今から10年ほど前、タイヤメーカーから「インナータイヤアブソーバー(振動吸収装置)」という技術が登場しました。これは、路面の継ぎ目を乗り越える際に鳴る、「ドン」という空洞共鳴音を低減することを目的に開発されたものです。どんな技術なのか、今後の普及の可能性についても考えてみました。文・吉川賢一

タイヤが発生する3つのノイズ
走行 高速道路

タイヤノイズには、大きく3つに分けることができます。

①路面の凹凸をタイヤが拾い、振動となって車体を震わせることで発生する「ロードノイズ」
②タイヤのトレッドパターンが原因で、溝のなかの空気が圧縮・放射されて発生する「パターンノイズ」
③タイヤのなかの空気が振動することによって発生する「空洞共鳴音」

ロードノイズやパターンノイズは、タイヤの構造や素材、パターン配列の改良、ボディ側のサスペンションブッシュの剛性低減、車体剛性の改善で対応するのが一般的です。しかし空洞共鳴音は、それだけでは抑えるのが難しい現象と言われています。

空洞共鳴音は、路面のちょっとした段差や突起を乗り越える際に、タイヤの変形によってタイヤ内の空気が振動し、共鳴が起こる現象です。これは太鼓の膜を叩くと、内部の空気が振動してより大きな音になることと同じ原理です。

「インナータイヤアブソーバー」の原理と効果
インナータイヤアブソーバー

空洞共鳴音を低減することを目的に、タイヤメーカーが開発されたものが『インナータイヤアブソーバー』です。

タイヤ内部に吸音材のポリウレタンスポンジを貼り付け、空気の振動を吸収、低減します。発泡剤を混ぜたスポンジ状のポリウレタンは、音の反射を低減する吸音効果に優れており、自動車のアンダーフロアの騒音対策にも使われている素材です。

どのタイヤメーカーが採用したか

インナータイヤアブソーバーを初めて採用したのは、ダンロップです。2006年に「サイレントコア」という名称で、LE MANS LM703への採用以降、現在も進化し続けながら一部のモデルでは標準的に使っています。一時期、ヨコハマタイヤも「サイレントリング」という名称で吸音材を使ったタイヤを発表していましたが、現在、日本ではダンロップのみが採用しています。

一方、欧州タイヤメーカーの、ピレリ、コンチネンタル、ミシュランは、それぞれ「PNCS:ピレリノイズキャンセリングシステム」、「ContiSilent:コンチサイレント」、「ACOUSTIC TECHNOLOGY:アコースティックテクノロジー」という名称で、高級車用タイヤに積極的に採用しています。

日本メーカーはあまり積極的ではないのに、なぜ欧州メーカーは積極的な採用を進めているのでしょうか。

欧州メーカーが採用を進めている理由

欧州で、採用が進む理由としては、2つ考えられます。

ひとつは、欧州では郊外の道が荒れており、空洞共鳴音が目立ちやすいため。もうひとつは高速道路などを利用し、長距離を運転するのが日常的なので、空洞共鳴音が多いとドライバーに疲労が溜まりやすいためです。

日本は道路繋目の処理が比較的きれいなので、日本向けのタイヤ開発では、空洞共鳴音の低減よりも、ロードノイズの低減を重視することが多いようです。


今後「インナータイヤアブソーバー」技術が日本でも普及していくかどうかは、自動車メーカーそれぞれが騒音低減を、どのように進めていくかというシナリオ次第です。

タイヤ交換の際、ロードノイズを気にする方は、吸音効果のあるタイヤを試してみてはいかがでしょうか。

タイヤの騒音低減!高級タイヤが採用する「インナータイヤアブソーバー」とは?