肛門からブリブリッとひりだされる大量の! そのをぐりぐりと口にねじこまれる気弱そうな経理係の駿太郎! 駿太郎を楽しそうにちょんぎる武闘ヤクザ野内豊! 

これが役所広司松坂桃李演、白石和彌監督映画『孤の血』のオープニングだ。これだけでこの作品が放つ空気がよくわかる。お上品じゃない。寸止めじゃない。コンプライアンスがない。熱気と臭気がスクリーンのこちら側にも伝わってくる。ヤクザ同士の対立と警察との衝突を描く『孤狼の血』は三マーク東映が贈るエクストリームバイオレンス映画なのだ。(公式ガイドブック)

のためなら火を放つ男・大上
『孤の血』の舞台は暴力団対策法成立直前の昭和63年広島県。取り締まりの法律ザルバブル中でカネもあるからヤクザギラギラしまくっていた時代だ。は架だが、実際には呉市でほとんどの撮影が行われた。呉市東映実録ヤクザ映画傑作仁義なき戦い』の舞台だったである(『この世界の片隅に』の舞台でもある)。

主人公の大上章役所広司)は広島県警の暴力犯捜主任ヤクザの組織にどっぷり入り込み、警察からもヤクザからも一置かれている。捜のためなら館に火を放ち、警察署の中で女(MEGUMI)にフェラさせてしまうような男(これは捜とは関係ない)。決めゼリフは「警察じゃけぇ、何をしてもいいんじゃあ」。演じる役所広司現在62歳だが、まったく年齢を感じさせない暴れっぷりを見せている。

大上の部下になるのが、一流大学卒のエリート刑事、日秀一(松岡)。何でもありの大上の捜に戸惑い、反発するが、やがて……という役柄。全編にわたってかからボコボコにされたり、かをボコボコにしたりしている彼もまた「の血」の持ちなのだ。

大上の理解者なのが、クラブ梨子」のママ・里佳子(真木よう子)。ヤクザがたむろする店であり、彼女自身も若いヤクザ人に持っているがゆえ、徐々に抗争に巻き込まれていく。真木よう子恋愛ドラマよりこういう映画のほうがよく似合うと思う。

野内豊、音尾琢真最低ヤクザ役!
で熾な抗争を繰り広げているのが暴力団の尾組と加古村組だ。義理と人情を重んじる小さな組・尾組を支えるのは若頭・一ノ瀬守孝(江口洋介)。彼に仕える永川中村倫也)はクレイジーな鉄砲玉として抗争に身を投じる。それにしても中村倫也の昨今の大活躍ぶりはすさまじい。

組に執拗な嫌がらせを続けるのが、加古村組の若頭・野崎康介(野内豊)。野内豊は今回が初のヤクザ役だが、『シン・ゴジラ』のスマートな政治家役が信じられないぐらいのハマリっぷり。白石監督によると『仁義なき戦い 広島死闘編』の大友勝利(千葉一)の線を狙っていたという(『映画秘宝5月号より)。ルックスもそのまんま!

卑劣、下品、残虐の三拍子った加古村組の構成員・吉田音尾琢真)は股間に仕込んだ“ごっつ珠”が自慢で、里佳子をつけ狙う。ドラマ陸王』で熱血陸上監督を演じた男とは思えない、音尾琢真最低の演技はこの映画の見ものの一つ。

ヤクザ大物役に石橋嶋田久作、伊吹郎という異形のベテランたちを配しているほか、事件をかぎつける新聞記者役に中村獅童、大上と懇意の右翼ピエール瀧、大上の警察の同僚に矢島健一田口トモロヲといった白石監督警察ピカレス映画日本で一番悪いら』に登場した面々も登場している。

見せてはいけないものを積極的に見せていくスタイル
原作は柚裕子による同名小説。柚自身、『仁義なき戦い』や『県警対組織暴力』の大ファンで、警察小説である『孤の血』も「いつか『仁義なき戦い』のような熱い小説を書きたい」という気持ちが執筆のモチベーションになっていたという。

監督白石和彌はインタビューで「昔、実録映画を撮っていた東映として、そういうエネルギーがある映画を取り戻したい」というオファーがあったことを明かしている。そのオファーを堂々と受けて立ち、見事にやり遂げた格好。とはいえ、『仁義なき~』をそのままトレースするだけのではなく、韓国ノワール映画も参考にしたという。“見せてはいけないものを積極的に見せていく”アグレッシブスタイル韓国映画なのかもしれない。

また、ヤクザの集団抗争ということで北野武監督の『アウトレイジシリーズ較するもあるが、こちらのほうが圧倒的にウェットで泥臭い。白石監督は「『仁義なき戦い』には本当に仁義がいけれど、『孤の血』は各々が自らの正義を貫こうとする物語」とっている。また、本作の東映プロデューサー天野和人が最初にプロデュースした『極の妻たち』シリーズエッセンスも少し含まれている。

役所広司高校生の頃に『仁義なき戦い 広島死闘編』を観たときのことを「観てはいけないものを観てしまった感じがしました」と振り返っているが、バイオレンス映画に耐性のない人が『孤の血』を観たら同じような感想を抱くに違いない。地上波放送は絶対に理だと思うので、ぜひ劇場で観てアドレナリンを沸騰させてほしい。
大山くまお

映画「孤狼の血」 公式ビジュアルガイドブック (カドカワムック)