趣味人には好きなものがたくさんある。それが足を引っ張ることもあれば、趣味人だから人とつながるものもある。

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 「ヲタクに恋は難しい」は、好きなものがある人間たちの、恋なのかなんなのかわからないモヤっとした感情を描いたラブコメディ。ヲタクのみならず、いろんな若い人の背中を押してくれます。

●宏嵩なりのムーブその1「気取らない」

 二藤宏嵩と桃瀬成海の2人は、ヲタクカップル。最近はうまくいっていますが、もともと宏嵩は基本1人が楽だから別に人と接さなくていいや、という生き方をしてきた人間です。

 アニメ6話のパートでは、成海といい具合の距離を保つための、彼なりのバランス感覚が見られます。

 雨が降ってきた時の出来事。カサを忘れた成海は、宏嵩に話しかけます。

 成海の上目遣い、見ての通りめちゃくちゃかわいい。ヲタクであることを隠して一般社会で生きていくステルスモードに慣れている彼女。人に対する立ち回りは宏嵩と違い、かなり手慣れている。

 ただ、宏嵩の前では意味がない。全く気取らずに「俺も」と返す宏嵩の姿は、幼馴染的ないつも通りの安定感。

 成海はある程度いろんな期待があったんでしょう。相合い傘は大人になっても、やっぱときめくもんだぜ。恋に落ちる音がするんじゃないかなって期待もするんだぜ。

 もっとも成海は、肩肘張らない宏嵩との距離感がちょうどいいのでしょう。気を使いすぎるでもない、1人で去るでもない。一緒にぼうぜんとしながら、ヲタクネタをふったら返してくれる関係。困りながらも2人、楽しそうです。

●宏嵩なりのムーブその2「さりげない」

 カサを借りた宏嵩と成海。ここで宏嵩が、ポイントの高いムーブを見せます。

 2人でカサに入っている際、何も言わずに、水が跳ねる道路側に自分が回る。「…おぉさりげない…」。ここは、恋に落ちる音がした…。

 何も言わずにというのがたまらないですね! もともと彼は感情を表に出したり、気を使ったりするのは得意ではない。ただ、良くも悪くも全くうそをつかない性格。そもそもあまりかっこつけようとしない。これは、成海が汚れないようにという思いからの、素の行動なんでしょう。

 自分が大切にしているゲーム機よりも先に、彼女のこと守っているのは、注目したいポイント。

●宏嵩なりのムーブその3「寂しい」

 宏嵩は、成海のことをよく見るようになりました。少なくとも先輩たちが気付かない、彼女の心の様子を感じ取るくらいには。

 決定打はSNSらしきものへの成海の呟きの少なさだったようです。とはいえ「元気がない ような」という繊細な状態を、人に興味がなかった宏嵩が見ている。大成長です。

 成海はというと、宏嵩にも自分の悩みを言う気はなかったようです。「あーなんかゴメンね! 余計な心配かけちゃったね でもホントに大丈夫! たいしたことじゃないし 宏嵩とは関係ないことだから!」

 ここが、成海の良くも悪くも人付き合いがうますぎるところ。気を使わせたくないからと、仮面をかぶって尻込みしてしまう。関係ないと言ってしまう。

 感情をあらわにする宏嵩。相当珍しいらしく、成海ですら大混乱しています。宏嵩が気になっているのは、彼女の悩みの原因ではなく、つらいのを隠してこそこそしている彼女の行動そのものでした。

 「俺にまで愛想笑いすんなよ」は、クリティカルな指摘。成海もわかっているようです。自分の趣味を隠すステルスモードを続けすぎると、自分をおさえこんでしまいがちです。

 実は怒っているのではなくて、寂しがっていた宏嵩。「…俺 そんなに頼りない?」

 宏嵩は成海に対して、徹底的に素であろうとしているようです。弱いところも見せます。幼馴染の成海でも知らなかった、彼のちょっとさびしんぼうなところ。

 彼自身はあまり人に自分から関わりません。でも成海といい弟といい、正直でいてくれる人に囲まれて、実は恵まれて育ってきている宏嵩。だからこそ、成海と付き合いはじめて、先輩たちと仲良くなってからは、彼の思いやりの芽が急成長している。恋人を心配して、彼女が楽しく過ごせるように、飲み会代をおごるほどですよ。ここからどんどん、「優しい」「楽ちん」なだけではない「ベスト」な成海との関係を、彼は築いていくはず。

 ちなみに、ぼくは宏×樺派です(本編を見てね)。

「ヲタクに恋は難しい」 (C)ふじた/一迅社