女優として大事なものとは何だろうか。一つに個性が挙げられると思う。演技力はやっていくうちに後からついてくるものだ。しかし、キャラクターはその人自身を形作っているものであり、そうそう変えることはできない。ましてや顔は生まれついてのものだ。多少、整形することができても、骨格まではなかなか変えられない。近年、素朴な顔立ちの昭和顔女優がドラマや映画を席巻している。ナチュラルなメイクで団子鼻。太い眉毛で丸みのある顔立ち…。可愛いけれども決して“超絶美人”とはいえない彼女らがなぜ、世間に受け入れられているのだろうか。

 代表的な昭和顔女優といえば黒木華だと思う。映画『舟を編む』『母と暮らせば』などで着々とキャリアアップを図っており、2016年には『重版出来!』(TBS)で連続ドラマ初主演。2018年も出演映画『散り椿』『日日是好日』『ビブリア古書堂の事件手帖』などの公開を控えている。NHK大河ドラマ『真田丸』では真田幸村の最初の妻・梅を演じ、現在放送されている『西郷どん』では西郷隆盛の妻・糸役として出演する予定だ。古めかしい顔立ちをしていると、時代劇でもキャスティングされやすいため、役者としての汎用性が高い。

 蒼井優も黒木と顔立ちが似ている。『おとうと』『東京家族』『家族はつらいよ』など山田洋次監督作品に多く出演していることから、昭和顔女優は大御所監督に好まれやすいことがわかる。NHK大河ドラマでは『龍馬伝』に出演し、隠れキリシタンの芸妓という癖の強い役柄を演じた。時代劇にハマりやすい顔立ちである上、その卓越した演技力から幅広い役柄が求められている。

 上記の2人は昭和の映画スター、吉永小百合と田中裕子にどことなく似ている。2人ともドラマより映画畑での活動が多いのは、映画スタッフに好かれやすい顔立ちだからではないか。

 80年代風昭和顔の有村架純はぶりっ子系の役柄がよく似合う。NHK連続ドラマ小説『あまちゃん』ではアイドルを目指す若き日の天野春子(小泉今日子)役を演じた。劇中で披露していた聖子ちゃんカットがとても似合っていたことで話題になり、大ブレイクを果たす。4年後には1960年代の東京の下町を舞台にした『ひよっこ』でNHK連続ドラマ小説の主役に抜擢された。

 NHK連続テレビ小説は明治から昭和を舞台にした作品が多い。高畑充希も生活総合雑誌『暮しの手帖』の雑誌出版の軌跡をモチーフにしたNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』で連続ドラマ初主演を務めてブレイクした。それまで舞台活動を中心にしていた高畑だったが、これを機に映画やドラマでの出演が増加した。その昔NHK連続テレビ小説『マー姉ちゃん』でヒロインを務めた熊谷真実にどことなく似ているような気がする。

 NHK連続ドラマ小説『あさが来た』でヒロインを務めた波瑠も昭和顔だ。スペシャルドラマ 『いねむり先生』(テレビ朝日)では夏目雅子をモデルとしているマサコ役を演じている。透明感ある顔立ちは夏目と似ているような気もしないでもない。


 
 最近では黒島結菜が昭和顔有望株だ。NHK連続テレビ小説『マッサン』やNHK大河ドラマ『花燃ゆ』にも出演。スペシャルドラマ『戦後70年 一番電車が走った』(NHK)ではテレビドラマ初主演。連続ドラマ『アシガール』(NHK)では、女子高生がタイムマシーンで戦国時代に迷い込み、足軽として洗浄を駆け抜ける主人公・速川唯役を務めた。童顔で眉毛が太く、意志の強さを感じさせる。今後が楽しみな女優である。

 美男美女がもてはやされるのは若いうちまでだ。ティーン向けのガールズムービーであれば、美男美女が重用されることもあるだろうが、お仕事ドラマやサスペンスドラマは美男美女である必要性はない。むしろ、少子化が叫ばれている日本ではティーンズ向け作品のマーケットは縮小しつつある。今の日本で金を持っていて、暇を持て余しているのは高齢者層だ。高齢者層に受ける顔立ち、すなわち昭和顔女優は今後も活躍の場を広げていくに違いない。
(文=加藤宏和)

※『有村架純 2017年週めくりスクールカレンダー 卓上タイプ』より

『有村架純 2017年週めくりスクールカレンダー 卓上タイプ』より