【ワシントン時事】北朝鮮が「核放棄の強要」や米韓合同軍事演習を非難し、米朝首脳会談中止を示唆したことに、トランプ米政権は完全に虚を突かれた。米国の反応を見極めるための揺さぶり戦術とみられ、実際に会談が中止される可能性は低い。ただ、融和ムード一色に染まりつつあった米政権に北朝鮮との交渉が一筋縄ではいかないことを改めて思い知らせた。

 「何ら通知を受けていない」。国務省のナウアート報道官は15日の記者会見で、北朝鮮が米国との首脳会談取りやめの可能性に言及したことについて問われ、戸惑いを隠しきれなかった。

 国防総省も声明を発表したが、「(演習は)防衛目的だ」と従来の主張を繰り返すだけ。CNNによると、ホワイトハウスは同日午後、国家安全保障会議(NSC)と国防総省幹部を急きょ招集し、対応を検討した。

 トランプ大統領は約1カ月前、安倍晋三首相と会談した際には、「(米朝会談が)行われないこともあり得る」と発言していた。だが、北朝鮮が核実験場の閉鎖や米国人3人の解放など、次々と融和カードを切る中、「(米朝首脳は)世界の平和にとって特別な時を刻もうとしている」「大きな成功を収めると思う」と楽観し、日に日に前のめりになりつつあった。

 今回の北朝鮮側の発表がトランプ氏に冷や水を浴びせたのは間違いない。北朝鮮の交渉術を再認識した米政権は首脳会談に向けた戦術の練り直しも迫られそうだ。

 米シンクタンク「民主主義防衛財団」のアンソニー・ルッジェーロ上級研究員はCNNに対し「北朝鮮の言動は、外交解決の期待を高めた上で交渉中止を示唆し、さらなる譲歩を引き出す交渉戦術でしかない」と分析。「北朝鮮が会談を中止すれば、最大限の圧力がさらに強化されると警告すべきだ」と訴えた。 

〔写真説明〕トランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(AFP=時事)

トランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(AFP=時事)