文・取材・撮影:古屋陽一

人は好きなことをしているときに、いちばんいい仕事をする

 2018年9月5日に新拡張パック『孤独と影』が配信され、さらなる進化を遂げる『Destiny 2』。E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2018開催中に、『孤独と影』の担当者を対象に行われた合同インタビューを参加する機会を得た。取材に応じてくれたのは、開発元であるBungieのプロジェクトリードのスコット・テイラー氏とゲームディレクターを務めるスティーブ・コットン氏のふたり。以下に、その模様をお伝えしよう。

 と、インタビューをお届けする前に、ひと言強調しておきたいのは、とにかくおふたりの仲のよさ(笑)。インタビュー中もお互いをフォローしあったり、ときにじゃれ合ったりと(表現が少し違うかな)、とにかく和気あいあいとした雰囲気。『Destiny 2』というシビアな世界観や緻密な設定と、スタッフ間のフレンドリーな様子との差異が少しおかしかったが、そんなギャップとチームワークのよさが、おそらくはBungieというスタジオが世界から評価を受けるタイトルを作りだしている秘訣のひとつなのであろう。といったことを感じつつ、『孤独と影』のお話をどうぞ。





【画像7点】「『Destiny 2』拡張パック『孤独と影』の秘密をBungieのキーパーソンに聞く、“ギャンビット”がゲームプレイに革新をもたらす【E3 2018】」をファミ通.comで読む(※画像などが全てある完全版です)

『孤独と影』のネーミングの意味は?

――これまでの拡張版との違いや『孤独と影』のコンセプトを教えてください。

スティーブ 『Destiny 2』にとって『孤独と影』は、『Destiny』における『降り立ちし邪神』のような位置づけで、斬新なものです。本コンテンツを開発するにあたっては、これまでとは異なるトーンやスタイルを持つまったく新しいストーリーで、再びイマジネーションを膨らませたいと思いました。また、『Destiny』の楽しみかたを強化するという目的もありました。プレイするための理由付けをしたかったのです。

――ストーリーのトレーラーが公開されましたが、その反応はいかがでしたか?


スティーブ ケイド6のことですね?

スコット ケイド6がああなってしまったことはハッピーではありませんが、皆さんからの反響が大きかったのはうれしかったです。ファンの皆さんはケイド6がああなってしまったことを恨むだろうなと予測してはいましたが。

――本作に新たなマルチプレイヤーモード“ギャンビット”を入れることにした理由を教えてください。PvPとPvEの要素を両方取り入れるのは苦労もあったかと思いますが。

スティーブ 『Destiny 2』にまったく新しい要素を入れたかったんです。『Destiny』シリーズが得意とする、その瞬間瞬間のゲームプレイ、モンスターとの戦い、ガーディアンとの戦いからさらに、まったく異なるゲームプレイを生み出したかった。

スコット “ギャンビット”の開発には、しばらく時間がかかりましね。2017年の始めから取り掛かりました。

スティーブ いろいろな問題の解決をしていく中で、新しいものを作りたいと思いました。最終的に、ふたつのチームが競争して、どちらが先にエネミーを倒せるかという競争にしたのです。そしてふたつのチームのあいだインタラクションを加えることにしました。これは、“モート”を集めて相手側にブロッカーを送るという形で行います。それだけでは十分ではなかったので、チームのひとりのメンバーがほかチームのところへ行き、相手の邪魔をするという工夫をしました。その結果、みんなこのモードが大好きになってくれたので、「これだ!」と手応えを感じました。結果として、とても素晴らしいものができたと思います。

――“ギャンビット”を作っているときにもっとも重要な要素は何でしたか?

スティーブ インベージョン(相手チームのところへ侵攻すること)がいちばん重要な要素だと思います。インベージョンは、“ギャンビット”を、私たちがこれまでにやってきたことやほかのゲームがやっていることとは違うものにしています。このモードは『Destiny』にとってとてもユニークなものです。先ほど説明したように、発想が生まれ、そこから企画がうまくまとまりました。とても特別なものです。
 プレイしたときに“ギャンビット”をエキサイティングなものにしている理由のひとつは、ゲームの中にヒーローモーメント、人に語れるストーリーがたくさんあることです。ポータルを通って相手側へ行くというのは、もっともインパクトのある行動です。相手側の陣地へ行って流れを大きく変えることもできますし、チームのためにゲームを変え、ヒーローとして戻ることができるんです。

――モートを集めると、できることは増えるのですか?

スティーブ モートを集めるのは戦略であって、アビリティが入手できるわけではありません。モートは集めてバンクに持って行って投入します。モートの数によってブロッカーを相手チームに送ることができます。15個のモートを集めるために敵と戦い続けてリスクを負うか、少ない数を頻繁に投入するかは戦略の一部です。

――“ギャンビット”を作るにあたって、当初入れたかったができなかったことはありますか?

スコット 『孤独と影』をローンチできたことにとてもワクワクしています。想像できるものは何でも作れる機会はあります。できるだけよいものを作ることを目指しているので、ひとつのアイデアにコミットして、もっともよいバージョンを作ることを心掛けました。“ギャンビット”に関しては、チームを組織してコアアイデアを提供して、彼らの仕事に必要な時間とサポートを与えることが重要でした。彼らは彼らの想像力のおよぶ限りのことをやれるわけです。ここ数日間を見ていて、プレイした人たちはよい反応をしてくれています。自分が求めているのはこういうものを世界に提供してよい反応をもらうことです。


――『孤独と影』のサブクラスとスーパースキルについてもう少し説明してください。

スティーブ 9つの新しいサブクラスパスがあり、それはつまり9つの新しいスーパーアビリティがあるということです。いまは、E3でお見せしている3つのことについてしかお話できないのですが、“タイタンストライカー”、“ウォーロックドーンブレード”、“ハンターストーカー”の3つです。新しいタイプのスーパーアビリティは端的に言うと、スーパーマンになれる能力です。
 “タイタンストライカー”は、ジャンプしてアビリティを使うと高く飛んでガーディアンをコントロールして落下することができます。エネミーとの距離を縮めておいて強打できるんです。
 “ウォーロックドーンブレード”は、ジャイアントソーラーを取って強打し、エネミーにダメージを与えます。また大きな割れ目を作るので、そこに自分とチームメートが入れば、よりパワフルになって、ダメージを受けにくくなりますよ。
 “ハンターストーカー”はエネミーのあいだを移動する際は姿を消すことができます。ナイフを使ったパワフルアッパーカットをくり出します。また壁の向こうを見通すことができる、アサシンのようなクラスですね。

――なぜ弓矢を採用することにしたのですか? 弓矢はいつどこで使うのですか?

スティーブ 『孤独と影』のテーマとトーンは、ご覧いただいた通りのものです。これまでよりもダークでザラザラしたもの、古典的なウエスタンのようなものにしたいと思いました。そこで、弓矢を入れるとすれば、いまがいいときだと思ったのです。ゲームプレイに直感的で、触れてわかるものを加えるのはとてもおもしろいと判断しました。

スコット エキゾチックな弓もドロップされます。いろいろな場面で使うことができます。ゲームをやり始めると見つかりますよ。

スティーブ ストーリーの序盤で弓矢を見つけることができ、早期に使う機会があります。しかしエキゾチックな弓は素晴らしいので、ぜひ見つけてほしいですね。武器の働きについても変更を加えました。プレイを自分の思い通りにできるようにするために、よりよいコントロールを提供しています。『Destiny 2』ではあまり出てこない、『Destiny』からの武器(ショットガンやスナイパーライフルなど)も取り入れました。こうした武器を使う時間もあり、さらにオプションを提供しています。まあ、一度弓矢を得たら、ほかの武器は使わないんじゃないかな。

――メインの武器として使うのですか?

スコット スーパーアビリティを持った武器ではありません。ドロップされるので好きなだけ使えばよいですし、ショットガンもほかの武器も同じです。


――『コール オブ デューティ ブラックオプス4』などにもバトルロイヤルモードが採用されましたが、それについてはどう思いますか?

スコット バトルロイヤルはすごく楽しいと思います。ただ、当初から『Destiny 2』には“ギャンビット”がイノベーションになると考えていました。『コール オブ デューティ ブラックオプス4』はプレイしてみたいなとワクワクしますが、『Destiny 2』にとっては、“ギャンビット”がホットなものです。

スティーブ 私たちにとって影響があるのは、『Destiny』だけができると思えることをやりたかったということです。違うエネミーやガーディアンと同時に戦えるということにワクワクしました。まずはそれをベースにしたモードにしたかったのです。

――おふたりはとても仲がよいようですが、チーム全体も仲がよいのですか? そうであればその秘訣を教えてください。

スコット それはありがとう! これは偽装です(笑)。そう言っていただけるととても嬉しいです。これは意図的にやっていることです。昨年暮れにスティーブとふたりで話したのですが、私たちふたりが心から楽しんでゲームを作っているのはとても大事なことだと思いました。そして、それが周囲に明確に見えることも重要だと思ったんです。コミュニティーからのフィードバックがきびしかったりして、たいへんな時期もあり、私たちふたりが“喜びの灯”になるべきだと思いました。私たちはゲームの仕事をしていてとても楽しいですし、素晴らしい機会をもらっているので、それを共有すべきです。それをみんなが理解すべきだと思ったんです。このような機会に感謝して、謙虚な気持ちになれて幸せを感じます。これが私たちのスタイルであり、それにチームが反応して同じように感じるのではないかと。深いところで感じる、ある種の伝染する喜びですね。スティーブも感じてチームも感じる。これをゲームに入れることができます。悲しいストーリーであっても、深い愛情を持って作られています。そう言っていただいて、本当にありがとうございます。感謝します。

スティーブ 人は好きなことをしているときに、いちばんいい仕事をするということに気が付きました。本当にこのチームといっしょに仕事をするが楽しいです。またお互いに対してもそう思っていますよ。みんな気が合いますからね。

――それはすばらしいですね。では、意見がぶつかったときはどう解決するのですか?

スティーブ もちろん、ときには意見の相違はあります。『Destiny』を作っているのはとても大きなチームです。『孤独と影』はとても幅広いゲームであり、どうしたらゲームを成功させることができるかについて、みんなそれぞれ意見を持っています。それは私の仕事ですが、ときにはスコットも解決するために手助けをしてくれますよ。

――『孤独と影』のネーミングはどこから?

スコット それを聞かれるのを待っていました!

スティーブ 『孤独と影』には象徴的な意味があります。メインキャラクターであるプレイヤーが自分の友を失い、リベンジのために追跡することになり、見捨てられた者になります。そしてヴァンガードの意向に背いて行動していくことになり、またゲームの中で出会う多くのキャラクターにも関係していますが、これ以上はネタバレになるので言えません。

スコット ケイド6のことはネタバレになっているけどね!


――プレイヤーにはどのように楽しんで欲しいですか?

スコット 最初に楽しみを増やしたいと言いましたが、『Destiny 2』を遊んでくださっている人たちは、いろいろな楽しみかたをされていて、やることはたくさんあると思いますが、さらに追加したものを楽しんでほしいです。一方で、しばらくプレイしていない人や、これまで遊んだことはないが様子を見ている人たちは、“ギャンビット”を友だちとすぐにプレイして、『Destiny 2』の世界に飛び込んでみてほしいです。その後押しがしたかった。

スティーブ “どうしても遊びたい”と思っていただけるとうれしいです。学校や職場に行っても、ゲームの中で何かを手に入れたいと思っていただけるような。そして家に戻って、実際に取りに行くのです!

――最後に、日本のファンにメッセージをお願いします。

スコット 東京は世界で一番好きな場所です。今年11月にまた行きます。いつもは桜の季節に行くのですが。地球で一番好きな場所です。ディズニーシーやディズニーランドに娘を連れて行き、渋谷か新宿に泊まります。本当に好きな場所です。妻は少し日本語を話すのですが、とてもワクワクしています。また行けるのを楽しみにしています。ディズニーシーは最高だ! 東京はとても快適なところです。

スティーブ それがファンへのメッセージなの?(笑) 

スコット そうだよ。日本について語る機会がもらえてうれしいよ。ビデオを撮って家族に見せたいくらい。

一同 (笑)

スティーブ 代わりに僕が締めるけど、『孤独と影』は『Destiny』プレイヤーのためのものです。楽しんでいただけると嬉しいです!