午前10時、オフィスの会議室で新卒採用向けの会社説明会を開く。思うように採用できない中小企業は、そんな説明会を開いているようです。採用コンサルタントの礒谷幸始さんは、「場所・時間帯、そして説明会の内容をちょっと工夫するだけでも、参加者は増やせる。まずは『月曜の午後4時』に設定するべきだ」といいます。その理由とは――。

※本稿は、礒谷幸始『1万人を面接してわかった 上位5%で辞めない人財を採る方法77』(プレジデント社)の一部を加筆・再編集したものです。

■AKB48カフェで説明会!?

中小企業が、よくある普通の会社説明会を開催していては、就活生に興味を持ってもらうことは難しいでしょう。裏を返せば、開催場所を工夫するだけでも、就活生の反応はまったく変わります。

私自身は、AKB48カフェでの説明会を実施したことがあります。パチンコ業界で遊技機の企画販売を手がけるフィールズで採用担当をしていたときのことです。フィールズの100%子会社が飲食事業を行っており、そこにAKB48のオフィシャルカフェ&ショップがありました。私はこのカフェの立ち上げを行っていたこともあり、自社リソースを活用しやすかったのです。

ある大阪大大学院生はパチンコには興味がなかったそうですが、趣味でアイドルが好きだったこともあり、たまたまそのカフェで会社説明会があることを知って、「面白そうだから」という理由で参加したと話していました。普通の説明会に飽きていた彼は、「説明会でアイドルのオフィシャルカフェに入れる」というユニークさだけで参加したのです。オフィスで説明会を開いていたら採用できなかった学生です。フィールズに入社した彼は、その後全社で一目を置かれる成績を残しています。

ただ、こういう意外性のある場所で説明会を行うというキャッチーなことは、なかなか思いつかないかもしれません。ですが、「必ずしも自社内でやる必要はないのだ、どこでやってもいいじゃないか」という発想に立てば、いろいろな工夫はできると思います。

例えば、「会社の会議室でやります」ではなく、「皇居の前に集合ね」でも、いいではないですか。説明会で皇居前に集合なんて不思議ですから、就活生は「何だろう?」となります。

本当はそのキャッチーな会場が、自社の事業内容と関連付いていれば一番良いのですが、そうでなくてもかまいません。極論すれば、効果的に学生を集めることのほうが重要だという話です。そこにわかりやすいメッセージがあるといいですね。変わった場所で開催したことが関心を呼んで、優秀な学生が訪れる可能性もあります。トライ・アンド・エラーです。効果的だったら、たまにやればいいのです。

■説明会の時間帯の工夫の余地はいくらでもある

ここまで会社説明会を「どこでやるか」という話、つまり「where」について述べてきました。次は「when=いつやるか」についてです。

一般的には平日の午前10時というケースが多いのですが、それで学生があまり集まらないようなら、曜日も時間帯も工夫の余地はいくらでもあります。

まず曜日ですが、土曜や日曜の開催でもいいでしょう。人事・採用担当には「休日出勤は勘弁して」という思いもあるでしょうが、振替休日を作ればいいのです。実際、人事は忙しいので普段から休日出勤することも少なくありません。

次は時間帯。平日でも「朝活」という手があります。朝7時から8時半までの説明会とすれば、他社との重なりも避けられます。就活生は時間に追われているので、朝7時からの説明会と聞いて、「時間が有効に使える」と歓迎する可能性もあります。

朝活のもう1つのメリットは、自社に対する学生の意識の高低を把握できることです。「あの会社、少し気になる」という程度の関心しか持っていない学生なら、「朝7時? そんなに早く? 面倒くさい」となって、参加はしてきません。一方、その時間帯に設定されても来社する学生は、その会社に寄せる意識が高いと見積もることができるでしょう。

この朝活の場合は、朝食への配慮があってもいいでしょう。場合によっては学生に軽食を用意するとか、「朝マックを持ち込んで、食べながら行います」と伝えておくなど、です。

このようにさまざまな場所や曜日、時間帯を設定してみて、どこが一番集まるか、どこにどんな学生が多いのか、マッピングして分析してみましょう。まず試してみる価値はあります。説明会への集客に苦労している企業なら、なおさらです。

ちなみに私のおすすめの時間帯は、月曜日の夕方16時~18時です。体育会の学生の多くは月曜日がオフです。その時間で説明会を入れると、18時以降がフリーになり、学生はそのままディナーや飲み会に行けます。フィールズのオフィスは渋谷道玄坂上にあったのですが、そこで説明会を開いていたことも参加率アップに関係しているかもしれません。場所・時間は自社が採用したい就活生に照らし合わせてもっと自由に設定してみてください。

■就活生から質問を引き出す方法

説明会を行ったときに採用担当者を悩ませるのが、「質問ある方?」と問いかけても、なかなか手を挙げる学生がいない、という事態です。このとき、そこで心が折れてはダメです。

私の場合は、説明会のアンケート用紙に質問欄を設けて、「ではみなさん、アンケート用紙に質問を書き込むところがあります。今からその質問欄に聞きたいことを5分で書いてください」と言います。

すると、ほぼ全員が質問を書きます。質問を書いてもらってから、「では、発表したい方?」と、いきなり挙手ではなく、書いてから聞くという手法を取り入れます。

この方法により、質疑応答が活発になります。学生が手を挙げ、こちらが指名して順に質問発表→回答という時間が続きます。なかには最後まで指名されず「まだ質問が……」という学生も何人か出てきますから、そういう熱心な学生には会場に残ってもらい、全員に対応します。また、アンケートに記載があれば、「誰がどんな質問を創るのか?」を把握することもできます。

質問を引き出すもう1つの方法には、次のようなものもあります。「質問ある方?」と聞いても緊張で学生の手が挙がらないときには、「はい、手を挙げなかったでしょう、みんな」と言ってから、就活生へのアドバイスとなる話を続けるのです。

「いいかい、就活を生き抜く方法を伝授しますね。実は、この場で何を質問できるかということを、企業は見ているのですよ。説明会での発言、発表の積極性を見て、選考合否を判断する企業もあります。あなたは自分で自分の可能性を失っていることを理解していますか?」

この後に再び、「じゃ、はい、質問ある方?」と問うと、先ほどの数倍は手が挙がります。「どうぞ」と学生を指名し、「よかったね、今日ここに来て勇気を手に入れて」と言いつつ、質問の内容に答えていきます。

学生にとって刺激的な説明会、役立つ説明会にするのは人事採用担当者の仕事です。説明会の内容で自社への関心を深めてくれる可能性がありますし、「あそこの説明会は面白かった」と就活生の間で話題になることは歓迎すべきことだからです。

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礒谷幸始(いそや・ゆきはる)
リード・イノベーション 代表取締役 コーチング・コンサルタント
1981年、千葉県生まれ。私立江戸川学園取手高校から立命館大学経営学部へ進学。大学時代はアメリカンフットボール部に所属し、主将としてチームを大学史上初の日本一に導く。2003年に卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。営業活動をしながら、社会人アメフトXリーグ1部所属IBM BigBlueのキャプテンを務める。その後、人事として、エンターテイメント企業、東証一部飲食チェーン企業の人財開発部門のGMを歴任。2015年に株式会社リード・イノベーションを設立し、代表取締役に就任。

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写真=iStock.com/suphakit73