■ 「残念ながら天才ではない」。だからこそ常に高みを

【写真を見る】「ミステリアス」、「ザ・女優」そんなイメージがつきまとう中谷美紀の素顔とは?

ある映画を撮影中、停電になってしまった。周囲はっ暗。

スタッフ、出演者たちが困惑している中、ゆっくりとその輪に近づいてきた女性がいた。

中谷美紀である。

彼女は大にこう言った。

「みんなで自転車こいでケーブルつないだら、それが電になって撮影できますかねえ」

「できるわけねえだろ!」

そこにいたオードリー若林正恭は、思わずいつものバラエティ番組の調子でツッコんだ。

すると中谷ゆっくり深々と礼をして、その場から立ち去ったという。その言葉は、ボケだったのか。一体、どこまでが冗談で、どこまでが本気か分からない。

ミステリアス女優である。

実際のところどうなのかは分からないが、中谷は美意識も向上心も自立心もプロ意識もプライドも高いように見える。視聴者からすると敷居も高い。役柄が“憑依”したかのように演じる。時にそれは息苦しさを感じてしまうほど。

ザ・女優――。

そんな感じに見える。近年の日本俳優界にはなかなかいないタイプだ。

事実、彼女は徹底した自己管理のため、サプリメントとプロテインは欠かさないという。

プロテインは、今まで一日に体重1Kgに対して1gといわれていたそうなんですが、最近の研究ではその2倍摂取してもよいそうなんですね。なので私は大体ですが一日に100g近く摂るようにして、ビタミンBでの回転を助けたり、にケトン体を送るためにココナッツオイルを頻繁に補給して、なんとか頭が働いてくれるように働き掛けたりしています」(「CanCam2017年5/23

と、スラスラと答えている。他にもは一日1個がいいといわれていたが、最近は「コレステロール値が低いよりも多少は高い方がいいといわれている」から2~3個食べているだとか、最新研究を調べることにも余念がない。

以前、「ボクらの時代」(2017年10/29放送、フジテレビ系)に出演した際、「男女平等」か「レディーファースト」かが、最近よく考える“テーマ”だと話していた。果たして、重い荷物を運ぶのを男性仕事としていいのかと思い悩んでいる、と。何に対しても真剣日本映画発展のために、アラブ大富豪結婚してみようかとも夢想したこともあるという。第8夫人くらいなら負担も軽い。結婚して得たお金をすべて日本芸術に当てたらどうか。でも、好きでもない人と結婚するのは嫌だな、などと具体的に考える。真剣だ。ちなみに冒頭に紹介した停電中のボケなのかよく分からない提案は、本人はそのエピソード自体忘れていたが、思い返すとおそらくボケではなく本気で言ったのではないかと回想している。やっぱりの前のことに常に真剣なのだ。

彼女は仕事の合間を見つけると海外旅行に行くという。しかも一人旅だ。さらに行き先は、観光地や欧など治安がいいところではない。インド東南アジアだ。女性一人旅、危険はつきもの。これまでもパスポートを盗まれたり、数々のトラブルに遭遇してきたという。それでも海外に行くのは「危険じゃないと面くない」からだ。をしたことで、自分はどこででも生きていけると自信がついた。だからこそ、自立した女優として生きていけるのだろう。「残念ながら私は天才ではない」と中谷は言う。自分は「器用貧乏タイプ」だと。その「器用貧乏」の「貧乏」の部分を埋めるための作業が、一人旅だというのだ。

「最も突き付けられるのは、そもそも自分が何も持っていないっていうことですかね。何も持っていないと思えば何も怖くないというか。失うものがないので。そう思うと何でもできるような、勇気が湧いてきます」(「SWITCHインタビュー 達人達」2013年11/16放送、NHK Eテレ

何もない、という感覚。それを大事にしているからだろうか。映画ドラマの撮影を終えると、彼女はある“儀式”をする。

それは、台本をすべてシュレッダーにかけてしまうというのだ。「快感」なのだという。

憑依するかのように演じる彼女は、憑き物を落とすかのように「何もない」ことにして、先に進む。そうすることで、常に高みをすことができるのだ。

(文・てれびのスキマ)

◆てれびのスキマ=本名:戸部田(とべた・まこと) 1978年生まれ。テレビっ子。ライター。著書に『1989年テレビっ子』『タモリ学』『笑福亭鶴瓶論』など多数。雑誌「週刊文春」「週刊SPA!」、WEBメディア「日刊サイゾー」「cakes」などでテレビに関する連載も多数。2017年より「刊ザテレビジョン」にて、人気・話題の芸人について考察する新連載「芸」がスタート(ザテレビジョン

「あなたには帰る家がある」(TBS系)で主演を務める中谷美紀