スイス戦の試合内容で最も不満に感じたのは、守備が崩れたことでも、決定力不足を露呈したことでもなく、ガムシャラさを感じなかったことだ。新しいチーム作りが一朝一夕でできるものではないことは分かっているが、だからこそ泥臭く戦う姿勢くらいは見せてほしかった。

 そんな思いを代弁してくれたのが長友佑都だ。31歳のベテランは戦術云々ではなく、根本的な部分について言及した。

「経験だけではチームを勝たせることはできない。戦って、走れないと、チームは勝てないので。僕らはベテランと言われていますけど、じゃあどれだけ戦えたのか、どれだけ走れたのか。経験だけでは勝負できない。サッカーはそんな甘い世界ではないなと思いますよ」

「この2試合は失敗できる」。乾貴士がそう話していたとおり、スイス戦とパラグアイ戦はチームの現状を測るテストの場である。しかし、スイス戦で失敗を恐れずに果敢にチャレンジできたかと言えば、答えはノーだ。“仮想コロンビア”と位置づけていたのならなおさら。守りが完全に崩されたわけではない、シュートまで持ち込むシーンを作れた、と言っているようでは、タレント集団と渡り合えるはずがない。

 スイス戦を終えてから選手たちは課題や修正点をとことん話し合った。ミーティングだけでは時間が足りず、練習場でディスカッションを重ねる姿も見られた。限られた時間でどうにかして問題を解決しようともがく状況は、昨年11月のブラジル戦後に似ている。

 当時、吉田麻也はこんなことを言っていた。

「どのポジションでも、ベルギーには僕らよりレベルの高い選手がそろっている。彼ら以上にハードワークしなければならない。ブラジル戦はそこが少し足りなかったと思う。前の選手は二度追い、三度追いして、後ろの選手はもっと体を張って。ガムシャラに、死に物狂いでやっていきたい」

 ベルギー戦では全員が粘り強い守備を見せ、球際で激しくバトルし、チームのために最後まで走り切った。結果的に敗れはしたが、確かな手応えと自信をつかんだのは間違いない。

 海外組を含めて臨んだ国際Aマッチで7戦未勝利。西野朗監督が就任してからは無得点で2連敗と負けが込み、チームは閉塞感に包まれている。それを一瞬で打開するには勝利しかない。スイス戦で整理された「前からのプレスとブロックの使い分け」、「攻撃のクオリティとメリハリ」は当然意識しなければならないが、走って、粘って、戦うという原点こそが、今のチームに求められることではないだろうか。

 パラグアイ戦で先発が予想される香川真司は「相手が嫌がるプレスをかけないといけないし、そのスイッチは僕と岡ちゃん(岡崎慎司)で入れていきたい」と誰よりも汗をかくつもりであると宣言した。原口元気も走る準備はできている。「ペース配分は大事だし、考えるべきことだけど、無駄追いになろうとも頑張らなければいけない場面はある。効率的な守備は詰めていきながら、一人ひとりがもっと走らなければいけない」

 個で通用しないのであれば組織力で勝るしかない。だが、組織力という言葉に甘えてはいけない。一人ひとりが泥臭く、粘り強く戦ってこそ、チームとしての力が発揮される。スッキリとした気持ちでロシア入りするために、日本代表は本番前最後の一戦で勝利をつかみにいく。

取材・文=高尾太恵子

スイス戦で誰よりも走り、戦っていたのは長友だった [写真]=ムツ カワモリ