第71回カンヌ国際映画祭で、今年のラインナップの目玉作品として注目を浴びていたラース・フォン・トリアーの新作「The House That Jack Built」が、アウト・オブ・コンペティション部門で披露された。

2011年、「メランコリア」がカンヌに出品された際の会見で、ヒトラーに関するジョークを語ったことがきっかけで「出入り禁止」になっていたトリアーだが、ようやくカムバックとなった。マット・ディロンやブルーノ・ガンツら出演者に囲まれ久々にレッドカーペットに姿を見せたトリアーは、肉体的にいささか衰弱している様子ではあったものの、カメラに向かって手を振るなど、アピールを惜しまなかった。

1970年代のアメリカの架空の街を舞台にディロンが連続殺人鬼を演じる新作は、ホラー映画でありながらジャンルを凌駕した、もはや別次元のレベルに達したといえる問題作。この監督らしい過激さ、ユーモア、芸術性が混ざり合い、題名の真の意味がわかる頃には、驚きと敬服で開いた口がふさがらない。評価はまたしても激しく賛否両論に分かれたが、公式上映ではブラボーの声と熱狂的な拍手が鳴り響き、鬼才ぶりを証明した。

今年のカンヌで、トリアーと並び健康的な問題を含めて参加が危ぶまれていたのがジャン=リュック・ゴダールだ。近年は作品が選ばれてもカンヌに来ないことが多かったゴダールだが、今回はFaceTimeを使って会見に参加し報道陣を驚かせた。これまでの攻撃的で厭世的な態度とは打って変わり、ジョークも交え、紳士的に質問に答える姿勢が印象的だった。

コンペティション部門で上映された新作「Image Book」は、自身で撮影をおこなうのが困難なゴダールが既存の映像を使用したコラージュ作品であり、彼自身のナレーションのもとに、欧米の干渉を受けながらアラブ諸国が歩んだ「ロスト・パラダイス」の歴史に焦点を当てている。移民問題などで揺れる現代社会に対する、ゴダールなりの問題提起であり、会見でも「議論する機会をもうけたかった」と繰り返し強調していた。(佐藤久理子)

FaceTimeを使って会見に参加したゴダール