長澤まさみ、古沢良太脚本の月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』も、ついに今夜が最終回! ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)の活躍も今夜が見納めか……と思ったら映画化発表! だ、大丈夫?

先週放送の第9話「スポーツ編」の視聴率は、初めて第1話を超えた9.5%。ようやく10%超えが見えてきた。

さりげなく流川ヘアだった東出昌大
今回のターゲットはIT企業の経営者・桂公彦(小池徹平)。スポーツが好きな桂は、野球の独立リーグやサッカーの下部リーグのチームを買収するも、チーム運営に介入し、独断で選手や監督を解雇してはチームを崩壊させて経営を投げ出すという、最低のオーナーだった。口癖は「お前らは俺の持ち物なんだからよ!」。ナベツネ並みにひどい。

愛するチームを2つも潰されたチョビ髭(瀧川英次)がダー子たちに話を持ち込んで、桂をターゲットにすることに決定。なお、桂に潰されたチームとして実在するプロ野球独立リーグの群馬ダイヤモンドペガサスが登場していた(他のチームは架空のもの)。

ダー子たちは桂の狙いがプロ化される卓球(実際に今秋から「Tリーグ」がスタートする)にあると踏み、チョビ髭を強豪チーム「東京ジェッツ」の社長に化けさせて架空の買収話を進めようとするが、直前で桂の気が変わって失敗。

ダー子たちは次の手として、架空のバスケットボールチーム「熱海チーターズ」を作ってスポンサー契約を結ぶことを画策(「チーター」は動物ではなく「cheaters(騙す人たち)」という意味)。元日本代表候補だったがホームレス生活を送っていた半原敦(和田聰宏)、半グレ兄弟の庄一・庄二・庄三(小澤亮太、伊島空、玉川蓮)、ただ身長が高かったケバブ屋、道端で踊っていたアフリカンダンサーらをスカウトして、チームをでっち上げる。バスケ経験ゼロのボクちゃん(さりげなく『SLAM DUNK』の流川楓と同じヘアスタイルだった)、明らかにバスケができなさそうな体型の“秘密兵器”五十嵐(小手伸也)もチームに加わる。

CGなどを駆使して偽のスーパープレー動画をつくり、桂へ売り込みを行ったところ、まんまと成功、ダー子たちはスポンサー料2.5億円をゲット。しかし、ポンコツな試合ぶりを見ても桂は大喜びで、3年契約まで提示する。桂の目的は、あくまで節税対策であり、欲しかったのは赤字を垂れ流すポンコツチーム。卓球の強豪チームを買収しなかったのはそのためだ。ダー子は金が得られれば満足だが、猛練習を積んで試合に出ているボクちゃんたちの不満は募っていく。

「バスケガ、シタイデス」
相変わらずボロ負け続きのチーターズだったが、ほんの少しずつチームとして成長していた。懸命にプレーする選手たちの映像に被せて、いきなり流れはじめる麻倉未稀の「ヒーロー」! 若い人向けに解説すると、この曲は高校ラグビーの弱小チームが全国大会を目指す昭和のスポ根ドラマ『スクール☆ウォーズ』の主題歌。チーターズの健闘ぶりは地元メディアにも取り上げられ、徐々に注目度が増していく。

「市立船橋の夏合宿か!」というのは、チーターズの猛練習を見て吐き捨てたダー子の言葉。同校サッカー部の夏合宿は「地獄の夏合宿」としてOBのペナルティ・ワッキーがネタにしている。“スポ根”に目覚めたボクちゃんも監督のリチャードも完全に詐欺のことは頭から飛んで、ひたすら「勝ちたい!」と思うようになっていた。これがスポーツの魔力か……。

怒った桂は選手全員のクビを命じる。ダー子は命令に従うが、ボクちゃんは反発。半原や半グレ兄弟も「金、いらないんだわ」「他にやることねえんだよ!」と熱く語りはじめると、タイミングよく流れるのがGreeeeNの「キセキ」! 野球の不良チームが甲子園を目指すドラマ『ROOKIES』の主題歌だ。もう10年前なのか……。

「ダー子サン、バスケガ、シタイデス」

追い打ちをかけるようにアフリカンダンサーのジェームズが言うあまりにも有名な“名ゼリフ”は『SLAM DUNK』で三井寿が安西先生に言うもの。みんな、スポ根が好きなんだねぇ。まぁ、筆者もわりと好きなんだけど。

「スポーツやってる連中は下等動物!」
同じメンバーのまま、最後の試合に臨むチーターズの面々。桂は激昂するが、ダー子たちは2.5億円を突き返す。

子どもの頃から大のスポーツ音痴だった桂は、いじめや体罰を受けたり、好きな女の子を運動部の男に取られたりしてきた。アプリ開発で成功し、結婚した相手もサッカー選手と不倫していて離婚。スポーツを節税対策に利用していた桂だが、実は同時にスポーツに対して復讐していたのだ。

「スポーツやってる連中なんかな、脳ミソ筋肉のバカばっかりだろうが! 女とヤることしか考えてない動物だよ。下等動物! 俺はここでのし上がったんだよ。頭のいい人間様が単細胞の下等動物をペットにして何が悪いんだよ!」

暴言の限りを尽くす桂だが、ダー子、ボクちゃん、リチャードは反論せず、憐れみの目で桂を見つめ続ける。実は子どもの頃から、桂はスポーツが大好きだった。いじめられても、除け者にされても、スポーツクラブに入り続けた。チーターズの奮闘ぶりを見ながら、本心をダー子に言い当てられた桂は何も言い返せない。

「この素晴らしいチームのオーナーになるチャンスをあなたにあげる。3年契約をするか、この2.5億を持ち帰って恨み続けるか、お好きにどうぞ」

チームは接戦の末、最後の最後でボクちゃんのシュートが炸裂!

「左手は添えるだけ」

ここでもまた『SLAM DUNK』! シュートは決まるが、逆転勝利……とはならないのが『コンフィデンスマンJP』らしいところ。結局、桂はオーナーを続けることを選び、2年後、チーターズは感動の初勝利を掴んだのであった(もちろん、ダー子たちは消えている)。

元ネタは『がんばれ!ベアーズ』
今回のテーマは「スポーツ編」と題されていたとおり、「スポーツ」そのものだった。第2話「リゾート王編」、第3話「美術商編」、第8話「美のカリスマ編」などは、それぞれターゲットの人格・人生がテーマだったが、今回はターゲットの背景にある「スポーツ」そのもののことを描いている。血のつながらない家族のあり方を描いた第7話「家族編」と似た構造だと言えるだろう。ダー子たちによって作られた偽物が“本物”になるというストーリー展開もよく似ている。

ストーリーとしては意外なほどシンプルで、ヒネリも皮肉もあまりない。これまで触れてきたとおり、『SLAM DUNK』『スクール☆ウォーズ』『ROOKIES』などのスポ根作品がパロディの対象として扱われているが、風刺的な意味合いはなく、本家の文脈ほとんどそのままで使われている(古沢良太の解説によると、これらの音楽は脚本にはなく、現場でつけられたものだという。「左手~」も脚本にはなかったとのこと)。

「桂さん、あなたの気持ちはわかる。でも、それは間違ってる。スポーツに罪はないはずだ」
「単細胞の人間も成長する。それがスポーツ」

このあたりのボクちゃん、ダー子のセリフが、本作のスポーツ観と言えるものだ。ただ、現実で日大アメフト部の監督とコーチが選手に反則行為を強要して大騒ぎになったりしていることを考えると、非常に素朴な考え方のようにも思える。スポーツには罪はないかもしれないが、スポーツがろくでもない奴を育ててしまうこともある。桂をねじまげたのもそういう連中だった。また、日大の騒動だって、彼らだけが悪いのではなく、勝利至上主義やルール、成立過程などを含めたスポーツ文化そのものに問題があるという指摘もある(古沢良太自身も解説ブログでそのことに触れている)。

なお、古沢良太は今回の元ネタとして映画『がんばれ!ベアーズ』を挙げている。ダメな子たちが酔いどれ監督のもとで一致団結して勝利を目指すお話だ。たしかにベアーズには桂のような少年もいた。桂が最後に晴れやかな顔を見せているのは、ようやく大好きなスポーツチームの一員になることができたからだろう。ただし、それには成功と大金が必要だったわけだが……。個人的にはややパンチの欠けたエピソードのように思えた。

さて、今夜放送の最終回は「コンフィデンスマン編」。ゲストは佐藤隆太(『ROOKIES』!)だが、ターゲットというよりライバルといった感じか? 「アイデア全部乗せ」「騙しのフルコース」という予告編の言葉に期待しよう。今夜9時から。
(大山くまお)
イラスト/まつもとりえこ