アウディのエンブレムには丸い輪っかが4つきれいに並んでいます。非常にシンプルで素っ気ないデザインですが、じつはその裏には歴史が隠されていました。第二次大戦前夜、アドルフ・ヒトラーも関係しているアウディのロゴマークの秘密に迫ります。文・西山昭智

世界恐慌に端を発する4つの輪っか
アウディ エンブレム

4つの輪っかがきれいに横並びしているアウディのロゴは、フォーリングスと呼ばれています。じつはこの4つの輪っかというのが重要で、このロゴマークを作ることになった発端は1929年の世界恐慌までさかのぼります。

当時のドイツではメルセデス・ベンツを筆頭に多くの自動車メーカーが存在していました。しかしこの世界恐慌という突然起きた経済的危機を乗り切るべく、アウディ、ヴァンダラー、ホルヒ、DKWというドイツ4社の自動車メーカーが結成し、1932年にアウトウニオン(AUTO UNION)という連合を組んだのです。

ちなみにそれまでアウディはまったく違ったエンブレムを掲げていましたが、今後この連合で作られる自動車にフォーリングスを使うことになりました。

そしてこのアウトウニオンをいち早く政治的に利用しようとしたのが、あのアドルフ・ヒトラーだったのです。

ヒトラーが国威掲揚のために利用

1930年代というのは自動車レースの最盛期ともいっていいほど、ヨーロッパ各国が威信をかけて闘っていました。しかし当時のレースシーンはフランスのプジョーやブガッティ、イタリアのフィアット、アルファロメオ勢が表彰台を独占し、ドイツ勢は活躍することができませんでした。

そこでヒトラーは、アウトウニオンに巨額の資金援助をすることで、レースシーンにおけるドイツの国威掲揚とナチスのプロパガンダに利用することにしたのです。

グランプリシーンで目覚ましい活躍を遂げる
Pワーゲン

その結果に誕生したレースカーが、ミドシップの最高傑作との呼び声も高いPワーゲンでした。なんとV型16気筒エンジンをミドシップに搭載したモンスターマシーンで、開発にはあのフェルディナント・ポルシェ博士が携わっていたことは有名です。

開発されるやたちまち世界最高記録のレコードを更新したこのマシンは、メルセデス・ベンツとともにレースシーンで燦然たる活躍を見せ、1936年のグランプリでは年間王者を獲得、アウトウニオンとドイツ、そしてナチスの名を世界に広めたのです。

アウトウニオン

ヒトラーの国策のために利用されてしまったアウトウニオン。そのロゴマークは4社が平等に扱われているため同じ大きさの正円で描かれています。

戦後4社は吸収合併等を経て、アウディブランドが残る結果となりました。いったんはフォーリングスをやめていたものの1994年にアウディは自社のロゴマークにあの4つの輪っかを復活させています。

"4つの丸い輪っか"アウディのロゴマークに隠された秘密