庶民のごちそうの代表のひとつ、とんかつ。人によって、ロース派やヒレ派に好みが分かれるとんかつですが、最近、巣鴨の地蔵通り商店街にできたとんかつ専門店『とんかつ一頭揚げ 亀かわ 巣鴨本店』(以下『亀かわ』)では、見慣れたロースやヒレに並び、リブロースやトントロ、モモなどのとんかつを提供しているというではありませんか。

 中でも「一頭揚げ 亀かわ定食」(2,200円・税込)は、客の半数以上が注文する大人気メニューだとか。しかし“一頭揚げ”って一体どういうことでしょう。まさか豚一頭を丸ごととんかつに……? 気になったので、早速食べに行ってみました!

大人気の「一頭揚げ 亀かわ定食」は絶品だった!

JR山手線巣鴨駅から地蔵通り商店街に向かって、徒歩10分ほど。巣鴨郵便局の向かい側に2017年12月オープン
JR山手線巣鴨駅から地蔵通り商店街に向かって、徒歩10分ほど。巣鴨郵便局の向かい側に2017年12月オープン

 ランチ時を外した14時頃に伺いましたが、サラリーマンもいれば、子連れの姿もちらほら。巣鴨マダムたちも談笑しながら、とんかつに舌鼓を打っているのが印象的。商店街の賑わしさとは対照的に、落ち着いた広々とした店内です。

 ちらと他のテーブルを見渡すと、噂通り、ほとんどの人が看板メニューの「一頭揚げ亀かわ定食」を食べています。筆者も席に着くなり注文すると、「揚げ時間に少し時間がかかります」と伝えられました。はやる気持ちを抑えつつ、とんかつの揚がる音と匂いを堪能しながらその時を待ちます。

 そして待つことおよそ15分、待望の「一頭揚げ亀かわ定食」がやってきました!

 大ぶりのお皿にロース(40g)、リブロース(40g)に、メンチカツ、本日の厳選部位のヒレとトントロの5種類が2切れずつ盛られています。なるほど、この部位別で食べ比べ可能な組み合わせこそが、“一頭揚げ”なるネーミングの元だったわけですね。

 主役のとんかつを囲むように、甘みがあり粒のそろった鹿児島県産の「伊佐米」、同県産の麦味噌と赤味噌を合わせたみそ汁、キャベツの千切り、漬物が並びます。その華やかな顔ぶれに、思わず心が踊ります。

 まずはイチオシだというリブロースを、「坊津の華」という鹿児島県産ブランド塩でいただきます。

 透き通った肉汁がみずみずしく、身はほんのりロゼ色に仕上がっています。リブロースは、ロースよりも脂を蓄えた部位で、肉の甘みと脂のジューシーさが口の中に一挙に広がります。ですが、後味はとてもサラッとしていて、しつこさはまったくありません。衣は厚すぎず、薄すぎず、サックリと豚肉を包み、その身はしっとりとシルキーな舌ざわり。これ、何切れでも無限に食べられるやつですよ!

 お次は珍しいトントロのとんかつ。ゼラチン質多めの部位ですが、脂の旨みがダイレクトに伝わり、もう絶品の一言。豚肉自体のポテンシャルもさることながら、揚げの技術も相当なレベルであることがわかります。

 おまけ程度に思っていたメンチカツも、ふわっととろけるような口どけで、主役級の存在感。トントロと同様、想像をはるかに超える味わいにびっくりです。

 また、サイドメニューも非常に秀逸でした。特にみそ汁は、香りがとても良く、とんかつの個性に負けないおいしさ。メイン、米、みそ汁、箸休めの漬物と味にメリハリがあり、バランスが良いため定食としての満足感もあります。これは、9割のお客さんが注文するのも納得です。

『亀かわ』のこだわりを料理長に聞く

 さて、すっかり堪能しきったところで、『亀かわ』のとんかつのおいしさに迫るべく、菊井料理長にお話を伺いました。

「使用している豚肉は、『甘熟豚 南国スイート』という鹿児島県産の白毛の三元豚で、都内で食べられる店はごくわずかです」(菊井料理長・以下同)

 飼育の仕方も特徴的で、パイン粕を混ぜた飼料を与え、通常6カ月の肥育期間を8カ月に延ばすことで、肉の熟成具合がより進むのだとか。あの肉と脂から感じられる甘みは、飼料や育て方の影響も大きいのですね。

 そして肉と同じくらい重要なパン粉。「『中屋パン粉工場』(東京・品川)の一番粗く、耳を除いたソフトタイプを使用しています。試行錯誤の末にたどり着いたもので、肉をしっかり包み込めて、スチーム状態を長く保ってくれます」と、こちらもこだわり抜いたもの。

一見、グッと押さえつけているように見えますが、とても繊細な力加減
一見、グッと押さえつけているように見えますが、とても繊細な力加減
寿司を握るような手つきで衣がふわっと立ち上がるように仕上げます
寿司を握るような手つきで衣がふわっと立ち上がるように仕上げます

「甘みの深い「南国スイート」の持ち味を活かすため、米油100%で揚げていきます。温度は約150度の低温に設定し、肉が縮まらないようにじっくり火を通すことで、衣はサクッと、中はしっとり柔らかく仕上げます。入れる順番は、メンチカツ、リブロース、ロースト、ヒレ、トントロを秒単位の差で油に入れ、揚げ上がりを同じタイミングになるように合わせています」(菊井料理長)

 約7~8分揚げ、油を切りながら蒸らします。この蒸らし時間がとんかつの味を決めると言っても過言ではないくらい重要な工程なのだとか。

 断面の上品な薄桃色と、表面をうっすら覆う肉汁は、低温調理で丁寧に仕上げた証。この肉汁は時間とともに、また肉の中へ戻ってしまうそうなので、“最もおいしい瞬間”を逃さぬようテーブルに運ばれて来たらすぐ口の中へ、をおすすめします!

(取材・文◎亀井亜衣子)

●SHOP INFO

とんかつ一頭揚げ 亀かわ 巣鴨本店 店内

店名:とんかつ一頭揚げ 亀かわ 巣鴨本店

住:東京都豊島区巣鴨4-19-8
TEL:03-6903-7029
営:平日 11:00~15:00(14:30L.O)、17:00~21:00(20:30L.O)
  土日祝 11:00~21:00(20:30L.O)
休:なし(年末年始除く)
https://tonkatsu-kamekawa.com/

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