本連載前回記事では、世界で活躍する天才投資としてジョージソロスに焦点を当てたが、今回はソロス氏とともに「クォンタムファンド」を立ち上げ、10年間で4000える驚異的なリターンを実現したジムロジャーズ氏を取り上げたい。

 ロジャーズ氏はニューヨークのウォールでは伝説的な人物であり、37歳で現役引退した後、冒険として活躍中だ。バイクによる初の世界6大陸横断、ベンツでの世界116走破は、いずれもギネスブック認定されているほど。自らの経験を元に、各の長期的な経済成長の流れを読み、投資に活かす手法を編み出し、「冒険投資」のを歩んでいる。実に行動あふれるヘッジファンドヒーローといえよう。

 そんな先読み天才投資だが、こと日本中国未来についてはジョージソロス氏と似た点もあれば、まったく異なる点もあり、実に興味深い限りである。小生の質問に対してロジャーズ氏は次のように答えている。

日本はまだ豊かです。しかし、将来は中国の時代になるでしょう。これは歴史サイクルです。中国は長い歴史のなかで、世界に覇をとなえた時もあれば、植民地化された時もあります。成功と失敗の両極端を歩んできたです。19世紀後半から20世紀は、中国にとって悲惨な時代でした。今、その流れが大きく変わろうとしているのです。これから中国は豊かになるでしょう。間違いありません」

 要は、かつてフランス皇帝ナポレオンが「中国は眠れる巨人で、覚めれば世界を震撼させる」と予言したように、1978年鄧小平いた革開放政策の種が実を結ぶ時期が近づいているというわけだ。確かに、たった30年で日本を抜き、アメリカにも薄する経済に変貌した中国バイリティ世界を驚かせている。

 とはいえ、中国バブル崩壊を危惧するには根強いものがある。この点を尋ねると、ロジャーズ氏の見方は明快だった。

中国を覆う貧富の差や地域間の格差の拡大を懸念するは承知しています。ご摘の点は確かでしょう。しかし、そんなことは、どこのでも起こりうること。遅かれかれ、中国経済は調整局面に入るはず。しかし、それはさらなる飛躍への踏み台のようなもの。日本でも似たような経験を積み重ねてきたはず。混乱もあるでしょうが、アメリカだって過去200年以上の間に15回をえる不況を経験しています。日本も同様でしょう。中国ハードランディングによって、かえって際化がスムーズに進むと見ています」

日本中国に投資すべき

 では、アメリカの将来はどうだろうか。「アメリカに肩入れするのは愚か」ということになる。なぜか。答えは明確だ。

日本世界最大の債権です。アメリカはその反対で、世界最悪の債務、いわゆる経済破綻同然の借まみれ。日本政府がアメリカ国債儀に買い入れていますが、全に間違っています。ドルを買い支えたり、アメリカ国債を買い増したりするくらいなら、中国に投資すべきです。日本中国経済の発展や調整の過程で大けできるチャンスがいくらでもあります。実に恵まれたポジションにいます。中国脅威論や中国崩壊シナリオをもっともらしく唱える人々もいますが、中国に行ってみてください。そんな時代遅れの見方は氷解するでしょう」(ロジャーズ氏)

 アメリカ限界を見据えている点ではソロス氏と相通じるものがある。とはいえ、中の対立が第3次世界大戦に発展する可性については、ロジャーズ氏は即座に否定した。

中国人は賢いですよ。アメリカと事を構えるようなバカなことはしないでしょう。少なくとも今後20年程度はね。これまで一人っ子政策を続けてきたため、戦争ができないになっているからです。何しろ、どのも基本的には子どもは一人だけ。大事な一人息子海外戦場に送るようなことになれば、それこそ革命が起こります」

「自分が何をしようとしているのか、わからない時には、何もするな」

 これがロジャーズ氏のアドバイスだ。これはソロス氏にも共通すること。ソロス氏も「成功するには気分転換が欠かせない。何もしない時間も重だ。を養うことになる」と言う。

 それでは英気を養った後、市場を理解するためには何をすればいいのか。自分や家族、そして会社や組織を守るには、どうすればいいのか。ソロス氏とロジャーズ氏が口をえるのは、「読むこと」の重要性である。もちろん情報収集と称して単に本やネットを漁るということではない。集中をもって情報と向き合うことが大事ということだ。

 勝負をかけようとする、狙った世界定評のある文献は当然だが、同時にマーケットに影を与えるような一般読者がよくを通すメディアチェックも重要となる。こうした情報収集と分析を重ねていくと、あるトレンドが浮かび上がる。そこを押さえた上で、そうしたトレンドの牽引となる経営者や研究者を訪ね、自分の五感で、投資に値するかどうかの最終判断を下すというのである。

 現在ソロス氏もロジャーズ氏も日本中国の将来に熱い関心を寄せ、情報の収集と分析に日、集中的に取り組んでいる。われわれ日本人も安閑としているわけにはいかない。混乱チャンスである。ましてや戦争や大災害は千載一遇の大勝負の場となるだろう。

 ソロス氏の言うように、動乱期こそ投資の機会は増えるに違いない。確かにその通りであろう。しかし、ソロス氏やロジャーズ氏に限らず、マネーゲームプレイヤーたちは、メディアを操り、こうした混乱を意図的に仕掛けるプロであることを忘れてはいけない。われわれには常に反対意見や多様な情報に接し、彼らの餌食にならない冷静な判断を養うことがめられている。それこそが、日本人サババルにつながるはずだ。

ジェフ・ベゾスの「先見の明」

 さて、3番に取り上げるのは、ジェフ・ベゾス氏である。言わずと知れたアマゾンの創業社長だ。1964年1月生まれ。父親サーカス一輪乗り。母親はまだ10代で彼を生むと即離婚。再婚相手はキューバから単身15歳アメリカに逃れてきたマイク・ベゾス氏だった。苦労して石油会社エクソンの技術者となった、その新たな父親の影もあってか、幼い頃から技術に関心を持ち、コンピュータに魅せられた。

 また、ベゾスは祖から大きな教えを受けたと述懐する。

「祖の教えは忘れられない。賢くなるより、人を大切にすることのほうが難しい、と教えられた」

 1994年、それまで勤めていたニューヨークの投資会社を辞め、シアトルの自宅ガレージから事業をスタートし、く間に「アメリカン・ドリーム」を実現したネット販売の雄である。彼のモットーは「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」。

 急速に成長しそうなインターネットビジネスに活かす方法を考え抜き、可性のありそうな50近くの業種のなかから、まずは書籍販売を選択し、成功のきっかけをつかんだ。今では生活に必要なあらゆる商品を最低価格で最速で消費者に届けるシステムを構築している。最初に書籍販売に着したのは、この分野の流通業界では最大のシェアを持つ会社でも市場占有率は12%にすぎず、新規参入者にとって大きな阻要因とならないと判断したからだという。

 しかも、大手の出版社や取次店が密集するニューヨークボストンなど東海ではなく、そうした影の及ばない西海シアトルを創業の地に選んだのは、確かに「先見の明あり」といえるだろう。

 というのは、シアトルにはマイクロソフトボーイングの本社もあり、ハイテク関連の技術者が選り取り見取りだったからだ。従来の書店での販売ではいくら品えを増やしても、スペースで陳列できる本の数には限界がある。しかし、ネット上であれば在庫もいらず、限大の品えを誇ることができる。その点を生かし、ベゾスは「世界最大の書店」と銘打ったのである。その上、ネットビジネスであれば販売店舗がいらないため、税も免除されるという特典を享受できた。

メディア、小売り、そして宇宙

 ベゾス氏の成功の軌跡は、常に消費者線に寄り添った歴史といえる。第一の成功のステップは「本好き」に寄り添い、多様な品えから「安く、く」を実現した。第二の成功は「ニュース好き」を虜にしたこと。アメリカの有新聞ワシントンポストを買収し、ケーブルテレビニュースに飽き足らない「ニュースオタク」の取り込みに成功。トランプ大統領に言わせれば、「アマゾンワシントンポストは独占企業アマゾンを有利にするメディアにほかならない」となる。

 歴史ある新聞とはいえ、ネット時代には乗り遅れ、読者が減少し、赤字経営に転落していたワシントンポストをポケットマネー2億5000万ドルで買い取ったのにはワケがある。それは媒体ではなく、読者める「手軽にニュースに接したい」という要に応えることで、新たなメディアの在り方がありうると確信したからに違いない。実際、ネット版の同は数カ100万人をえる読者を増やし、買収後2年で黒字化を達成してしまった。ベゾス氏は言う。

ニュースの中身を研ぎ澄ませ。そうすれば、読者お金を払う」

 そんなベゾス氏が2017年6月、新たな企業買収で世界を驚かせた。なんと、自然・有機食品の小売り最大手のホールフーズを137億ドル(約1兆5100億円)で買収すると発表したのである。一見、まったく異業種のように思われるが、消費者のめる健康食への関心の高まりに着した決断であろう。

 しかも、全に展開する大スーパーのウォールマートと一線を画し、ホールフーズは高級志向で富裕層を顧客に掴んできたことにアライアンスの妙味を見出したのである。これまでアマゾンは食品配送のサービスも展開しており、この分野でのデータを集積してきている。しかし、自らが食品販売やレストラン事業に進出するには強パートナーが必要であった。すでに全2000カ所に店舗を展開するホールフーズを取得すれば、顧客を囲い込むことができる上に、新たなレストラン事業の拠点を一気に確保できるというわけだ。

 これまでホールフーズは高級志向で一定の富裕層を顧客として成長してきたのだが、健康志向の消費者が急増するにつけ、農家の直売所や有機食材の専門店にシェアを奪われ始めていた。そこでアマゾンとすれば、付加価値の高い健康ビジネス衣替えを図ることでホールフーズを再生させようと考えたと思われる。

 アマゾンの強みは膨大な顧客データである。消費者が何を、いつ、どの程度の価格であれば買うのか、という予測できることをシステムを構築している。こうしたデータ・マイニングの知見を元に、高級な商品であっても競合企業より有利な条件で販売することができるのは強みであろう。

 こうした強みを獲得できるのも、消費者の動向を常に把握し、その受け皿となる新サービスにつなげる試行錯誤を重ねてきたからだ。その集大成こそが「異業種とのアライアンス戦略」にほかならない。また、そうしたアライアンスパートナーにするかという決断を下すのはトップであるべゾス氏本人であり、そのスピードは速い。

 人は食べずには生きていけない。そして健康長寿は万人の願いである。そこに自然・有機食材への期待が集まっているわけで、そのトレンドを加速させるべく、出版、メディアネット、店舗でのPRにベゾス氏はこれまでの経験を投入しようとしているようだ。食品を扱う従来スーパーや専門店はアマゾンに飲み込まれることになるだろう。

 こうした流れは世界最大の消費者を抱える中国でも、すでに起こり始めている。世界ビジネスレンドから周回遅れの日本でも晩、新たな旋が巻き起こるに違いない。アライアンスパートナーになりうる革新企業であることが、新たな際競争時代におけるサババル条件となる。そして、ベゾス氏の快進撃は止まるところを知らないようだ。

 彼が新たに立ち上げたのは、子供の頃からの夢を実現するベンチャーである。それは「宇宙旅行」。それまで一回の使い切りだった宇宙船を再利用できるようにした。「ブルーオリジン」という名の会社は「でも手軽に宇宙旅行を楽しめる」というのがモットーだ。この分野ではヴァージングループのリチャードブランソン会長アライアンスを組んでいる。

 2017年間的にビル・ゲイツ氏を抜いて世界一の資産の地位を占めたベゾス氏。それだけ大持ちでありながら、移動の飛行機は常にエコノミークラスにこだわる。「駄口をたたくな。時間を大切に。後悔するなら失敗を選べ」が口癖だ。「ベンチャー界のゴッドファーザー」からが離せない。日本発のベンチャー起業の出現を期待したい。
(文=浜田和幸政治経済学者)

習近平国家主席(写真:AP/アフロ)