週刊ファミ通6月28日号(2018年6月14日発売)にて、サイゲームスの“いま”を探った、“総力特集 Cygames解体新書”という特集記事を掲載した。同記事では、サイゲームスが誇るモーションキャプチャースタジオや3Dスキャンスタジオの潜入取材から、社員や他社クリエイターからのコメントから明かされる“サイゲームス伝説”の紹介など、さまざまな角度からサイゲームスという会社を掘り下げた。今回、同記事内に掲載した、サイゲームスに所属する3人のクリエイターへのインタビューの完全版を、ファミ通.comで掲載。

サイゲームスで飛躍するクリエイターたち
 サイゲームスが持つ最大の“財産”は、すなわち“人材”である。会社設立からわずか7年で、従業員数は約2000人にまで増え、オフィスは月単位で拡張を続けているほどだ。ゲームの開発や運用、アニメの制作、そしてそれらを支える広報宣伝や総務、人事、経理、法務など、さまざまな才能を持つ人材がサイゲームスを支えている。そしてここ数年で、かつて家庭用ゲームを始め、エンターテインメント業界で名を馳せた実力者たちもつぎつぎに集まってきている。彼らはなぜサイゲームスで働く道を選んだのか? また、急成長を支えているものは、いったい何なのか? ここからは、2015年以降にサイゲームスに加わった、『アイドルマスター』の石原章弘氏、『ダンガンロンパ』の齊藤祐一郎氏、『ブレイブリーデフォルト』の中原顕介氏の3人のクリエイターにインタビューを実施。入社の経緯や実際の労働環境などについて、忌憚のないところをそれぞれにお話しいただいた。



【画像3点】「石原章弘氏、齊藤祐一郎氏、中原顕介氏――サイゲームスで新たな一歩を歩むクリエイターたちにインタビュー」をファミ通.comで読む(※画像などが全てある完全版です)

先頭を走り続けるという覚悟 石原章弘氏

 アイドルから競走馬――。誰もが驚いた電撃移籍から、予想外のテーマでの新プロジェクトを発足。そしてゲームよりもアニメよりも先に、CDやライブプロジェクトを展開し成功させるなど、つねに新たな手法を模索し、実行し続けてきた、石原章弘氏。そんな彼が第二の戦いの場としてサイゲームスを選び、ともに歩もうとするその理由とは? そして、ゲーム業界のトレンドの先頭を走り続けるために、彼が「足りない」と感じているものとは……。『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)の現状や、『ウマ娘』後の目標など、ファンが気になる話も合わせてうかがってきた。



――現在は“コンテンツプロデューサー”として、いろいろな現場で辣腕を振るう石原さんですが、出発点であるゲーム業界にはどんな形で入ったのでしょうか?


石原 就職活動中、記念に応募してみようと思ってナムコ(注:当時。現在のバンダイナムコエンターテインメント)を受けたら、なんだか受かりました。


――いきなり爆弾発言が出ましたが!


石原 あ、別にゲームが嫌いだったからとかじゃなくて、受かるってぜんぜん思っていなかっただけです。僕にとって当時のナムコは神のような会社だったので(笑)。


――ナムコに入りたいと思ったのは、どういう理由があったのでしょうか?


石原 学生時代からゲームセンターに通っていたので、『リッジ』、『鉄拳』、『子育てクイズ』(※1)と、オールジャンルでおもしろいゲームを出すナムコは憧れでした。ロゴの“n”のカーブが好きでしたね(笑)。


※1:『リッジレーサー』、『鉄拳』、『子育てクイズ マイエンジェル』のこと。いずれもアーケードで人気を博し、家庭用ゲーム機でもリリースされた人気シリーズ。



――憧れの会社に入社できたのは幸せでしたね。


石原 入社した後、どうして僕を採用したのかを聞いてみたんですが「おもしろかったから」という理由だけでした(笑)。実際、目を疑うようなおもしろい先輩がたくさんいらっしゃって、ゲーム作りにみんなが真剣でした。“最高のコンテンツを作る”というサイゲームスのビジョンと雰囲気は、その当時を思い出すことがあります。


――なるほど、両社にはそんな共通点があったわけですね。その後、どんなキャリアを重ねていったのでしょうか。


石原 企画職で入社してからは、10年くらいアーケードゲームの開発部門にいました。最初は子ども向け乗り物の企画だったんですけど、子ども向けゲームは難しいんです。親御さんとお子様に第一印象で「おもしろそう!」と思ってもらえないと見向きもしてもらえない。でも、ようやく遊んでもらえたとしても、難易度が高かったりすると、2度と遊んでもらえない。


――かと言って、100円で何時間も遊ばれてしまっても困るわけですよね。


石原 ナムコ時代は“楽しい時間”を売ることを重要視していました。100円で1分しかプレイできなくても、30分プレイできても同じような満足感を得てもらう。こういう“おもてなしの心”は当時学んだいちばん大切なことです。いまもリアルイベントなどでは、必ずお客様の顔を見るようにしています。


――アーケード部署での経験が、現在の石原さんの礎になっているということですね。


石原 そうですね。ユーザーの反応を見ることのできる現場にいたことはとても幸運でした。


――でも、ある日いきなり家庭用ゲームを担当することになると。


石原 そうですね。『アイドルマスター』はもともとゲームセンターのゲームだったんですけど、「家庭用ゲームに移植するので異動して」と言われて。まあ、何事もチャレンジだなって思って、異動しました。


――ただ、その後『アイドルマスター』の総合ディレクターとしてゲームだけではなく、ラジオやCD、ライブなどさまざまな方面で活躍されてその名を轟かせていくことになるわけですが……。


石原 僕はお客様を満足させるためには“五感”を刺激することが必要だと考えています。たとえばゲーム(視覚、触覚)や、ラジオ、CD(聴覚)、イベント(嗅覚・視覚・聴覚)というように、メディアが持つ特性を使い分けながら、それぞれ違うアプローチでファンに興味を持ってもらう。感情が動いたときに初めて、そのコンテンツに興味を持つ。まあ、ゲームセンターのゲーム同様、実際は触ってもらうまでがたいへんなんですけど、そこは情報出しのタイミングで、起点となる日を作るようにしています。そういった考えかたは、いまも『ウマ娘』でやっています。


――そんな石原さんがサイゲームスで働くことになったのは、どういった経緯があったのでしょうか?


石原 もともと、サイゲームスとは『アイドルマスター シンデレラガールズ』をいっしょに開発していたのですが、前の会社を辞めると挨拶に行ったら、うやむやのうちにここにいることになりました(笑)。


――“決め手”になったのは、いったい何だったのでしょうか?


石原 サイゲームスは「こういうことやりませんか?」と提案したら「いいですね、やりましょう(この間5秒)」という会社で、行動力の速さはピカイチです。それがクロスメディアでコンテンツを大きくするこれからの時代に合っていると思ったからです。


――そんなことあるんですか!?


石原 もちろん、実際行動に起こしてからは問題にぶち当たることもあります。ただ、リスク回避のために石橋を叩いて叩いて……そして壊すという企業が多いなか、いきなり躊躇なく踏み出すことができるのはクリエイターにとっては最高の環境といえます。


――いまは、何でもリスクを抑えることを第一とする傾向にありますよね。


石原 安全策は企業にとっても大切なことです。しかし、リスクをとってでも冒険できる環境は、若いクリエイターにも味わってほしいですね。


――機材なども、必要であれば何でも揃えてもらえると伺いましたが……。


石原 企業としてのバックアップ体制はすさまじいです。「最高のコンテンツを作る」という言葉に嘘はなく、最高のものを作るための最高の環境は準備してもらえます。


――“結果を出さないといけない”というプレッシャーも強くなりそうですね。


石原 適度なプレッシャーは、いいモノを作るために必要なものです。ゲーム業界は徐々に大切なものが“予算”→“納期”→“おもしろさ”の順番になってきている気がします。でもエンターテインメント企業は“おもしろさ”を第一にすべきです。この言葉に共感する人なら、サイゲームスは良い環境かと。言葉で「おもしろいものを作ろう」と掲げることは誰にでもできますが、設立当時からそれを実践しているのはサイゲームスだけではないでしょうか。


――お話を聞く限り、クリエイターにとっては、考え得る最高の環境にも思えるのですが、それでも足りないものはあったりするのでしょうか?


石原 人材です(笑)。


――具体的に、どんな人材が足りないのでしょうか?


石原 あらゆる職種です。サイゲームスのやりたいことは、まだまだあります。プロデューサー、企画、グラフィック、3DCGアーティスト、アニメーションデザイナー、サウンド……まだまだ、人材を募集しています。いいコンテンツを作るために、より多くの方に門を叩いていただきたいですね。


――どれだけ本気なのかが伝わってきました! それとは別に、サイゲームスには多彩なクリエイターが集まってきていますが、いっしょに仕事をしてみたい人はいらっしゃいますか?


石原 『ウマ娘』で『うまぴょい伝説』の作詞作曲を手掛けた本田晃弘さん(※2)。いい意味でぶっ飛んでいる人で、できればもう一度、密に仕事をしたいと思っています。あとは『グランブルーファンタジー』の福原さん(※3)とも、何かやれるとおもしろいですね。


※2:本田晃弘氏。コナミデジタルエンタテインメントにて、『メタルギア ソリッド』シリーズなどの楽曲制作を手掛ける。


※3:福原哲也氏。『グランブルーファンタジー』のディレクターとして活躍。



――いま名前も出てきましたが、現在鋭意開発中の『ウマ娘』についてお聞かせいただけますか?


石原 (2018年)4月より放送中のアニメもとても好評なので、いまは多くの期待に応えるものを作ろうと、大勢のスタッフが鋭意調整中です。予想は裏切り、期待は裏切らないようにしたいですね。


――最高のものをお待ちしております! 話は変わって、将来的な目標や「こんな作品に挑戦してみたい」というものはありますか?


石原 箱庭ものをやりたいなと思っています。世界中のユーザーを対象にして、見た目もわかりやすく、言葉がわからなくても誰もが楽しめるものを作ってみたいですね。


――最後に“人材”が足りないということでしたが、同じクリエイターに伝えたいことは?


石原 ゲーム業界は主要ハードの移り変わりや流行するゲームスタイルなどが、めまぐるしく変わっていきます。スマホゲームひとつ取ってもこの数年で驚くほど状況が変わってしまいました。1度歩みを止めたら、もうそのスピードに追いつくのが難しくなるくらい。だから、この業界の人間は自分が常にいちばん先を走り続ける覚悟でないと考えています。サイレンススズカみたいに先頭を走ることは気持ちいいものです。いっしょに走ってみようという方は、ぜひ1度、サイゲームスの門を叩いてみてください。



かつて憧れた理想郷[ゲーム業界]への挑戦 齊藤祐一郎氏
 続いては、サイゲームス唯一の家庭用ゲーム専門のプロデューサーとして、新たなキャリアをスタートさせた齊藤祐一郎氏。スパイク・チュンソフト時代に『ダンガンロンパ』、『コンセプション』の両シリーズなど、独創的な作品たちを世に送り出し、自身もインパクト抜群のヘアスタイルに圧倒的なトーク力を備える超個性派クリエイターが、「これまでになかった」と驚かされた、サイゲームスならではの“マトモすぎる”システムとは?




――齊藤さんのゲーム業界でのキャリアは、どういう形で始まったのでしょうか?


齊藤 もともとゲームは子どものころからずっと遊んでいて好きだったのですが、最初に就職したのはパチンコ店の運営をしている企業でした。人と接することも好きだったし、入ってすぐに店舗でのイベント企画や運営なども任せてもらっていたんですよ。


――当時からコミュニケーション能力が高かったのですね。


齊藤 楽しかったのですが、ゲーム制作のように努力の結果を商品という形として残せるものではなかったので、どうしても自分の成果を人の記憶にも残し辛くなる。そこに歯がゆさを感じてもいました。それで、若気の至りもありスパッと辞めて転職することにしたんです。そのころはスパイク(当時)の『喧嘩番長』をプレイしていたのですが、たまたま転職サイトを眺めていたら、その作品の制作会社が開発スタッフを募集していたんです。


――そんな偶然があるんですね!


齊藤 僕は絵も描けなければプログラミングもできなかったのですが、「おもしろいことならやれます!」と根拠のない自信と企画書を持って面接に行ったんです。すると、その勢いを買ってもらえたのか採用してもらえることになりまして。それがゲーム業界での“はじめの一歩”でした。


――そちらには、どれくらい在籍されていたんですか?


齊藤 3年弱くらいです。新卒の年ではありつつも中途採用の形式だったので、いきなり現場から経験を積んでいくことになったのですが、メインプランナーを務めるまでになりました。ただ、開発会社というのは、つねにラインを動かし続けているところがほとんどです。自分が手掛けたタイトルでもマスターアップまででひと区切りになり、つぎのタイトルの開発が始まってしまうので、ソフトの発売を見届ける余裕さえない……ということも珍しくない。もっと深くタイトルに関わって行きたい、と考えるようになっていたところに、スパイクがプロデューサーのアシスタントを探していると耳にしまして。何度もいっしょに仕事をしている会社だったし、手を挙げてみようと。


――ここでもスパイクの名前が……。


齊藤 開発会社では『喧嘩番長』を始め、スパイクのタイトルを作ることが多かったのですが、僕がメインプランナーを務めたタイトルでプロデューサーだったのが寺澤(※4)さんで、面接も担当していただいたんです。


※4:寺澤善徳氏。スパイク・チュンソフトのプロデューサーとして、『ダンガンロンパ』シリーズなどを手掛ける。現在、新作『ザンキゼロ』を制作中。



――後に齊藤さんとともに数々のヒット作を生み出した名プロデューサーとも、ここで出会ったんですね。


齊藤 いまでも、そのときのことをハッキリと覚えているのが、「まだ若いんだし将来羽ばたくために、ウチで修行をしていくのもいいんじゃないの」と面接の際に言ってくださったことです。巣立っていくことを前提にした話なんて、なかなか言えないですよね。


――そんな懐の深い上司のもとで才能の大輪を咲かせていった齊藤さんですが、スパイク・チュンソフトでのキャリアは長いものになりました。


齊藤 結果的に10年弱在籍したことになるんですね。幸いにも現場では自由にやらせてもらいましたし、『ダンガンロンパ』や『コンセプション』というすばらしいタイトルにも巡り会えました。でも、スパイク・チュンソフトでだからこそ出せる強みと、自分がやってみたいアイディアにズレを感じることも出てきたんです。そんな中、35歳という節目の年齢を迎えて、「感性が残されているうちにどれだけ無茶なことができるか、より挑戦的なことができるか」というわがままな想いを抑えきれず、10年目を前にして転職を決意したというわけです。スパイク・チュンソフトにも「そういうことなら」と快く送り出していただきました。


――転職先としてサイゲームスを選んだのには、どんな理由があったのですか?


齊藤 転職を考え始めていた中、社長の渡邊(※5)と個人的に知り合う機会がありまして。そこで「サイゲームスで最高のコンテンツを目指してみないか?」と声を掛けてもらったのがきっかけで、社内見学をさせてもらうことになったんです。社長同伴で(笑)。


※5:渡邊耕一氏。サイゲームス代表取締役社長。



――社長みずから(笑)。何を見てまわられたんですか?


齊藤 開発中の画面やイラストなどもバンバン見せてもらえて、「こんな極秘資料ばかり見てしまって、生きて返してもらえないんじゃないか」と思ったくらいです(笑)。渡邊らしい漢気を感じるアプローチでした。

――実際に見学して気持ちはどのように変わりましたか。

齊藤 全力でおもしろいものを作る、という志はひしひしと感じました。そのうえで、社長直々にここまでしてもらったことも粋に感じましたし、僕のわがままも聞いてくれそうだというのもあって、サイゲームスにお世話になることを決めたというわけです。というか、じつは早速わがままを聞いてもらっていまして、すでに家庭用での新規タイトルをいくつか開発中です(笑)。


――おお、そうなんですね(笑)。サイゲームスには名だたるクリエイターの方々が集まってきていますが、彼らの存在はどのように意識していますか?


齊藤 同僚として、頼もしい存在ですよね。僕は入社したばかりですし、プロデューサーとしていまのところモバイルゲームの開発に直接携わる場面がないので、通常業務ではなかなか絡む機会はないのですが、飲みに誘ってみたり、共通の知り合いに場をセッティングしてもらったりして、なるべく接点を増やそうとしています。


――話してみての印象は?


齊藤 実際、すごい人たちばかりなんですよね。と言っても、いまやサイゲームスの社風を担う同僚として僕も彼らと並んでここにいるわけですから、ヘタなものは作れないなと兜の緒を締め直しています。


――いっしょにゲームを作ってみたいクリエイターを挙げるとしたら……。


齊藤 サイデザイネーションのメンバーとは1度仕事をしてみたいですね。彼らのデザインへの入れ込みかた、こだわりは本当にすごいんですよ。いまはモバイルゲームで活躍する場面が多いですが、そこで培ったものを家庭用ゲームに還元したらいったいどういうものができるのだろう、と思うとワクワクします。近年、家庭用からモバイルへ活躍の場を移したクリエイターはたくさんいますが、その逆はほとんど聞きませんよね? せっかくサイゲームスという会社で家庭用ゲームを作るという環境を与えられたからには、活用してみたいと思っています。


――その一方で、会社組織としてのサイゲームスはどうですか?


齊藤 最初に感動したのが、バックアップ体制がすばらしいということです。ほかの方もお話されているかもしれませんが、機材関係の手配など、考えられないくらい優遇された環境になっています。また、それを含めたいわゆる“バックオフィス”と呼ばれる総務や法務、人事などのサポートがしっかりしていて、業務を進めるうえでストレスを感じることがほとんどありません。


――バックオフィスの優秀さについては、皆さん絶賛されていますね。


齊藤 “シス管(システム管理)”が便利な社内ネットワークを構築してくれているのもありがたいですね。何か困ったら社内ネットワークで聞けばいいんです。ふつうなら「聞く前にまず一度自分でググれ」なんて言われると思うのですが、サイゲームスの場合は自分で調べるよりも早く、専門のスタッフが正確に答えを返してくれるんです。おかげで、自分の仕事に集中できる時間が、これまでよりも確実に増えたと思います。


――社内の空気についてもうかがえれば。


齊藤 よく部署をまたいで懇親会を開いたりしていますし、季節ごとに会社でイベントをやって交流を深めたりしています。僕も入社する前は、勢いのあるIT企業特有の専門用語や数字が飛び交う光景だとか、ちょっとチャラめの雰囲気を想像していたのですが、そんなことはまったくなくて、意外なほどカッチリしています。こんな頭をしている僕が言うのも何ですが(苦笑)。


――そのあたりがマイルドなのも、いい社風ではないでしょうか。


齊藤 正直、髪を何とかしろと言われるんじゃないかとビクビクしていました(笑)。それはさておき、雰囲気も浮ついたところはありませんし、研修などもすごくしっかりやってくれるんですよ。僕はこれまで、中途採用で業界を渡り歩いてきたので、社内に適応していくことを目的とした研修を受けるような機会が中々なかったんです。今回、サイゲームスに入社するにあたって、社内スタッフによる講義を受けて、改めて学べたことは多かったですね。


――中途採用のスタッフにもきちんと研修を行ってくれるのは、いいですね。


齊藤 僕も研修を通じて、「人材を育てよう」という気概を感じました。あとは出勤時間が統一されていたのも新鮮でした。ゲーム業界の企業は、よきにつけ悪しきにつけ、職人気質というかクリエイターの裁量に任せているところが多いと思うのですが、ここではゲーム開発もバックオフィスも、全員が同じ時間帯で働いています。オフィスもつねに清潔感があって散らかっていません。週に1度、全社で自席の清掃啓蒙タイムがあるところは、従来のゲーム会社のイメージとは異なると思います。


――当たり前のことを当たり前にやったうえで、クリエイティブな業務は自由にやるということなんですね。


齊藤 おもしろいものを作るために、会社全体が最大のパワーを注ぎ込む仕組みになっているんですよ。僕が昔憧れたゲーム業界の理想図はこんな形をしていたな、と思い出しました。


――そして齊藤さんはいまどのようなプロジェクトに関わっておられるのでしょうか?


齊藤 家庭用ゲームの新規タイトルの立ち上げを進めているところです。具体的には3タイトルほど仕込みを始めているのですが、まだ発表できる段階には来ていないんですよ。年内に1本くらいは発表できたらと思っているのですが、プロデューサーとしてはできる限りインパクトの大きいものにしたいので、どういう形で行うかも考えているところです。そのときはファミ通さんでもたくさんページを取ってください(笑)。


――編集長に相談しておきます! 続いて、齊藤さんの今後についてもうかがいたいのですが、サイゲームスで、実現したいと考えていることはありますか?


齊藤 家庭用ゲーム専業のプロデューサーが、いまのところ僕しかいないんです。ですから、まずはプロデュースチームを拡充していくところから始めたいと思っています。それから社内の開発チームですね。家庭用ゲームについては、現状社内ではなく外部の開発会社と連携する形で進めているのですが、社内でもできるようにしたいです。そうやって少しずつ体制を整えながら、サイゲームスは“家庭用ゲームでも最高のタイトルを作るメーカー”というイメージを作っていきたいですね。


――最後に、齊藤さん個人の野望というか、長期的な目標を教えてください。


齊藤 20年以上前はいわゆるミリオンタイトルと呼ばれるゲームも数多く出ていたのに、いまや国内市場だけでは一部のタイトルを除いてそこを狙っていくことは非常に難しくなってしまいました。あくまで“野望”という言葉で語るのならば、僕は国内でそれを達成したい。もちろんポッと出の1タイトルでそれが成し得る甘い物だとも思っていません。ですが幸い、ここには僕の作りたかったものを実現できる環境があります。何年先になるかはわかりませんが、そこを目指していける新しいIPを一歩ずつ築いていくこと、そしてそのための同じ目線を持った仲間を作っていくことが今後の目標です。



レジェンドとの共闘、再び 中原顕介氏
 大手メーカーのマーケティング担当からキャリアをスタートさせ、デベロッパーへの独立後、開発に転身、そして『ブレイブリーデフォルト』でディレクターとしての才能を花開かせた中原顕介氏。会社の設立から破綻までも経験した、数奇なキャリアの持ち主でもある。しかし、その経緯こそが、サイゲームスへと彼を導いたとも言える。中原氏へのインタビューで印象的だったのは、周囲とのつながりの大切さ。かつての同志、吉田明彦氏との再会や、自分だけでなく家族も大切にしてくれる会社の姿勢への感謝など、石原氏、齊藤氏とも異なるサイゲームスの魅力がその話からうかがえた。



――まずは現在に至るまでの中原さんの歴史をうかがいたいのですが、ゲーム業界での歩みはどこから始まったのでしょうか?


中原 最初は2001年にカプコンに新卒で入社しました。ただ、開発に直接携わっていたわけではなく、マーケティング部で採用されたんです。もともと企画をやりたかったのですが、肝心の募集がなかったので……。当時は「とりあえず入っておいて、後で異動できればいいかな」くらいに考えていました。でも、入ってみたら同期にプランナーがいて、「なんでやねん!」と(笑)。直談判して何とかしたらしいですが、「プランナーにはこれくらいの行動力がないとダメなのか!」と痛感した最初の出来事でした。


――当時はまさに就職氷河期でしたよね。そうしてゲーム業界でスタートを切って、その後はどのような経緯でサイゲームスまでたどり着くのでしょうか。


中原 カプコンで数年勤めた後、ゲームリパブリック(※6)に設立と同時に移籍しました。そこでも最初はマーケティング担当だったのですが、プレイステーション・ポータブルの『ブレイブストーリー 新たなる旅人』でメインプランナーを担当することになり、それからは開発畑でやっています。


※6:後に『モンスターストライク』を手掛けることになる岡本吉起氏が、カプコンを退社後に立ち上げたゲーム制作会社。



――ようやく、当初からの念願だったプランナーになれたというわけですね。


中原 はい。それからディレクターとしてニンテンドーDSのゲームを何本か制作しましたが、会社が破綻してしまいまして……。ただ、最後の作品ではゲームの完成が早いか、会社が潰れるのが早いか、というスリリングな体験もできて、個人的には楽しかったです(笑)。


――ここまでの歴史をまとめるだけでも、テレビのドキュメンタリー番組が1本できそうですね。


中原 確かに、大手パブリッシャーへの就職と、そこからの独立への参画、そして破綻までと、ひと通り体験してきましたから(苦笑)。その後は、ゲームリパブリック時代の元上司や同僚と新会社のスリーリングスを立ち上げることになりました。


――それが2010年のことですよね。


中原 ただ、私自身は新会社の設立と同時に、シリコンスタジオに出向することになります。当時、シリコンスタジオで渡邊がスクウェア・エニックスと進めていた『ブレイブリーデフォルト』の開発に、元ゲームリパブリックの同僚の推薦でディレクターとして参加することになりました。それ以来、サイゲームスに移るまではほとんどの期間、シリコンスタジオで働いていました。


――シリコンスタジオでは、ずっと『ブレイブリー』シリーズを手掛けていたのですか?


中原 そうですね。サイゲームスに入るまでは家庭用ゲームにしか関わったことがありませんでした。


――そんな中原さんが、サイゲームスに入ることになったのはどんなきっかけがあったのでしょうか?


中原 『ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル』が発売された後、渡邊やゲームリパブリック時代からの同僚だった芦原(※7)と食事をする機会があって、そこで興味を持って職場見学に行ったのがきっかけです。正式に入社したのは、3年前の2015年3月ですね。


※7:芦原栄登士氏。現サイゲームス取締役CTO。



――入社当時といまのサイゲームスで、会社の雰囲気は変わりましたか?


中原 雰囲気は当時からほとんど変わっていないと思います。変わったのは、人数が増えたことくらいでしょうか。裏では組織体制もいろいろ変わっていますが、現場の体感ではあまり変わった感じはありません。


――人の流れの変化はどうでしょう?


中原 とにかく人が増えるペースがヤバいですね(笑)。あと、当時新卒だった子が、3年経って成長し、いまではリーダーとしてバリバリ活躍していたりと、能力がある人はどんどん上にあがっていきますね。


――入社するにあたって、いちばんの“決め手”になったのは何だったのですか?


中原 同じフロアに、『グランブルーファンタジー』などのアートワークを担当するサイデザイネーションという関連会社がありまして、『ブレイブリーデフォルト』でともに開発に携わった吉田明彦さん(※8)が取締役兼アートディレクターを務められています。いっしょにゲーム開発をしていたころ、吉田さんからは仕事に対する姿勢やアイデアなどさまざまな刺激を受けて、それがいまの仕事の礎になっている部分もあるんです。サイゲームス見学の際に吉田さんの席に案内してもらってふとまわりを見ると、皆葉(※9)さんがいて、相場(※10)さんもいて……。レジェンド勢揃い、みたいな場所だったんです。その光景を見て「ここ、ヤベェな……」と(笑)。「どれだけたくさんの刺激を受けられるんだろう」というワクワク感にやられまして、入社を決めました。


※8:サイデザイネーション取締役。『伝説のオウガバトル』、『タクティクスオウガ』など、さまざまな作品に携わるデザイナー。


※9:皆葉英夫氏。『ファイナルファンタジーVI』や『ファイナルファンタジーIX』などでアートディレクターを務めたデザイナー。現在は、サイデザイネーションで『グランブルーファンタジー』のキャラクターデザインを手掛けている。


※10:相場良祐氏。『ファイナルファンタジーXI』のアートディレクションや、『ロード オブ ヴァーミリオン』のカードイラストレーションを務める。



――決め手は“人”だったというわけですね。しかし、サイゲームスにこれほどまで人が集まってくるのはどうしてなのでしょうか?


中原 “最高のコンテンツを作る”という会社のビジョンが徹底されているからだと思います。最高のコンテンツを作るために、最高の環境を整えるという姿勢が徹頭徹尾貫かれているのが、見学に来て社内を少し眺めただけでわかるのかなと。


――機材なども充実しているそうですね。


中原 機材に関しては「こういうものが欲しい」とリクエストすれば、すぐにそれを手配してもらえます。機材調達を担当する部署にいわゆる“ガジェットオタク”が揃っていて、ちょっと相談するとむしろ向こうから「Surfaceですか!? Proでいいですか!? ドックも要ります!?」と食いついてきたりします(笑)。


――すごいですね(笑)。社内福祉なども充実しているのでしょうか?


中原 他社について詳しく知っているわけではないので単純に比較はできないのですが、かなり充実していると思います。とくに助かったのが“パートナープレゼント制度”です。


――耳なじみのない名称ですね。


中原 配偶者の誕生日に、会社がプレゼントを用意してくれるというものです。仕事が立て込んでいたりすると、ついプレゼントを買い忘れてしまうこともあるんですよね……。そんなときのために!というわけではないのですが、会社があらかじめ家族の誕生日プレゼントを用意してくれているんです。


――それを何食わぬ顔をして奥様に渡せば、家庭円満も保たれるというわけですね!


中原 本来は「いつも社員がお世話になっているパートナーの方への会社からの感謝の気持ち」という主旨なので、私の使いかたは完全に悪用ですが(笑)、制度として、働いている本人だけでなく家族や周囲の方にもプレゼントを始め、さまざまなフォローをしてもらえるんです。社長の渡邊もCTOの芦原も家庭用ゲーム開発の出身ですので、これまでの経験を経て、仕事が忙しい中でも家庭やプライベートを大事にしてほしいと考えてくれているから思いついた施策なのかもしれません。


――ほかに、サイゲームスに入って驚いたことはありますか?


中原 社内がキレイなことですかね。ゲーム会社って、ちょっとあたりを見渡すと、謎の機材や書類、雑誌などが山積みになっていたりと、基本的に汚いものだと思っていたのですが、サイゲームスにはそういう部分がないんです。ふだんから「身のまわりはキレイにしましょう」と言われていますし。


――我々、雑誌編集の人間にも耳の痛い話です(笑)。


中原 ただ「キレイにしましょう」と声を掛けるだけでなく、制度としても毎週“小掃除(こそうじ)”の時間が設けられているんですよ。ちょうどこのインタビューの前にもやってきました。15分くらい音楽が流れて、そのあいだ自分のデスクや共有スペースの掃除をするんです。


――まさに小学校の“掃除の時間”と同じですね。


中原 そうなんです。自分の好きなペースで働きたいという人もいると思うのですが、サイゲームスには“チーム・サイゲームス”という考えかたがあって、自分だけでなく会社にいる全員が気持ちよく働けるように心掛けることを大事にしています。勤務時間も、フレックスではなくキチッと設定されていて、全員が同じ時間帯で働けるようになっているんです。


――実際、これまでの職場の環境と比べて、作業効率は上がっているんですか?


中原 やはり、話したいときにちゃんと相手がいると、仕事がスムーズに進みますね。不要な待ち時間もなくなりますし。サイゲームスという会社の“スピード感”は、入社してとくに驚いたことのひとつです。


――そんなに早いのでしょうか。


中原 たとえば、開発チームを移るときなど、ふつうの会社だったら辞令が出て席を用意して……など1週間くらいは準備に時間がかかるものだと思いますが、サイゲームスでは午前中に「これからあそこのチームの手伝いに行ってほしい」と言われたら、午後にはもう席が用意されていますから。「ちょっと休ませてくれても……」と思わず言いたくなるくらい、早いです(笑)。


――ちなみに、現在はどのような作品に携わっておられるのでしょうか?


中原 吉田明彦さんと新タイトルを作っています。まだ何も発表されていないものなので、もしNGだったらこのくだりはカットされていると思いますが……(苦笑)。


――掲載されていたらオーケーということで(笑)。名前が出ているところだと、ほかにどのようなタイトルに関わっていますか?


中原 直近だと『プリンセスコネクト! Re:Dive』にプランナーとして参加していました。期間としては、リリース前の半年くらいです。“共闘”と“おまかせ強化”を担当していました。最初は共闘だけのはずだったのですが、リリース直前の会議でプロデューサーの木村(※11)から「おまかせ強化のシステムがほしい!」という発言がありまして、手が空いているプランナーがいなかったので、しばしの沈黙の後「じゃあ、僕が仕様書を書きましょうかね……?」と手を挙げざるを得ない流れとなり、作ることになりました。


※11:木村唯人氏。サイゲームス常務取締役。



――そんな裏話が(笑)。でも、すごく便利なシステムですよ! ユーザーはみんな活用していると思います。


中原 それも含め、けっこうギリギリまでいろんな部分を調整していました。画面遷移のアニメーションも1フレーム単位でいじっていましたし。


――そのほかに、これまでどんなタイトルを担当されてきたのでしょうか?


中原 『シャドウバース』では、クローズドβテスト版から正式リリース版へのバトルの改修を担当しました。ユーザーインターフェースや演出、カードのデザインなど、こちらも本当にギリギリまで調整していましたね。あとは『グランブルーファンタジー』などにも関わりました。


――“腕利き”として多くのタイトルに関わってきた中で、とくに印象に残っていることはありますか?


中原 サイゲームスに入っていい意味で想像を裏切られたのが、社内のみんながゲーム好きだったということです。最初は“ソーシャルゲームのメーカー”というイメージがあって、社内では“KPI”とか“ARPPU”とか課金率がどうこう、みたいなことばかり言っているんじゃないかとビクビクしていたんです。でも、入ってみたらみんなゲームの中身の話しかしていないんです。


――運営の話をするときなども出てこないんですか?


中原 もちろんプロデューサーやプロジェクトマネージャーはそういった話もしていますが、開発現場ではほとんど聞きません。開発チームでは、とにかく「どうやったらもっとおもしろく、遊びやすくなるのか」ということばかり話しています。あまりにお金の話が出てこないので、ときどき不安になるくらいです。


――お話をうかがっていて、我々も驚くことばかりなのですが、中原さんが今後サイゲームスで成し遂げていきたいことがあれば教えてください。


中原 最高のコンテンツを作るための環境作り、ということにもつながるのですが、現在の開発体制ではまだゲームクリエイターのがんばりに頼っている部分もあると思っています。クリエイティブなスキルを必要としない、単純作業に近いものがまだたくさんあります。幸い、サイゲームスには最高の技術力を持ったエンジニアがたくさんいますから、たとえば彼らに単純作業を担当してくれるAIを組んでもらうなどして、クリエイターが極力クリエイティブな作業のみに従事できるような、そんな環境を作っていきたいですね。作業時間を減らせれば、そのぶんゲームで遊ぶなどの“インプット”に時間を割くこともできますしね。私も家では子供の相手で忙しくてなかなかゲームができないので、AIに仕事をしてもらっているあいだに、ゲームで遊びまくりたいです(笑)。