「今年の新人は使えない」「やる気が感じられない」「言ったことができない」「どう教えていいか分からない」――。4月に新卒社員が入社してからはや2カ月。新人研修を終えて現場配属を終えた企業から、こんな悲鳴が聞こえてくる時期になった。

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 選考では人事に高いポテンシャルを認められたはずの彼らは、なぜ教育担当者や上司にプラスのイメージを与えられないのだろうか。

 新入社員の育成ノウハウに詳しい、リクルートマネジメントソリューションズの桑原正義 主任研究員は「時代環境の変化によって、現代の若者が学生時代に培った経験やスキルと、ビジネス界で求められる能力に大きなギャップが生じているためだ」と指摘する。

●「いやなことに取り組んだ経験」が減っている

 桑原氏によると、新人が育った2000年代の教育機関では、体罰やパワハラが規制され始め、厳しく叱られながら成長する機会が大きく減少した。その影響で、いやなことを我慢しながら何かに取り組み、意味を見いだす経験をした人が減っているという。

 国の経済的成長や少子高齢化も、若者の価値観に影響を与えたという。「若者は自ら主体的に動かなくても、欲しいものを与えてもらえる時代になった。就職活動も売り手市場で、他人との競争を強いられることも減ったため、『自分は自分でいい』と考える人も多くなった」と桑原氏は分析する。

 そのため、上司から叱られて自分に足りないスキルに気づいたり、自分から周囲に働きかけてアドバイスを得たり、やりたくない仕事を我慢しながら取り組んだり――といった、仕事で必要なスキルがうまく育っていないまま社会に出てしまうというのだ。

●上司世代は「上の指示に従う」が当たり前

 一方、古いスタイルの教育制度や風土のもとで育った上司や先輩は、給食を残すと休み時間を使って食べさせられたり、悪いことをすると廊下に立たされたり、ゼロから遊びを考え出したり――といった経験をしている。その中で、「上の指示には従う」「理由がなくても、取りあえずやってみる」などの行動パターンが体に染みついている。

 こうした違いがあるため、上司・先輩が頭ごなしに「指示に従ってほしい」「言った通りに働いてほしい」と指示しても、新人は「なぜそんなことをする必要があるのか」「自分のやりたい仕事じゃない」――と感じてしまうという。

●新人はどうすれば育つのか

 こうした“世代間ギャップ”は、どうすれば埋められるのか。新人はどうすれば育つのか。

 桑原氏は、「新人一人一人の中には、本来持っているやる気と能力がある。それを引き出すアプローチをとれば彼らは大きく成長する」と説明する。

 新人を育てる手法として、桑原氏はまず「安心させること」を挙げた。「経験・スキルが足りないため、新人は失敗して上司や先輩から否定されることを恐れている。すぐに叱りつける風潮が、思い切った挑戦を阻害している」という。

 具体的な伝え方の方法は、(1)相談・質問された際に否定せず受け止め、失敗しても対応策を一緒に考える、(2)今はうまくいかなくても「いつか必ずできる」と信じ、それを伝える――などが効果的という。

 「『失敗したら否定される』という不安を払拭(ふっしょく)すると、より積極的で主体的な行動を取れるようになる。成功体験を積むと、自信とやりがいにもつながる」(桑原氏)

●「意味付け」で「配属リスク」での退職を防げ

 また桑原氏は、新人のやる気を引き出す方法として「任せる仕事に『意味付け』を与えること」も挙げた。

 新人がモチベーションを失ったり、早期離職を検討したりする大きな理由に、「やりたかった仕事と任された仕事が違う」というものがある。自分の行きたくない部署に配属されてしまう「配属リスク」がその代表例だ。

 こうした要因で意欲を失う新人に対し、桑原氏は「上司は、『その仕事にどんな意味があるのか』『どんな成長につながるのか』『キャリアにどんな効果をもたらすか』などを、個々人ときちんと向き合い、逐一説明してあげてほしい」と提案する。

 「良くも悪くも、彼らは仕事を無理やり押し付けると拒否反応を示す。頭ごなしに『やれ!』と指示したり、説明もなく希望していない部署に送り込むのではなく、対話によって意味を与えれば、彼らは必ずついてくる」という。

●若者も意識を変えてみよう

 このほか、(1)質問された場合にあえて答えを全て言わず、本人に考えさせる、(2)特定の上司・育成担当者だけでなく、複数のメンバーを巻き込んで動機付けを行う――などの方法を挙げ、「若者が個性を生かし合い、学び合いながら価値を発揮できる体制をつくり上げてほしい」と語った。

 ただ桑原氏は、「企業のさらなる発展に向けては、時には新人が意識を変えることも必要だ」とも述べた。

 「食わず嫌いでは成長が難しい。上司から指示された際、思い切ってやってみてから結論を出すことも大事だ。学生時代に経験していない叱責や理不尽な指示は耳が痛いかもしれないが、大人たちの考えに耳を傾けてみてほしい。経験豊富な先輩が話す言葉には、必ず意味がある」(桑原氏)

リクルートマネジメントソリューションズに、新人を育てる手法を聞いた