挽いた豆にお湯を注ぎ、時間が来たらレバーを押し下げる。そんな簡単ステップで珈琲豆の味わいが堪能できるコーヒープレス。家事の合間に、仕事の休憩に。初心者からプロまで使えるうえに、手間いらずで実用的。なのになぜか、知名度は今ひとつ。使えばきっと好きになる、愛すべきコーヒープレスの魅力をご紹介します。

 フレンチプレスという抽出器具は、豆の味わいをそのまま引き出す。つまりいい豆を選んでこそ実力を発揮するのが特色だ。しかし「いい豆」と言われるものは一般的に価格が高い。スーパーでは200gの豆が500円以下で買えるのに対し、専門店では同量で1,500円以上になることも珍しくない。この価格差が生まれたのは、豆のブランド化の高まりが背景にある。

 発端はコーヒー消費量世界一のアメリカで、1980年代に起こった「生産国の格付け」よりも「味わい」を重視した基準を作ろう、というムーブメント。ワインで言えばテイスティングにあたる「カッピング」で味わいを図り、高評価を得た豆を格付けしたのがスペシャルティコーヒーのはじまりだ。

 その勢いは徐々に拡大し、1999年にはスペシャルティコーヒーしか出品できない国際審査会「カップ・オブ・エクセレンス」が発足。選びぬかれたスペシャルティコーヒーを、さらに順位付けするようになった。これまでのコーヒーの流通経路では、大手コーヒー企業が地域単位で豆を独占することが当たり前だったが、「カップ・オブ・エクセレンス」の上位入賞豆はオークションで落札を可能にすることで、公平性を取り入れたことも評価されている。

 このスペシャルティコーヒーの格付けが進むことは、これまで「ブラジル」「ケニア」など地域の豆をひとまとめにしていた方法から、生産者や農園単位の違いに光を当てる結果に。つまり、おいしいコーヒーを作ろうと努力し、結果を出した人の豆に高い評価がつく=ブランド豆になる=値段が高くなる、という流れを生んだのだ。

 もちろんコーヒーは嗜好品なので、高評価の豆が口に合うかどうかは分からない。しかし、スーパーの豆より価格が高くとも、それは世界各国のプロの評価を得た豆であるという証。フレンチプレスに使うコーヒー豆は約15グラム(1人分目安)なのだから、一杯100数十円で最高の一杯が楽しめると思えば「スペシャルティコーヒー認定豆」を買うのは、決して無駄な投資ではないのだ。

●著者プロフィール

文/木内アキ

北海道出身、東京在住。“オンナが楽しく暮らすこと”をテーマに、雑紙や書籍、ウェブなどで人・旅・暮らしにフォーカスした文章を執筆。プレスコーヒー歴7年。目標は「きちんとした自由人」。執筆活動の傍ら、夫と共に少数民族の手仕事雑貨を扱うアトリエショップ『ノマディックラフト』を運営中。
HP: http://take-root.jp/

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