石原さとみに会ったことがある。といっても、かなり前の話だ。『包帯クラブ』(2007年)と、それから『フライングラビッツ』(2008年)の開前にインタビューをする機会を得たのだ。

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当時の彼女デビューして3~4年経っていて、映画の出演はまだ数本ではあるもののテレビドラマではヒロインとして重用され、すでに一定の人気確立していた。が、まだ現在のような“女性層の絶大なる支持”は、なかったと思う。インタビューでの印は、20歳過ぎにしてくも地に足が着いており、ハッキリと自分の考えを伝える“意志の強さ”が印に残った。

だからここ数年の“勝ち気女子キャラでの飛躍は、さもありなん、といった感じではあったのだが、しかしそれでも『シン・ゴジラ』(2016年)の彼女には驚かされた。あの「ガッズィーラ」である。いや、その英語発音を揶揄しているのではない。日系三世のバイリンガル米国大統領特使カヨコ・アン・パタースンという戯画化された役柄は、登場するたびに場の空気を変え、見る者に異質感を与えるよう、総監督・脚本の庵野秀明にそう造詣されていたのだから。

最初の登場シーン長谷川博己演じる内閣官房副長官の矢口蘭堂に対し、「現政権のレポートを読んで、私が判断したの。過去興味深い。使えそうな人物としてRANDOU YAGUCHIがベターな選択、不でも?」とネーティブ発音を織り交ぜた弁舌でメンチを切り、「何をしてもいいけど私に汚点を残さない仕事をして」と上から目線でズバッと言い放つところからグッとつかむ。特に、Mっ気のある“叱られ好き男子”にはたまらないものが!

さて、和田の同名ベストセラ小説を、中村義洋監督映画化した『びの』(2017年)での彼女は同じ“勝ち気”キャラであっても、違うアプローチでまたすごかった。大野智演じる主人公賀一のび・門にさらわれた武将の・おを演じているのだが、ここでの石原さとみは基本、つつましい。口調も優しく、おっとりしている。しかし、芯の強さはカヨコ・アン・パタースンとも双璧を成し、“叱られ好き男子”をまたもしく刺する。例えば門が“はした”を持って帰宅しようとした時、の中には入れず、「殿わたくしを、安芸のよりさらってきた折、何とおっしゃいましたか?」と問う。門はぜいたくな暮らしを彼女約束したのだ。それなのに、といっても掘っ建て小屋の極貧生活。「本当にわたくし夫婦なるおつもりがあるのですか?」とダメ出しの連発を食らわす。無表情で、ちょっと線を外して接するところにゾクゾク。さらに別のシーンでは、足軽から一(あるじ)にまでなった秀吉の話をして「におなりなさい」と門に勧める。その言葉がちっともかないと分かって、ギロリとにらむ! つきの鋭さ、言の圧のすさまじさに“殺”されること間違いなし。(ザテレビジョン・文=夕起夫)

「シン・ゴジラ」で石原は米国大統領特使カヨコ・アン・パタースンを演じる。ネーティブ発音を織り交ぜた弁舌でメンチを切り、上から目線でズバッと言い放つ