子どもの頃は食べられたのに、大人になると食べられないものの代表メニュー「お子様ランチ」。大好きな洋食が少しずつ載ったワンプレートを前にした時の、あのワクワク感が味わえないのはとても残念です。しかし、そんな大人たちに朗報です。5月31日(木)までの期間限定で、横浜のホテルニューグランド『ザ・カフェ』で、正々堂々とお子様ランチが食べられるんです。その名も「大人のお子様ランチ」(3,996円)。

 ワンプレートにシーフードドリア、ナポリタン、ハンバーグステーキ、フライドポテトが載り、さらに本日のスープ、プリン、コーヒーが付いた豪華な内容です。しかも、一つひとつが、日本の洋食の原点とも言える深~い味なんです。

 ホテルニューグランドといえば、スパゲッティ・ナポリタンを考案したことでも知られる老舗ホテルですが、実はそれだけではありません。「シーフードドリア」「プリン・ア・ラ・モード」もこちらがオリジナル。さらにハンバーグに「デミグラソース」をかけるスタイルもこちらが生み出したいわれているんです。

 ホテル内の『ザ・カフェ』では、普段からそうした伝説メニューがア・ラ・カルトで味わえます。(あ、そういえば、「ア・ラ・カルト」というスタイルを初めて取り入れたのもホテルニューグランドの初代総料理長だそうですよ)。

 そのア・ラ・カルトを期間限定で1つのプレートランチにして味わえるのが「大人のお子様ランチ」です。「ホテルニューグランド 90周年特別企画 復活!大人のお子様ランチ」として期間限定で味わえます。滅多にない機会なので、みなさん、急いだ方がいいですよ!

 筆者は一足先に食べてきましたので、ホテルの歴史も含めて、そのこだわりの味わいをご紹介します!

日本の洋食の原点を凝縮した「大人のお子様ランチ」とは?

 元町・中華街を降りて、徒歩1分ほどの場所にあるホテルニューグランド。山下公園を望む絶好の場所に、昭和2年(1927年)に開業し、今年で90周年です。本館の扉をくぐると、青い絨毯が敷かれた長い階段が目に飛び込んできます。見上げると、大きな古時計。タイムスリップした気分で左手にある1階の『ザ・カフェ』へ。

正面玄関の青い階段がとても素敵です
正面玄関の青い階段がとても素敵です

 山下公園の緑が見える窓際を陣取り、着席して15分ほど。シックな空間をバッと華やかにする「大人のお子様ランチ」が登場しました!

歴史を丸ごといただきます。

 まずはシーフードドリアから。1927年に就任した初代料理長サリー・ワイル氏は「コック長はメニュー外のいかなる料理にもご用命に応じます」とメニューに記していたそうです。そして、体調の良くないお客様から「何か喉の通りが良い料理を」と頼まれ、考案したのがこのメニュー。1935年のメニューには「芝海老のドリア」として載っています。

 スプーンでひとすくい口に運ぶと、エビ、お米、マッシュルームを包むようにトロトロのグラタンソースとチーズが口の中でとろけます。エビの香り・味ともに濃厚で、お米が一粒一粒の食感が絶妙です。また、芝海老とバナメイエビの2種類、貝柱、マッシュルームといった具材が、ひとすくいで全部スプーンにのるほど具沢山!

シーフードドリアの特徴は、ベシャメルソースとエビのクリームソースの二層構造になっていること。お米は、細かく切った玉ねぎ、にんじんと一緒に生米から炒めて炊き上げるなど、丁寧な仕込みが光ります
シーフードドリアの特徴は、ベシャメルソースとエビのクリームソースの二層構造になっていること。お米は、細かく切った玉ねぎ、にんじんと一緒に生米から炒めて炊き上げるなど、丁寧な仕込みが光ります

 続いて、スパゲティ・ナポリタンです。こちらはサリー・ワイル氏の気質を受け継いだ2代目総料理長・入江茂忠氏が考案したメニュー。

 終戦後、ホテルがGHQ将校の宿舎として接収されていた頃、彼らが軍用保存食のスパゲティにケチャップを和えているのを見て、それでは味気ないと、ハムなどの具材やフレッシュなトマトを使用して作ったソースで作り上げたのがナポリタンです。

 その調理法は今でも変わらず、茹でたパスタを一晩寝かせてからオリジナルのトマトソースを絡めます。もっちりとした食感とまろやかなトマトの酸味と優しい甘みの贅沢なナポリタンです。

今でも、ソースはフレッシュなトマトから作るのが元祖「ナポリタン」の味
今でも、ソースはフレッシュなトマトから作るのが元祖「ナポリタン」の味

 次はハンバーグステーキです。ハンバーグは、もともとドイツ・ハンブルクの食べ物。そして、デミグラソースは、1900年初頭にフランス料理で使われ始めたソースといわれます。先述の通り、この2つを合体し、日本にデミグラソースを広めたのもこちらのホテルだと言われているんですよ。

 ふわふわのハンバーグをカットし、ソースに絡めて味わえば、肉汁の旨みと濃厚かつ繊細な味のソースが口いっぱいに広がります。

肉汁がジュワッと広がるハンバーグ。こちらのデミグラソースが懐かしくて食べたいとわざわざ訪れる年配の方も多いそう
肉汁がジュワッと広がるハンバーグ。こちらのデミグラソースが懐かしくて食べたいとわざわざ訪れる年配の方も多いそう

 最後にご紹介するのは、カスタードプリン。こちらも1935年当時のパティシエが考案した「プリンア・ラ・モード」に入った自家製プリンです。昔ながらの、卵の味がしっかり味わえる固めの食感が嬉しい! 甘すぎずあっさりしているのも特徴です。

「プリンア・ラ・モード」は、当時、ホテルに在住していたアメリカ人将校夫人を喜ばせるために考案されたそうです。その時は、たくさんの果物と、彼女たちが日常的に食べていたプルーンの水煮、バニラアイス、プリンを盛り付けたそう。ちなみに、この中にある“うさぎの形をしたリンゴ”は、本当はアローカット(弓矢型に切ること)という手法で、こちらの「プリンア・ラ・モード」から日本中に広まったといわれています。“元祖”が本当に多いんです。

横長の器に入っているのは、盛りだくさんのデザートを盛るために、当時、ニシンの酢漬けを載せていたお皿に使って盛り付けたのが始まり
横長の器に入っているのは、盛りだくさんのデザートを盛るために、当時、ニシンの酢漬けを載せていたお皿に使って盛り付けたのが始まり

 この他にも本日のスープやコーヒーがついて、お腹もいっぱいに。そして、帰りにぜひ見ていただきたいのが本館1階で展示されている「開業90周年記念写真展」。こちらにもホテルの歴史や料理の歴史が詳しく紹介されています。最後は、本館2階のロ重厚なロビーのソファでくつろいで、洋食文化に貢献したクラシックホテルの歴史に思いを馳せれば心も満たされます。この機会にぜひ。

「開業90周年記念写真展」も開催中
「開業90周年記念写真展」も開催中

(撮影・文◎土原亜子)

●SHOP INFO

ホテルニューグランド本館1階 コーヒーハウス「ザ・カフェ」

店名:ホテルニューグランド本館1階 コーヒーハウス「ザ・カフェ」

住:神奈川県横浜市中区山下町10番地
TEL:045-681-1841(代)
営:11:00~21:30(21:00L.O)
※「大人のお子様ランチ」提供時間は11:00〜20:30(L.O)
休:なし

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