さよモラ

2018年6月12日、あるアプリがリリースされ、日本中で話題となった。
「ONE」―。レシートを1枚、スマホで読み込むと10円が手に入るというアプリだ。
このアプリを手掛けたのが山内奏人くん、17歳。
実はMFCでは山内君を3年前、彼がまだ中学三年生だった頃に取材していた。当時から天才中学生プログラマーとして話題になっていたが、今回は彼の若さではなく、サービスそのものが大きな話題となったのだ。
あまりの人気過熱ぶりにサービスは一時停止。そんな状況の中、再び山内君に話を聞くことが出来た。
1夜にして世間をあっと驚かせたその当事者は、何を語るのかー。

*この記事は2018年6月14日時点のものです。
(取材/執筆:羽田啓一郎)

Contents

  • 1 登場人物
  • 2 ONE FINANCIAL CEO 山内 奏人
  • 3 ONEのアイデアはどこから?ONEで実現したい世界

登場人物

山内さん山内 奏人
都内の高校に通う高校三年生。9歳の頃からPCを触り始め、プログラミングの世界に傾倒。小学6年生で国際的なプログラミングコンテスト「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」で最優秀賞を受賞。2016年にワンファイナンシャル株式会社を起業し、CEOに。1億円の資金調達を成し遂げた。

羽田羽田啓一郎
株式会社マイナビ 新領域開発部 MY FUTURE CAMPUS責任者。立命館大学卒業。
2003年入社以降、大企業を中心に企業の新卒採用営業を担当。
2007年全社顕彰年間MVP/2009年全社顕彰最優秀マネージャー賞受賞。複数の大学で講師も務める。「女性が輝く社会のあり方」研究会委員。

ONE FINANCIAL CEO 山内 奏人

羽田

お久しぶりです。多分、今すごく忙しいですよね・・・?

山内さん

そうですね、目の前の事にとにかく集中して対処している状況ですね。

羽田

そんな時にありがとうございます。今って高校何年生ですか?

山内さん

今は高校三年生になりました。

羽田

起業してしばらく経つと思うのですが、まだ高校には通ってるんですよね?高校を辞めようとは思わなかったんですか?

山内さん

思わないですね。高校生の友達がいることって、僕の強みだと思っているんです。今回のONEも、高校生の金銭感覚がないと着想しなかったアイデアだと思っていて。僕が他の経営者にない強みは若者の感覚を持っている事だと思うんです。自分の周りに同世代の友人がいることが自分の価値の一つなんじゃないかと考えています。だから高校をやめるという発想はないです。今日も普通に学校行ってましたし。

羽田

なるほど。では今回のONEのお話をお聞きしたいのですが、今、高校生や大学生、いわゆる学生起業家ってもはやそんなに珍しい存在じゃないと思うのですが、ここまで一夜で世の中に広がったサービスを作り出した起業家は決して多いわけではありません。

山内さん

うーん、「一夜にして」ってよく言われるんですが、僕はそういう感覚ってないんです。僕は2016年、高校1年生の時に今の会社を起業しているんですが、12歳の頃から他の会社で働いています。つまり、キャリアとして5年経っている。大卒が新卒として入社した場合でいくと27歳とか28歳。そうして考えるとありえない話じゃないというか。

羽田

なるほど。

山内さん

起業してからこの間、公開したサービスで4つ、非公開のものも含めたら8つはサービスを作っています。あらゆる失敗や努力をコツコツしてきた結果の今回のONEなので、僕としてはこれまでの積み重ねの結果としてとらえていて、一夜にして成功した、とは考えられないんです。

羽田

山内君が経営しているONE FINANCIALはこれまでも金融系、いわゆるフィンテックのサービスを開発されていたと思うのですが、金融をやろうと思ったのはどうしてなんですか?

山内さん

そうですね、僕はもともとすべての人のインフラになるようなサービスを作りたかったんです。ファイナンスって地球上全ての人に関係するインフラじゃないですか。どの世代でも関わるといいますか。だからですね。

羽田

今、何人の会社なんですか?どんな人が働いている?

山内さん

5人ですね。僕がCEOで、エンジニアとデザイナー、そしてオペレーションの社員がいて、あとは学生インターンです。

羽田

他の方は社会人?

山内さん

そうですね、みんなこれまで他の会社でそれぞれのキャリアを積んできた一流のスペシャリスト達です。

羽田

国際的なプログラミング大会で優勝したり天才プログラマーと呼ばれていましたが、山内君は経営以外に直接プログラミングをやったりするんですか?

山内さん

いや、今はもうほとんどやってませんね。うちのCTOが滅茶苦茶すごいので。僕がコードを書くと怒られるので、僕は経営に集中してます(苦笑)。

羽田

なんと・・・!天才プログラマーが怒られるんですか・・・!

山内さん

僕の技術なんて全然大したことないですよ(笑)。

ONEのアイデアはどこから?ONEで実現したい世界

メディアやイベントでも注目される山内くん

羽田

しかし今回のONE、凄い騒ぎになっていますが、レシートを10円に変えるというアイデアはどこから生まれたんですか?すごい短期間でのリリースだったんですよね?

山内さん

リリースするのにかかったのは大体2週間くらいですね。今、世の中で流行っているサービスって価値の非対称性がポイントになっている事が多いと感じていて。

羽田

価値の非対称性とは?

山内さん

例えばフリマアプリとかがそうだと思うんですが、ある人にとっては価値がないものでもそれが誰かにとってはすごく価値があったりする。

羽田

そういうアイデアが思いつくきっかけってあるんですか?

山内さん

友人からスイスの通貨であるフランをお土産でもらったんですよ。でも日本でもらってしまったのでここではお土産でしかないわけです。でもスイスに持っていったら通貨としての価値が出てくる。今回のONEもレシートをお金に換えるわけですが、レシートってお財布の中にたまっていたりすぐ捨てられて、レシート自体に価値を見出してる人ってそんなにいません。でも人の購買データという意味では企業のマーケティングの価値になってくるわけです。価値がないものを価値があるものに変える。これは面白いなと。

羽田

確かに面白いですね。でもこんなにヒットすると思わなかったんじゃないですか?僕もFacebookで山内君がONEをリリースしたというポストを見て「へー、面白いな」と思っていたら、時間が経つ毎にあらゆるSNSでバズってるのを見て、これは何だか凄いことになってるぞ・・?と思いました。

山内さん

はい、まさかここまでヒットするとは正直思ってませんでした。リリースした日に、app storeで一位になったんです。世界中の有名なアプリを抜いて1位になったのって、本当に信じられなかったです。

羽田

何でここまでヒットしたんだと思いますか?

山内さん

うーん、シンプルだからじゃないですかね。今回って複雑な機能を実装しているわけでもなく、「レシートを10円に変える」というアイデアだけですからね。その手軽さやシンプルさが受けたんじゃないでしょうか。あと僕、今回のアイデアを形にしていく時に「アパレルブランドのアプリと隣に並んでも違和感がないデザインにしてほしい」とデザイナーに依頼したんです。とにかくシンプルでおしゃれなものにしたくて。

羽田

それはどういう思いからなんですか?

山内さん

次世代の金券ショップを作りたいんですよ。金券ショップって、眠ってる資産を現金化できて素晴らしいサービスだと思うんですが、ちょっと入りづらい雰囲気ってあるじゃないですか。だからどの世代にもあたる、気軽に使えるサービスにしたくて。

羽田

なるほど、しかしあまりに人気過ぎてリリースの翌日にはサービスを停止することになってしまいました。あれって、サーバーがダウンしたわけじゃないんですよね?

山内さん

そうですね、サーバーは全然平気でした。ここは本当にうちのエンジニアが優秀だったからなんですが。サービスを停止したのは、あまりにユーザーが増えすぎて当初想定していたビジネスモデルから変更せざるをえなくなったからですね。でもまだ公にはできませんが、急ピッチで再開に向けた準備は進めています。

羽田

7万人のユーザーでしたっけ?

山内さん

いや、もう20万人ですね。しかもあらゆる世代の方にダウンロードいただいています。サービスを停止してからもどんどん増えていて、それって、それだけ多くの方がサービスの復活を待ってくださってるって事だと思うんです。すごくプレッシャーですし不安も大きいですが、同時にすごく、うれしい。

羽田

僕、今回の過熱っぷりで印象的なことがあって。これまでも山内君は「天才少年プログラマー」や「高校生起業家」としてメディアに出る事は多かったじゃないですか。でも今回の「ONE」はそういう広がり方じゃなくて、「レシートを10円に」というサービスがバズって、「これを作ったのは高校生らしい」というのは後から出てきた。そこはすごく変化だったんじゃないかなと思ってるんです。

山内さん

本当にその通りですね。僕、これまでずっと嫌だったんですよ、高校生起業家みたいな呼ばれ方をするのが。

羽田

え、そうなんですか?


高校生起業家と言われるのを嫌がる理由とは? 続きは次のページへ