映画『スリー・ビルボード』の脚本・監督としても注される、マーティン・マクドナーの最新舞台『ハングマン』がついに日本上陸。『ウィー・トーマス』(2003、2006年)など過去4度マクドナー作品を手がけてきた長塚圭史が演出を、小川梨子翻訳を手がける。5月12日・13日の埼玉演を経て、5月16日東京世田谷ブリックシアターにて東京演が開幕した。

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物語1963年イングランドにある刑務所から始まる。殺人犯のヘネシーのもとへとやって来た、“ハングマン=絞首刑執行人”であるハリー。しかし冤罪するヘネシーに、「せめてピアポイントを呼べ!」とライバル視しているハングマンの名前を挙げられたハリーは、逆上し強引に刑を執行してしまう。そして死刑制度が止となった2年後。ハリーが営むパブに、ムーニーというどこか怪しげな男がやって来て…。

マクドナーらしい、いた笑いと驚くほどの残酷さが同居した本作。物語な舞台となるハリーのパブは、そんな空気に満ち満ちている。ハリーハングマン時代のプライドを大いに引きずり、常連客は常にに溺れ、その中には警部の姿まで。そんな彼らにとっての怠惰日常は、ムーニーという男の出現により崩れ去る。しかもそれが暴力的な恐怖ではなく、ただじんわりと、しかしはっきりと不気味であるということが、とにかく恐ろしい。

この舞台のカギを握るムーニー役だが、今回演じた大東駿介は、これまでのベストアクトと言える出来栄え。一見するとただの好青年だが、ちょっとした言葉のトーン、線、流暢な話しぶりなどに、裏の顔が見え隠れする。また田中演じる傲慢不器用ハリー、初舞台の富田望生演じる内気な“周囲いわく暗い”ハリーシャーリーも強い印を残す。ほかにもキャストには演劇界の個性がこれでもかとズラリ。一分の隙もない劇間を生み出している。

開幕直前にはマスコミ向けの囲み取材が行われ、田中秋山子、大東、富田、羽場裕一、長塚が登場。長塚は作品について、「マクドナーの戯曲の中でも一番しい、々しい作品」と表現。見どころを聞かれた田中は、「あるんですよ、すごいのが…」と言葉を濁す。「予測不な、すさまじい展開をしていくので、見どころを言っちゃうともったいない」と続ける長塚の顔には、はっきりとした自信が伺えた。

長塚の言葉通り、まさに“すさまじい展開”を見せていく本作。観る者のモラルが試される2時間45分だ。

東京演は5月27日(日)まで。その後、愛知京都福岡を周る。

取材・文:野上美子

舞台『ハングマン』より