都営浅草線の新型車両「5500形電車」が完成。歌舞伎のデザインを取り入れた外装や最高速度を引き上げた走行装置が特徴です。

開業60周年を控え車両もリニューアル

東京都交通局は2018年6月11日(月)、都営浅草線の20年ぶりとなる新型車両「5500形電車」の報道関係者向け試乗列車を浅草橋駅(台東区)から馬込車両基地(大田区)まで運転しました。

浅草線は、西馬込~泉岳寺~日本橋~浅草橋~浅草~押上間の18.3kmを結ぶ都営地下鉄の路線です。泉岳寺駅で京急線、押上駅で京成線に接続して相互直通運転を行っており、さらに北総鉄道や京成成田空港線(成田スカイアクセス)、芝山鉄道線からの乗り入れ列車も運転されています。

開業したのはいまから約50~60年前で、トンネルなどの施設が老朽化。浅草線を走る車両のうち、東京都交通局が運用している5300形電車216両(8両×27編成)も一番古いもので30年近く経過しています。

こうしたことから交通局は、2020年に開業60周年を迎える浅草線のリニューアルを計画。その一環として新型車両の5500形を導入することにしました。コンセプトは「日本らしさとスピード感が伝わる車両」。2017年には最初の編成(5501編成)が完成しました。

5500形の製造はJR東日本グループの総合車両製作所(J-TREC)が担当しました。8両でひとつの編成を組み、1両の長さは18m。利用者が乗り降りするドアの数は片側3か所に設けられています。これは他社の乗り入れ車両も含む浅草線の共通規格として定められているもので、従来と変わりありません。

編成両端の2両(西馬込寄りの1号車と押上寄りの8号車)は、モーター付きで運転台も設けた制御電動車。中間の6両は2、3、6、7号車がモーター付きの電動車で、残る4、5号車がモーターの無い付随車です。5300形に比べモーターを搭載した車両が2両増えており、編成全体の出力も向上しました。パンタグラフは3号車と6号車に設置されています。

「日本らしさ」をちりばめたデザイン

浅草線を現在走っている5300形の車体はアルミ合金製で、白をベースにした塗装が特徴。これに対して5500形はJ-TRECのオールステンレス車両「sustina」です。そのなかでも1両の長さが18mで、ドアを片側3か所に設けた「sustina S13」が採用されました。「sustina S13」採用車両は、5500形のほかに静岡鉄道のA3000形電車があります。

外観は車両のコンセプトに基づき、歌舞伎の「隈(くま)取り」を取り入れたデザインが取り入れられました。浅草線の沿線には歌舞伎座があり(最寄り駅は東銀座)、「国際的にも日本のイメージとして一般的」(交通局)といった理由から、歌舞伎をモチーフにしたデザインにしたといいます。

内装も「日本らしさ」を随所にちりばめたデザインでまとめられています。壁は側面が和紙調、両端が竹をイメージした柄になりました。

座席は従来の車両と同じロングシートですが、ひとり分の幅は従来車より1.5cm広い47.5cmになりました。背面は「寄せ小紋」、座面は「亀甲文様」でデザインされ、「日本らしさ」を強調したといいます。カーテンにはウメやちょうちん、花火など、沿線ゆかりのシンボルを描いたイラストがデザインされました。

ロングシートの端にある袖仕切りは、見通しを良くしたガラス窓付きの大型タイプ。ガラスの部分には江戸切子調の柄がデザインされました。ドアと袖仕切りの間のスペースは従来より12cm広い33cmとし、ラッシュ時にはスムーズに乗り降りできるようにしたといいます。

文化や言語、国籍、老若男女といった差異に関わらず誰でも利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の考え方も随所に取り入れられました。つり手と手すりの数を増やし、このうちつり手は5300形に比べ1両につき約30個増えています。また、一部のつり手は低くなりました。荷物棚も5300形に比べ13cm低くしています。

最高速度向上で成田スカイアクセスに対応

5300形は4号車と5号車に車椅子スペースを設けていますが、5500形では引き続き4、5号車に車椅子スペースを設けたほか、残りの1~3号車と6~8号車には車椅子だけでなくベビーカー、大きな荷物を持った客が利用できるフリースペースが設けられました。

なお、通常の袖仕切りは壁に固定する形で設置されていますが、フリースペースとロングシートが隣接している部分は窓ガラスがあるため、袖仕切りも下から伸びるような形状を採用しています。この袖仕切りには背当てが設置され、立ち客が背当てに寄りかかって利用できるようにしました。

案内装置はドアの上に液晶モニターを2画面設置。英語や中国語などによる多言語案内に対応しています。天井には防犯カメラが1両につき4台ずつ設置されました。このほか、空調能力は従来車より2割ほど強化。空気清浄機も搭載しています。

モーターは全閉自冷式の三相かご形誘導電動機を採用。制御装置は炭化ケイ素(SiC)素子を用いたVVVFインバーターを採用し、環境負荷の軽減を図ったといいます。5300形は運転最高速度と設計最高速度がともに110km/hでしたが、5500形は運転最高速度が120km/h、設計最高速度が130km/hに向上しました。

交通局の関係者は最高速度の向上について「将来的に成田スカイアクセスの方で運用されることになっても問題がないようにしました」と話し、最高速度が160km/h(アクセス特急は120km/h)で現在は5300形が乗り入れていない成田スカイアクセス経由でも運転されることになりそうです。

5500形は当初、2018年春の営業運転開始を予定していましたが、実際は少し遅れて6月30日(土)にデビューする予定です。関係者は取材に対し「私たちにとっては初体験の技術もあり、調整に手間取りました」と話しました。交通局は今後も5500形を順次導入し、最終的には5300形の全27編成をすべて置き換える方針です。

まもなくデビューする5500形電車の5501編成(2018年6月11日、恵 知仁撮影)。