ウェス・アンダーソン監督最新作は、自身2作となるストップモーションアニメで、日本が舞台の「」!「グランドブダペストホテル」に続き、ベルリン国際映画祭賞(監督賞)を2作品連続受賞となった話題作です。魅惑のウェス・ワールドを表現するには、もはや実写では限界なのか!?...という勢いの新感覚アニメには、彼の美学がギュウ詰め。ファンタジー日本クールだし、言葉が通じない主人公国語日本語)とたち(同=英語)に芽生える友情も絶妙にリアル。さらに、毎度のごとく「カメオでも出たい」役者殺到でな顔ぶれとなったボイスキャストの中に、あのヨーコ・オノを投入しちゃうという異趣!... さすがのセンス

グレタ・ガーウィグが声を務める”陰謀”に迫る交換留学生・トレイシーちゃんの顔には321個のそばかすがあります。大小さまざまな人形に書いたそばかすの数は、驚異の40000個…!

舞台は20年後の日本。”ドッグ病”が大流行するメガでは、人間への感染を恐れた小林市長が、「すべてのを“”に追放する」と宣言し、手始めに市長宅の護衛・スポッツを送りに。ある時、で親友のスポッツを救うため、市長の養子で孤児である12歳少年アタリ:ランキン・こうゆう)が小飛行機に到着。彼は、レックスエドワードノートン)ら、で出会った勇敢で心優しい5匹のたちを相棒とし、スポッツの探索を開始します。メガで深まる”親”と”反”の対立を背景に、未来が見える伝説の予言に従いを続けるアタリたち。そんな彼らを待ち受ける大人たちの陰謀とは…!?

七人の侍」の音楽をはじめ、黒澤明感が充満してますね~。まぁ、外国人はクロサワ時代劇にハマりがちですが、そこで終わらないのがウェス。黒澤作品の中でも「酔いどれ天使」(’48)や「天国と地獄」(’63)あたりの社会ドラマが描く、戦後の貧しい東京や、時代の闇と闘う主人公なんかを本作に投影してるんです。”の隔離”に潜む政治的企てを巡るストーリーは、現代社会と重なる深さも…。三船敏郎(=ヒーロー)をイメージしたのが、ちょっと人間性が複雑な”小林市長”っていうキャラな点も一

ウェス作品の一番のお楽しみは、なんといっても美術。4年をかけて作製された、240もの精巧な“日本”のセットに釘付けです。は綿毛で、はコンベアベルトで表現するなど、波、、炎、ガス、涙までも物理的な素材でコツコツ作ったらしく…。CGなら簡単なのにねぇ...。でも、ウェスはコンピュータの中でモノを生み出すのが大嫌いなんですよねぇ。みすぼらしくも不屈の忠心が伝わるのパペット、半透明脂で血液感を出した人間のパペットも独特の存在感。全方位カバー璧なデザインだけが耐えうる俯瞰のアングルや、シルエットの多用など、カメラワークもこのジャンルとしてはかなり新鮮です。しかし細部まで凝りすぎだよ…、情報量が多くて何度見れば全容を把握できるのやら…。

途方もない根気を要することで有名なストップモーションアニメフレームごとに物体の細かく動かしてひとつづつ撮影するおなじみの苦労の中、ウェスは独自の撮影手法により、オリジナルなパペットの動きを開拓しています。若干ぎこちない印ながら(手抜きじゃないよ! 狙ってるんだよ!)、緻密で味があって、もう病みつき。もっとも複雑だったという寿司の調理シーンでは、タコをさばく熟練の技術に加え、職人さんの「どや!」的な雰囲気まで再現してて笑えます。劇中のモニター内で使われる2Dアニメとの較も楽しい!

何よりもクセになっちゃうのが、英語日本語を話すというアタリ役のカナダ俳優、ランキン・こうゆう君(当時8歳)の棒読み日本語(笑)。このように、日本歴史や文化を徹底的にリサーチしたうえで、近未来アタリに高下駄を履かせたり、太鼓とへたうまクラリネットを競演させたり、俳句微妙だったり…、と、計算ずくのハズしがいちいちおしゃれ。そんな高い作家性に見合うように既存の手法を高めることを惜しまず、表現の幅を広げていくウェス。アタリの瞳からポロリとこぼれを伝うピュアな涙が、彼のマジメな映画の結晶のようで…。私のウェスも深まるばかりなのです。【東海ウォーカー

映画ライター/おおまえ】年間200本以上の映画を鑑賞。ジャンル問わず鑑賞するが、駄作にはクソっ!っとポップコーンを投げつける、という辛口な部分も。そんなライターが、良いも悪いも、最新映画レビューします!  最近のお気に入りは「レディバード」(6月1日開)で初監督のグレタ・ガーウィグ!(東海ウォーカー・おおまえ)

エドワード・ノートン、ジェフ・ゴールドブラム、スカーレット・ヨハンソン、フランシス・マクドーマンドら豪華声優陣が集結。野田洋次郎、渡辺謙、夏木マリら日本人キャストも!