住宅取材を長年続けてきた筆者が、心底憧れる住まい。それはご近所にある、お庭も素晴らしい屋造りのと暮らすSさんの、日常を大切にするライフスタイルにも惹かれています。建物ハードと住まい方ソフトの両面で、和と洋が融合した情緒ある和モダンのお住まいを紹介します。
屋根が美しい、和ガラス工芸がる住まい

神奈川県逗子市の里山に囲まれた戸で、ひときわを引くの門構え。
屋根のグリーンと木の濃い色が、とのコントラストで美しく映える外観です。

色はガレージの折戸、今は閉じて中をギャラリーにリモデル。植栽のドウダツツジ紅葉して右写真のように鮮やかになる(写真撮影/(左)片山博・(右)Sさん)

玄関門の素らしさが、このへの関心を高めます。
よく見る邸の威圧的な門でなく、引戸の渋さが“わびさび”感すら醸し出し、里山の自然に囲まれた並みに調和しています。

庭の背景にたたずむ門。正面の飾りや手前の鉢植えは季節毎に替わり、ゆく人を楽しませてくれる(写真撮影/片山博)

玄関は、Sさんが大好きなガラス工芸の写真撮影/片山博)

取材時は陶器の時計が飾られていたが、お正月飾り(右)やクリスマスリースだけでなく天使の羽などバリエーション豊富(写真撮影/(左)片山博・(右)Sさん)

門をくぐり、庭石のアプローチを進むと玄関。
こちらも合理的でシンプル美しい、和のたたずまいには必須、引戸の玄関。

庭のでながら、自然石のアプローチを進む。木の造作が施されたガラス引戸(写真撮影/片山博)

「どうぞ、お上がりください」と、Sさん。廊下の両側は、はめ込みガラスで庭を眺めながら入っていくと
「この、素敵でしょ。奈良の古い知人宅を取り壊すときに、もったいないからいただいたのよ」

見事なが描かれた戸、かなりな年代物のよう。高さや取手をリメイクして、こので生きのびた幸せ写真撮影/片山博)

「この殻、逗子散歩に行く度に拾っていたら、こんなたくさんになっちゃった(笑)
ゴミ拾いのボランティアをしていた所、砂が“拾って!”ってSさんに向かってっているのだそう……。

自分がきれいだと思うものを、好きなガラスの器に飾る。好きなものに囲まれて生活する心地よさを教えてくれた(写真撮影/片山博)

今回、顔出しNGのSさんですが、知人が描いたパステル画肖像でご紹介。何と、50歳から始めたフラメンコを踊る姿。
フラメンコを見たとき、それまでの私は“自分”を生きていなかったことに気づいたの」と、フラメンコダンサーりりしい眼差しで見栄を切る姿に魅了され習い始めたそうです。

この肖像は筆者(50歳代)と同じ歳のころのSさん。「フラメンコのおかげで足が鍛えられました」実は、20歳上の大先輩!(写真撮影/片山博)

廊下から居間へ入ると、庭に面した広縁のある畳10畳の和室が広がっています。
古材を利用した表しの梁は、年季の入った焦色。同色の造り付け具と共に、落ち着いた古民家のような大間です。

漆喰のに、和の創作照明が柔らかなを映す(写真撮影/片山博)

畳敷にテーブルチェア、こんなに和洋折衷のライフスタイルでくつろぐアイデアが満載のお住まいです。

居間の引戸の引手は、「安土桃山時代の形に七宝焼きでつくっていただいたの」(写真撮影/片山博)

こんな細部に伝統工芸のアイデア、宝探しのように見つけるとうれしくなります。

日本的な曖昧さが豊かさをもたらす、広縁のある暮らし

Sさんのお住まいは、約25年前に建てた木造2階建て。

「建てるときに注文したのは、屋根。迎賓館などで見る屋根にしたかったの。私、色もねグリーンが好きなのよ」

屋根にこだわるなんて、素人考えではなかなか出てこない。Sさんの感性には、いつも驚かされている筆者。
先や雑誌などで見たもの感動したことを、自分でやって見るのだそう。

2層になった入屋屋根の下、すだれは日除けと共に外観デザインのアクセントにもなっている(写真撮影/片山博)

すだれは外部からの視界を遮る役も。ちょうど、お向かい2階からの視線を遮ることができます。高い塀を立てずに、緩やかにプライバシーを守る技に脱帽

外側はガラスサッシ戸、和室側は障子によって囲われたりの広縁(ひろえん)。室内との緩衝エリアとなっている広縁は、季節ごとに寒さを遮ったり、を運んだり。

Sさんは、その広縁にお気に入りのものを飾っていました。

この日は、しいガラス細工が施されたアンティークの噴ムラーノヴェネチアングラス)。百合が活けられている瓶も、やっぱり好きな緑色写真撮影/片山博)

こちら側の広縁は、Doriちゃんの特等席です!

Doriちゃんは、Sさんが保護団体から譲り受けた2代目。Sさん宅にもらわれたは皆、元気に生まれ変わる(写真撮影/片山博)

庭と居間の間にある広縁は、その面積以上に生活を豊かにしてくれるもののようです。

6月インテリア衣替え、季節を感じる住まい方

玄関と広縁からも出られるお庭は、あまりつくり込まずに自然な趣にされています。

のほうには近所の子どもが遊べるよう、ブランコ鉄棒も(写真撮影/片山博)

取材時、やおの時期とズレてしまったのでSさんの写真をお借りしました。

かれんな“立てば”、“座れば”牡丹。Sさんのよう! (写真撮影/Sさん)

お庭の器に飾って、二度楽しむ。枝垂れが和の住まいと調和する(写真撮影/Sさん)

キッチンからは裏庭が望めるよう、大きなフィックス。キッチンキャビネットは、やはりグリーン!(写真撮影/片山博)

お庭の四季を楽しむと共に、日本住宅の季節感ある伝統的な機も見せて下さいました。
から6月までは内側に障子戸を入れて寒さを防ぎながら、和の柔らかい間で過ごす居間。

「障子の桟(さん)を少なくしたデザインをお願いしたの」、桟の入れ方次第で障子の表情も大きく変わるものだ(写真撮影/片山博)

そして6月になったら、障子とも呼ばれる簾戸(すど)に替えるのです(わざわざ替えていただきました!)

Sさん邸の簾戸には萩が使われている。通し良く、日差しを遮る日本の伝統建具(写真撮影/片山博)

そしてもう一つ、すてきなアイデアを拝見。和でつくられた四枚仕立ての屏ですが、両面異なるデザインになっており、季節によって使い分けることができるようになっています。

クローバーが描かれた、淡いブラウン系の片面(写真撮影/片山博)

もう一面は、アイビーが描かれた水色の屏。「季節やイベントに合わせて使い分けるの」とSさん(写真撮影/片山博)

ほかにも、キッチンのドア暖簾のれん)に替えるなど、インテリア小物でも季節を楽しむ住まい方を教えてくれました。

天使が舞い降りる” 好きなものに囲まれると、パワースポット

2階のプライベートゾーンにもご案内いただきました。
天使がたくさん、居るわよ」と、速、階段に女のような絵がお出迎え。

ご友人の画が描かれた絵、女はSさんのイメージと重なる(写真撮影/片山博)

「なんだか、天使が集まってくるのよね(笑)」と寝室にも、羽の生えた天使たちの絵が……

折り上げ天井で、間に豊かさが増す寝室(写真撮影/片山博)

その天井には、ヴェネチアンガラスシャンリア。やはり!緑色があしらわれたもの(写真撮影/片山博)

Sさんお気に入りのスペースデザインは、この暖炉の一
「昔、スペインホテル リッツのロビーで見たとき“これはすてき!”と思ったの」、そのアイデアを取り入れたそう。

部屋の、三暖炉を取り、その上に直ミラー天井まで貼ることで、万華鏡のように部屋が映りこみ、ズーとまで部屋が広がって見える(写真撮影/片山博)

2階の寝室は、1階の古民家とは打って変わって洋館の雰囲気になっています。
部屋のドアバスルームへのドアも、木製の開き戸。

左がバスルームへのドア、右が部屋のドア。対の小窓にも、天使!(写真撮影/片山博)

天使ガラスが大好きなSさんがオーダーした、趣のある色彩がすてきなエッチングガラス写真撮影/片山博)

バスルームには、洗面とのにはめ込まれた大きなエッチングガラス(彫刻ガラス)の作品が!

エッチングガラスデザイン飛ぶ天使。洗面室のには寝室のシャンリアと同じヴェネチアンガラスの、ブラケット照明写真撮影/片山博)

天使が舞う魅惑の寝室間でお話を聞いていると、何だか時むような感覚になってしまいました。
天使にほほ笑まれて、ついつい欲しくなってしまってね(笑)」、好きなものに囲まれたSさんにとってはパワースポットのような

ふと、から外を見下ろすと……

2階寝室の眼下には、入屋造りの屋根が重なり、マンサクのピンクが広がっていた(写真撮影/片山博)

この居間で、よく、お友達やご近所さんを招いてホームパーティーをしてくださるSさん邸。
ボケ防止に、ここでマージャンをしたりね!」と、住生活の楽しみはますます広がっている様子。

テーブル囲炉裏いろり)も備え付けられ、に使う瓶をつるしてみてくださった(写真撮影/片山博)

今回じっくりお話を伺って、今まで気づかなかったの細部にめて魅了されました。
Sさんの趣味、人との出会いで築いてこられた感性が、このに集約されていて、住まいは人のなのだと実感する取材でした。


(藤井 繁子)
(写真撮影/片山貴博)