首都圏では近年、常にどこかのエリアでタワマンが建っており、湾岸エリアにいたっては、どこを見ても大規模な建設現場という状況だ。しかし、今、タワマンの供給過剰が叫ばれ、中国人投資家も投げ売りし始めたという噂も聞こえてくる。一方、住人たちも購入前は予測だにできなかった数々の問題に直面していた――悲劇の現場を徹底リポート!

◆「買わなきゃよかった!」住民から聞こえる数々の悲鳴

 朝7時45分――。JR武蔵小杉駅の新南改札の外には、すでに200mほどの行列ができていた。彼らが目指す横須賀線ホームへと続くエスカレーターに乗るには、5つの自動改札のうち、左端の1台をくぐらなくてはならない。

 この10年、雨後の筍のようにタワーマンションが建設されている神奈川県川崎市の武蔵小杉周辺では、人口が予想以上に増大しており、通勤ラッシュ時の駅のキャパオーバーが問題となっている。神奈川県の県勢要覧によれば、同駅(JRのみ)の1日の平均乗車人員は6年間で3割増となっているが、拡張工事は行われていない。

 同地の新築タワーマンションに2年前に入居した峯山健太さん(仮名・36歳/会社員)も毎朝、横須賀線で出勤している。

「混雑は日を追うごとにひどくなっている印象です。人身事故でダイヤが乱れると、ホーム上は押すな押すなの地獄絵図。駅構内への入場制限がかかることもしばしばで、始業時刻の30分前に到着するように家を出ている。会社がある品川まで10分ということで武蔵小杉を選んだのに、通勤に40分かかっている。購入前に何度も足を運びましたが、いずれも休日の昼間だったので、想定外でした。夏に子供が生まれるんですが、保育園も絶望的。産休明けに妻は会社を辞めないといけないかもしれず、そうするとローン返済計画も狂う。後悔しかない……」

 一方、東京で“タワマン銀座”といえばやはり江東区の豊洲だろう。同地区のタワマンに住んで6年になる蛯名光一さん(仮名・44歳/会社員)の過酷な通勤は、タワマンを出る前から始まる。

「朝はエレベーターを5分以上待つこともザラ。やっと来たと思っても満員で乗れないこともある。入居開始直後は、多くの世帯が新婚夫婦のふたり暮らしだったのが、5年もたつと子供が生まれ保育園や学校へ通い始めるので、エレベーターのキャパが足りなくなった。予想外でしたね」

 タワマン生活の意外な過酷さを痛感しているのは、毎朝通勤するお父さんたちばかりではない。4年前、東京・中央区勝どきのタワマンに入居した、主婦の野上裕子さん(仮名・37歳)は話す。

「都会的な暮らしにあこがれてタワマンを買ったのに、住んでみると極度のムラ社会でした。毎月のように催される自治会のイベントや、ラウンジ・ジムなどの共有施設で住人同士が交流する機会も多い。『〇〇号室の旦那さんは転職したらしい』とか『△△ちゃんにはもう生理が来た』とか、噂話もすぐに広がる。マンション内では常に誰かに見られている気がして、夜、ちょっとコンビニに行こうと思っても化粧や服装に気を使わないといけないんです」

 3年前に新豊洲の物件に入居した自営業の三上陽介さん(仮名・41歳)の証言は、そんなムラ社会の結束力の強さを物語る。

「ウチのマンションのロビーは、完成して1年弱なのに、タイルの継ぎ目から水が漏れるという“事件”が起きた。自治会は管理会社に修繕を依頼したんですが、同時に住民には、かん口令を敷いた。欠陥住宅という噂が広がれば、資産価値が下がりますからね。書面に残すと証拠が残るから、各戸に口頭で説明して回ったそうです」

― タワマンの悲劇 ―

早朝のJR武蔵小杉駅の名物となった改札までの行列。日によっては5分以上かかる