ahead archivesより提供されたものです。

ネットサーフィンをしていたら「海外道路調査団派遣」なるちょっと気になる海外ツアーを発見した。募集元は高速道路調査会という公益財団法人。text:岡崎五朗 [aheadアーカイブス vol.116 2012年7月号]

VOL.37 ドライバー視点が欠けている
アヘッド 岡崎五朗のクルマでいきたい

「高速道路と自動車交通に関する調査研究機関として、関係分野における研究者の育成、高速道路網の整備、自動車交通の発達、及び諸外国との技術交流等」が業務であり、当然、行政とは太いパイプでつながっている。

ツアー内容は5泊8日でイタリアとフランスに滞在し、現地の高速道路を視察するというもの。関係者だけではなく一般の参加も可能で、ツアー代金はエコノミークラス使用で77万円とかなり高額だ。驚いたのは、現地での移動がすべて飛行機とバスという点。参加者はバスに乗って高速道路を走り、ローマからパリへの移動は飛行機。つまり、自ら運転する機会は一切ないということだ。

クルマを運転しなくてもヒアリング調査はできる。しかしせっかく海外まで行ったのなら、自分で運転し、現地の高速道路の状況やドライバーのマナー、交通規制の在り方などを肌身で実感するのが現地調査の本筋というものだろう。

ローマからパリまでの距離は1500㎞弱。その気になれば2日で走破できる。たとえそこまでしなくても、1〜2時間程度運転すれば多くのことが得られる。しかしこの視察ツアーには、そういった「ドライバー視点」がすっぽり抜け落ちているのだ。

今回挙げた例は氷山の一角であり、日本の交通行政はすべて、自らが運転することのない政治家や官僚や学者たちが決めている。

高速道路の実態を無視した低すぎる制限速度や、生活道路での30km/hゾーン規制導入の遅れ、分かりにくい標識、硬直的なパーキングメーターの運用、危険度や渋滞ではなく、取り締まりやすさを重視した駐車監視員の行動など、すべての問題は「ドライバー視点の欠如」にあるといっていい。

海外でクルマを運転する機会が多い僕は、ことあるが毎に日本の道路行政のお役所仕事ぶりに失望させられている。大金を投じて専門機関が実施する「調査団」に加わっても、そういった経験を得られないのは、なんとももったいないことだと思うのである。

VW ゴルフ blue-e-motion
アヘッド VW ゴルフ blue-e-motion

ゴルフのEV「ブルー Eモーション」は開発段階のプロトタイプであり、市販は来年を予定している。

来年といえば、ゴルフはすでに7世代目にモデルチェンジしているわけで、今回試乗できたゴルフ6ベースのEVは、あくまで開発用、もしくは「VWもEVに積極的に取り組んでいる」ということをアピールするのが目的のクルマということになる。とはいえ、来年デビューすることが確実なVW製EVの実力を占う上で大いに注目すべきモデルと言えるだろう。

ご覧のように、ステッカーやバッジ以外は普通のゴルフと同じ。大きなバッテリーを搭載している関係でラゲッジは350ℓから275ℓへと少し小さくなったが、それを除けばEVだからといって特別なプラスもなければマイナスもない。

搭載しているモーターは115ps/270Nmで、バッテリー容量は26.5kw/h。車体サイズを含め、日産リーフ(109ps/280Nm、24.0kw)とほぼ同じスペックだ。1充電あたりの航続距離は150㎞とリーフの200㎞に及ばないが、これは日欧の測定モードによる違いであり、車載の電費計から推測すると、どちらも街中中心の使い方では7〜8kw/h程度と、同等だ。

モーターを使った加速フィールは伸びやかで気持ちがいい。音も静かだ。けれどいちばん印象的だったのは根っこにあるのが「ゴルフ」というクルマがもっている緻密感だったり厚み感だったりすること。どこか薄っぺらい印象を拭えないリーフとの違いはそこにある。ベースとなったティーダとゴルフの違いがそのまま乗り味に表れているというわけだ。

たとえエンジンがモーターに置き換わろうと、メーカーの個性が乗り味としてストレートに伝わってくるのは実に興味深い。EVになったからといって、クルマづくりや、それを評価するパラダイムがひっくり返ることはない。そんなことを再認識させるクルマだった。

エンジンルームにモーターを搭載。26.5kWhのリチウムイオン電池によって最大150kmの航続距離を可能にしている。空力特性に優れたボディなどにより135km/hの最高速を実現しつつ、走行中のエネルギー消費を抑えている。フォルクスワーゲンの実験用車両なので市販化は未定。

車両本体価格:未定
車両総重量:1,545kg
最高出力:85kW(115ps)
定格出力:50kW(68ps)
最大トルク:270Nm
駆動方式:前輪駆動(全て実験推測値)

メルセデス・ベンツ SL
アヘッド メルセデス・ベンツ SL

世界で最初の自動車を送りだしてから126年。メルセデス・ベンツが送りだすクルマは時代とともに変化してきたが、変わらないことが2つある。それは「安全」と「快適」を絶対に諦めないクルマづくりだ。

しかもその哲学は、安全と快適を重視するからスポーツカーは造らない、というような底の浅いものではない。クルマがもつ魅力を十分に理解している彼らは、高性能モデル造りに一切躊躇しない。その代わり、全身全霊をかけその高性能モデルに最高度の安全と快適を与えようとするのだ。

メルセデスのフラッグシップスポーツであるSLには、当然ながらそんな思想が色濃く反映されている。安全性については「世界最高水準」と書くだけにとどめ、ここでは快適性にフォーカスを当てたい。

走りはじめた途端、それもタイヤがほんの数コロガリしただけで足回りの圧倒的なしなやかさに惚れぼれさせられた。速度を上げると今度はフラット感が増していき、コーナーにさしかかれば、自分の運転が数レベル向上したかのような安定感できれいな弧を描く。

最廉価グレード以外に標準装備されるABC(アクティブ・ボディ・コントロール)サスペンション装着車なら、安心感と快適性の両立レベルはさらに大幅に向上。まるで手品を見せられているかのような素晴らしい乗り味を提供してくれる。

もちろん、オープン時の風の巻き込みへの対策も万全で、例え真冬の高速道路でも快適なオープンエアクルージングを楽しめる。オープンスポーツという、快適性とはもっとも縁遠いジャンルのクルマに、これほどの卓越した快適性を与えてきたメルセデスの技術はまさに驚異的としか言いようがない。

その分、1190万円〜と目が飛び出るほどの価格になったけれど、実際にステアリングを握り豊穣な乗り味を体験したなら、それも仕方がないなと思うに違いない。

第6世代となる高級スポーツカー。ロングノーズ、ショートデッキのロードスタースタイルに様々な最新技術を盛り込み、優れた走行性能と上質で快適な乗り心地、高い環境適合性と安全性を兼ね備えている。メルセデスの量産モデルとしては初となるフルアルミニウムボディシェルを採用。

車両本体価格:¥11,900,000(SL 350 BlueEFFICIENCY)
全長×全幅×全高(mm):4,612×1,877×1,314
車両重量:1,685kg 乗車定員:2人
エンジン: DOHC V型6気筒
総排気量:3,498cc
最高出力:225kW(306ps)/6,500rpm
最大トルク:370Nm(37.7kgm)/3,500-5,250rpm
駆動方式:後輪駆動

トヨタ カローラ
アヘッド カローラ

1966年の登場以来、日本のモータリゼーションを牽引してきたカローラ。と同時に、カローラは世界140ヵ国以上で販売されるグローバルカーでもあり、累計販売台数は4000万台に達する。

しかし、国内でのカローラは、その役割を終えつつあるようにも見える。不動のベストセラーカーだったかつての勢いはすっかり影を潜めてしまった。それでもまだ世界があるさ、と思うかもしれない。

しかし国内で販売されるカローラは、先代から日本専用車種になっている。欧米やアジアで販売されているカローラは全幅が1760mmあり、日本のカローラとは成り立ちが全く異なる。

そんななか登場した11代目のカローラは、基本的にはキープコンセプトながら、カローラ史上初めて全長を短くしてきた。アクシオで50、フィールダーで60㎜短くなり、最少回転半径も5.1mから4.9mへと小さくなった。

これは「大きくて扱いづらい」というオーナーの声に対応するためだそうだ。カローラオーナーの平均年齢は60歳を悠に超えている。彼らが求めているのは豪華さや立派さではなく、扱いやすさなのである。

ならばそこにとことんフォーカスしたクルマ造りをすることにこそカローラの存在意義はあるのではないか。開発陣はそう考えた。まず、ドアミラーのドア付け化やフロントピラーの角度や形状の工夫によって死角を徹底的に排除。乗降性にもこだわった。もちろん、操作系の分かりやすさにも抜かりはない。まさに「クルマ版らくらくホン」である。

主力となる1.5ℓは少し遅れて発売されるため今回は1.3ℓと1.8ℓに試乗した。1.8ℓには及第点が付くものの、1.3ℓモデルの静粛性と直進安定性は明らかに物足りない。1.3ℓではできれば高速道路には乗りたくないと感じた。

目の付け所はいい。しかし走りの仕上げがもう一歩。それが現段階における僕のカローラに対する評価だ。

アヘッド カローラ

カローラの原点に戻り「大人4人が、安心・安全、快適に長距離を移動できるミニマムサイズのクルマ」がコンセプト。日本にフィットするコンパクトなボディに快適な室内空間と安心して運転できる広々とした視界を確保。エンジンは大幅に見直し、心地良い走りと高い環境性能を実現した。

車両本体価格:¥1,440,000(1.5X CVT 2WD)
全長×全幅×全高(mm):4,3605×1,695×1,460
車両重量:1,365kg 乗車定員:5人
エンジン: 直列4気筒DOHC
総排気量:1,496cc
最高出力:80kW(109ps)/6,000rpm
最大トルク:136Nm(13.9kgm)/4,800rpm
JC08モード燃費:20.0km/ℓ
駆動方式:前輪駆動

VW パサート・オールトラック
アヘッド VW

パサート・オールトラックはステーションワゴンのボディをベースに車高を上げ、外観にSUV風のデコレーションを施したモデル。このジャンルを表す特別な呼び名はないが、ここでは「SUV風ワゴン」としておこう。

SUV風ワゴンをメジャーにしたのは'95年に登場したレガシィ・アウトバック。その後、アウディやボルボ、日産などが追従したが、専用ボディをもつSUVが次々に登場してきたことで、SUV風ワゴンは自然消滅するかと思われた。

ところがどっこい、このジャンルは消滅するどころか再び脚光を浴び始めている。アウディはA6に加えA4にもSUV風ワゴンを追加。スバルもこの秋にインプレッサベースのSUV風ワゴンを投入する予定。

そしてこのオールトラックである。乗用車の使い勝手とSUVの雰囲気を兼ね備えたちょうどいいバランス感覚や、専用ボディをもつSUVより軽く作れる=燃費面で有利であることが、SUV風ワゴン人気再燃の理由だろう。

パサート・オールトラックは、パサート・ヴァリアントの車高&最低地上高を30㎜引き上げると同時に、樹脂製の無塗装フェンダーやアンダーガード風前後バンパーといった専用パーツでドレスアップしている。標準のパサートは広くて使いやすい反面、ちょっと遊び心に欠けるが、オールトラックには楽しげな週末をイメージさせる演出がある。

標準のパサートが1.4ℓTSIエンジンを積んでいるのに対し、ゴルフGTIと同じ強力な2ℓTSIを搭載しているのも注目ポイントだ。動力性能は従来モデルにあった3.2ℓV6に迫るレベル。その他、上質なレザーシートや衝突防止システムを標準装備するなど、プレミアムメーカーからの顧客誘因を意識していることもうかがえる。

荒れた路面で足回りがバタつくことを除けばハードウェアに死角はない。500万円を切る価格でこの内容。注目する人はきっと多いはずだ。

パサート ヴァリアントをベースに、フルタイム4WDシステムを搭載。30㎜高められた車高やアンダーガードが付いた専用前後バンパー、専用ホイールハウスエクステンションなどによりクロスオーバー的なスタイリングとなっている。室内は高級素材を多用して上品に仕上げられている。

車両本体価格:¥4,940,000
全長×全幅×全高(mm):4,785×1,820×1,560
車両重量:1,670kg 乗車定員:5人
エンジン: 直列4気筒DOHC インタークーラー付 ターボ
総排気量:1,984cc
最高出力:155kW(211ps)/5,300-6,200rpm
最大トルク:280Nm(28.6kgm)/1,700-5,200rpm
JC08モード燃費:11.6km/ℓ
駆動方式:4輪駆動

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text:岡崎五朗/Goro Okazaki
1966年生まれ。モータージャーナリスト。青山学院大学理工学部に在学中から執筆活動を開始し、数多くの雑誌やウェブサイトなどで活躍。テレビ神奈川の自動車情報番組『クルマでいこう!』に出演中。

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