うぉぉ! これがあの「しんかい6500」かっ!

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 神奈川県横須賀市にある海洋研究開発機構(JAMSTEC)横須賀本部で5月12日、毎年恒例の施設公開イベントが行われました。

 海洋研究開発機構は、大深度有人調査船「しんかい6500」やその母船である「よこすか」などの海洋調査船を所有して海洋や海底の調査研究を手掛ける文部科学省所轄の独立行政法人です。

 人気のしんかい6500、そしてよこすかの船内を間近で見られるとあって、航海当日は無料シャトルバスが出る最寄りの京浜急行追浜駅のバス乗り場で30分以上の待ち時間になるなど、実に多くの来場者でにぎわいました。貴重な海洋調査船の様子、じっくりと眺めていきましょう。

●人気ダントツ! 「しんかい6500」

 しんかい6500はその名前の通り、水深6500メートルの深海まで潜水できる有人潜水調査船です。就役は1989年で、2019年には船歴30年になるベテラン船。全長9.7メートル、幅2.8メートルとキャビン付きヨットと同じくらいのサイズながら、船体の高さは4.1メートル、空中重量は26.7トンもあります。乗員は3人、通常潜航時間は8時間(緊急時の生命維持時間は最大で129時間)、最大150キロの装備や採集したサンプルを収容できます。

 就役から間もなく30年が経過しますが、搭載する観測機器やカメラ、情報処理機器を随時更新しており、年々進化しています。2018年現在はハイビジョンテレビカメラを2台に、最新のデジタルカメラやPCなどを活用しています。

 しんかい6500はこれまで1500回以上の大深度潜航を実施し、数多くの貴重な成果を挙げています。海洋研究開発機構の所属船の中では特に知られている調査船の1つです。それだけに紹介される機会も多く、その姿や調査実績、詳細な仕様などを知る人は多いと思います。

 しかしそれでも、直近で実際に船体を見て、解説員の説明を聞くとまた新しい発見があります。今回はしんかい6500を実際に運航しているチームのメンバーが解説員として参加し、実にファン心理を満たす貴重な話が聞けました。

 しんかい6500は、6500メートルの深海まで行ける潜水艇。「水圧は10メートルもぐるごとに1気圧ずつ増える」ことを聞いたことがあると思います。水深6500メートルの世界は、1平方センチに約650キロもの“スゲー力”が掛かる想像しがたい世界です。

 そんな膨大な水圧に耐えるために、当初は船全体を耐圧構造にしていると思っていました。しかしちょっと違いました。実際に耐圧構造としているのは潜航員や研究者がいる船室と主要部分を備えている部分のみです。その他の部分は打ち出しチタンの骨組みに機器を搭載し、圧縮空気を蓄えるタンクや油圧タンク、油圧管などは母船における整備のしやすさなどを考慮して“むき出し”になっているのです。

 おっ。船体の両舷前方よりの船名の上に船検番号が貼ってあるじゃないですか。あれ? しんかい6500ってもしかして小型船舶の扱いなんですか?

 「はい。しんかい6500の操船には小型船舶1級の免許が必要です」

 やったー。私でも操船できるじゃないですか(ライセンス的には)!

●古き良き時代の伝統と最新技術のハイブリッド船「よこすか」

 水深6500メートルという大深度に潜航できるしんかい6500ですが、実は、しんかい6500単体では潜水できません。しんかい6500は、大深度潜水調査を実施するシステムにおける「パーツの一部」にすぎないのです。そのシステムを構成する重要なもう1つのパーツが支援母船の「よこすか」です。しんかい6500とタッグを組んで大深度潜水調査システムを構成します。

 よこすかは全長105.2メートル、幅16メートル。こちらは、太平洋戦争中に建造された小型駆逐艦「松型」にほぼ相当するサイズです(ただし松型は幅9.8メートルと細身)。総トン数は4439トン、航海速力は約16ノット(時速29.1キロ)で、出力2206kWのディーゼルエンジンを2基搭載しています。

 定員は船舶運行担当部署が45人に、研究者15人。舷門で上船者対応をしていた二等機関士さんに話を聞くと「いったん出港すると、長いときは3週間帰ってこられません」とのこと。いいなあ~(心の底から)。就役は1990年とこちらもなかなかのベテランです。

 よこすかの役割は、「しんかい6500を深い海へ送り、無事に戻らせて、採取してきたサンプルを有効に活用する」ためにあります。ですから、普通の船にはない「変わったところ」が随所にあるのです。

 まず見ただけですぐに分かるのは、船尾に搭載した「Aフレームクレーン」です。その名の通りぶっとい鉄柱を「A」のように組み合わせた大きなクレーンで、空中重量26.7トンもあるしんかい6500を持ち上げて海面へ下ろし、そして大深度潜航から浮上帰還した船体を安全に引き上げるのに使います。

 ……そう書くだけだとなんだか簡単そうですが、うねりのある大海原での作業はとても危険です。そこに繊細なプロフェッショナルの技術を要します。調査スケジュールによっては荒れた海でも潜らなければならない。そういうときには、しんかい6500の潜航チームトップの「司令」と、よこすかのトップである「船長」とで「話し合って」どうするかを決めると機関長さんが教えてくれました。

 これ以外にも見どころ満載です。例えば「前と後ろの2カ所にある船橋」。通常の航海中は前部船橋で操船します。前部船橋のすぐ後ろにはしんかい6500の潜航を管制する「総合司令室」を設けていますが、しんかい6500を海に降ろすときや海から引き上げるときには船体後部、Aフレームクレーンの前にあるしんかい6500格納庫の上の「後部船橋」で揚げ下ろし作業を見ながら微妙な操船ができるようになっています。

 ちなみによこすかの煙突が船の中央から若干右舷側に偏っているのも、煙路(ディーゼル機関なので、正しくは排気管)をしんかい6500の巨大格納庫から避けるためです。

 一般公開イベントでは、この他にも自律型深海巡航探査機「うらしま」や、無人探査機「かいこうMk-IV」「ハイパードルフィン」も展示され、実物を間近に見ながら運用スタッフや研究スタッフの“ディープな解説”を聞くことができました。来場者には小学生もたくさんいましたが、彼らが「けっこう高度な質問」を説明スタッフにぶつけていたのが大変頼もしかったです。

(長浜和也)

海洋研究開発機構が「しんかい6500」などを一般公開