がし、中にモノを入れてから糊止めし、未開封に見せるわけね」

 とにかく、プッシャーは受け渡しの時はかなり用心しているのだそう。

「客に渡すときも、バイクから降りずにさっと渡してすぐに立ち去ったり、車を停めて客に『ちょっと乗ってくれる』って言って移動しながら渡したり。気を使う人間になると、タクシーを使ったりもしてるみたいよ。タクシーだと、まず警察から職質されることがないから」

 そんなふうに警戒しながら、1日中配達をしていくのだそうです。

 では、プッシャーはどれくらい稼ぐんですかね?

「プッシャーのギャラは、運んだ金額の1割の歩合。今のシャブの値段はグラム3万円くらいだから、例えばシャブを1g運んだら3000円。だけどシャブ中は多いし、それこそ公衆電話とかからガンガン注文が入る。1日最低2、3万はいくよ。月60万くらいはいくかな。ま、一応言っておくけど、シャブの販売は、初犯でも執行猶予が付かず3年は打たれるよ。そういう商売だから、悪い気は起こさないほうがいいよ」

※ ※ ※

 公衆電話やら、お菓子の箱やら、なんとも庶民的なモノがとんでもないものに使われているとは。いやはや、裏の世界の人はよく考えますよね。

【仙頭正教】
歌舞伎町ガイド人。立ちんぼスポットからボッタクリ客引き、心霊ビルまで、町の“怪しい”に精通。月2回、カブキの裏スポットを案内する『歌舞伎町観察ツアー』を開催中。ツイッター(@sento1025)※月刊『裏モノJAPAN』編集部・所属

実際の公衆電話