お金に苦労せず、幸せに生きていくことを目指すこの連載。今回の相談は、高橋えりかさん(仮名・36歳  病院勤務)からの質問です。

「結婚し、子供が生まれたので、将来のために教育資金を貯めなくてはと思っています。子供が18歳になるまでと考ていますが、どのくらい貯めたらいのかもよくわかっていません。また、学資保険やジュニアNISAなど候補はあるのですが、どれを選ぶか考えるときのポイントを教えてください」

森井じゅんさんに聞いてみましょう。

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子供の学費準備のために家計が圧迫されるのは本末転倒に

今回は、ちょっと話が長くなるので、2回にわけてご説明します。

相談者さんは、「将来のための教育資金を18歳になるまでに貯めたい」とおっしゃっています。ということは、お子さんの大学以降の学費を準備したいと考えていらっしゃるのでしょうか。

確かに、大学進学等の費用は大きなものになります。

国公立の文系であれば、300万円未満で学べるところもありますが、私立の医歯系大学であれば6年間となり、その教育費は3000万円とも言われています。

また、文系でも大学院に進んだり資格取得を目指せば費用はかさみ、さらにその間の生活費やサークル活動などまで賄うとなれば、準備すべき教育資金は天井知らずです。

「子供が望むどのような進路でも困らないように教育資金を」と考えるのも、親心かもしれません。しかし、現実的ではないケースがあります。できるのであればやってあげるのもいいでしょうが、その資金準備のために、それまでの間に、夫婦や家族でやりたいことが何もできなかったり、老後の生活をすべて子どもに頼りきりになるようであれば、本末転倒です。

まずはご自身の収入や状況から、可能な範囲をしっかり検討していただきたいと思います。この「可能な範囲」は、来週お話する学資保険を考える際非常に重要になってきます。

いずれにしても、現在の生活を圧迫するほどに資金準備に必死になるのではなく、自身の選択の重要さやお金の重さをしっかり伝えていくことが、「親としてできることの重要な役割」ではないかと私は思います。

「大学費用は本人の選択に任せる」というのも手

親が「子どもにどんな教育を受けさせたいのか」を考えるのも大切ですが、子ども自身が成長していく中で自分自身でやりたいことや進みたい道を見つけてゆくでしょう。

その中で、自分の目的を達成するためにどんな手段があるかを探し、選択して実現させる、ということを見守ることも親の役割の一つでしょう。いずれ社会に出れば、自身で考え選択していく必要があるのです。

たとえば、資金が十分でなかったとしても大学に行きたいのであれば、学費負担を減らしながら大学に通う方法を自分で考えて大学にいけるように考え、模索するということです。

学費負担の軽減といえば、まず奨学金が浮かぶでしょう。
奨学金とひとことで言っても、返さなければな らない「貸与型奨学金」と、返さなくてよい「給付型奨学金」があります。
給付型奨学金は返済義務がないため、将来に負担を先送りせずに負担軽減が可能です。
 
国立大学等であれば、家庭の収入が一定基準以下であり、授業への出席率や成績が基準を満たし ている学生であれば、授業料が一部または全額が免除になる制度などがあります。さらに、大学によっては返済不要の給付型奨学金も利用できます。
また私立大学でも、給付型奨学金が充実しているところも少なくありません。多くの私立大学が、それぞれ独自の基準で 給付型奨学金を給付しているのです。
さらには企業が運営している給付型奨学金なども多数あり、調べてみる価値はあるでしょう。
お子さんが大学進学を考えるころにどのような制度が残り、もしくは新たに設立されるのかはわかりませんが、こういった制度もあるということを知っておいていただきたいです
こうした制度の多くは、本人の努力なしに利用することはできません。しかし、勉強して成績を維持すること で費用負担を軽減できる可能性もあるのです。
 
また、在学中の費用を賄う方法として、本人がバイトをすることもできるでしょう。大学によっては、割のよいバイト先を見つける事もできたりもしますね。
 
いずれにしても、大学だけがすべてではありません。自分で選択し道を切り拓くということは、本人が何のために大学に行くのか、しっかり考える機会にもなるのではないでしょうか。

貸与型奨学金の落とし穴

一方で、「周りのみんなが大学へ行っているから」という理由だけで、安易に教育ローンや貸与型の奨学金を利用して大学へ進学するというケースも少なくありません。

しかし実際、「いい大学に行きさえすれば良い職に就ける。」というわけではありません。いい大学に行ったからといって、将来が約束されるわけではないのです。

年功序列・終身雇用が崩れる中、いわゆる「良い職」に就いても、それが一生続くかどうかもわかりませんね。

教育ローンや貸与型奨学金は借金です。もし利用して進学したいと思うのであれば、本当に利用したいのか、返済していけるのか、どのように返済をしていくのか、といった面を親子でしっかり考えていただきたいと思います。お金を借りる事が将来に与える影響、つまりお金の重さについて子どもに伝えていくことは、教育資金を準備することと同じくらい大切なのではないでしょうか。

大学の学費以外の費用も大きい

また、子どもにかかる費用として、親は一番に大学進学等の費用を心配しがちですが、かかる費用はそれだけではありません。

文部科学省の調査では、幼稚園3歳から高等学校第3学年までの15年間,全て私立に通った場合の教育費総額は約1,770万円、全て公立に通った場合でも約540万円という結果が出ています。

また、出費は学習費だけではありません。子どもを育てていく上で、食費や衣服代、おもちゃ代、文具代、レジャー費用などなど、教育費以外の費用も小さくないのです。

大学進学費用の準備にいっぱいいっぱいになり、現在の生活を犠牲にしてしまっては元も子もありません。

子供を養育するための公的手当の充実

一方で、所得制限はありますが児童手当など、子どもを養育するための手当もあります。また現在は、「高校授業料無償化」といった施策も進められており、公立高校だけでなく、私立高校に通わせるための教育費負担も小さくなっています。こうした制度には、所得や地域により異なるものもあります。今後、手当や制度にどのような変更があるかわかりませんが、その時々で、ご自身が利用可能な制度を把握しておきたいですね。

 
3歳の幼稚園から高校卒業まですべて公立を選ぶと学費は540万円。私立の場合は1770万円。ここに生活費が上乗せされ、さらに大学に進学すると……。

賢人のまとめ

生まれたばかりの子どもの大学費用のために、現在の家族の生活が圧迫されることは、避けるべきです。大学費用負担は、本人に任せるということもできるもの。子どもを育てていく上で必要な食費や衣服代、おもちゃ代、文具代、レジャー費用などといった費用も小さくないのです。大学進学費用の準備にいっぱいいっぱいになり、現在の生活を犠牲にしてしまっては元も子もありません。まずは、今の生活に必要な費用をしっかりと把握し、いくら大学進学の準備にまわすことができるのかを考えることが大切です。

プロフィール

女子マネーの達人 森井じゅん

1980年生まれ。高校を中退後、大検を取得。レイクランド大学ジャパンキャンパスを経てネバダ州立リノ大学に留学。留学中はカジノの経理部で日常経理を担当。

一女を出産し帰国後、シングルマザーとして子育てをしながら公認会計士資格を取得。平成26年に森井会計事務所を開設し、税務申告業務及びコンサル業務を行なっている。

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